今更ですが「うたわれるもの 偽りの仮面」(PS3)の感想でも。

自分的には「うたわれるもの」は無印で決着がついていて、それ以降は続いていたとしてもノータッチで行こうと思っていました。PS3及びVitaを購入してまで追い掛けたいと思えなかった時点で、自分の中で「うたわれるもの」は綺麗に終わっていたのです。
アニメで「偽りの仮面」は追っていたのですが、正直そこまで熱心では無かったと言うのが本音です。一部のキャラクターがどうしても好きになれないとか、公式腐推し過ぎ、などの事情がありまして…。
……が、先日Mかーのご厚意でプレイする機会を得まして、何とかクリアに至りました。
色々と言いたい事はあれど、続編として否定する気には取り敢えずなれませんでした。寧ろアニメでは絶対に知れないだろう、思えないだろう、キャラクター達の魅力を知れたりした事はとても満足です。

ゲーム性はうたわれらしい適度にユルい難易度。序盤だけ(モズヌ一味を陥れる辺りまで)は少し厳しいのかなと思ったけど、個々の特性や連撃や防御が出来る様になると逆にヌルくなる極端バランスなのと、総戦闘数が少ないので色々物足りない感。まあそれもうたわれらしかったけど。

取り敢えずエピローグのクオンの告白で涙で前が見えなくなった。
読んでいるこちらにも「ああ、そうだったんだね」と、すとんと落ちて来る様な納得だった。
見ていて解る、と言う程に明確な「恋情」としては描かれていなかっただけに、クオンの理解は=読者の理解でもあったと思う。
そして同時に悲しくなった。取り残されたクオンと、そんなクオンを手放す事を選んだハクとの間に降った非情な運命に。
そこまでの間を穴だらけに描かれた、納得の行かない物語に。


そんな訳で感想なのですが、主にエンディングについての話のみにとどめておく事にします。
↓以下、書き口調変化と辛口とネタバレ丸出し注意。






































肝心のシナリオ面はライターさんの力不足か時間不足かゲーム容量不足と言うのを凄く感じた。
ぶっちゃけて仕舞うと、問題のエンディングは、ハク→オシュトルと言うオチ、そしてクオンにとって悲恋となる別れ、と言うのを先に考えて間を埋めて行った様な感じ。…なのは良いんだけど、肝心の埋め方が酷いと言わざるを得なかった。もっと突っ込むと、埋め方とそれに対するフォローが全然足りていない感。
続編ありき、として出したからなのか、あからさまな放置箇所も多々。これは純粋に期待、と言う方向に回して良いのかは……疑問が残る次第。

*

と言う訳でエンディングの話について。

まずはネコネ。
本編のイベント中ではその幼さが、頑張りや皆との遣り取りの中で良く活かされていて、キャラクター的な魅力としては本作随一のアイドル性とも言える可愛さを発揮出来ていたと思う。妹系ヒロインとしてのポジションも、設定上の頭の良さも、シナリオ中できちんと発揮されていて、くるくる変わる表情や声優さんの演技も相俟って、本当に可愛いキャラだった。
……………エンディングに関わる所までは。

作中何度もオシュトルへの依存に近いブラコンぷりは表現されていたし、幾ら気丈に振る舞っていてもまだ幼いのだと言う意味もあって、オシュトルが捕らえられた時のネコネの胸中は察するに余りあり過ぎる。
宮中に侵入した時、「何をしても気付かれない」と言う双子の言葉に、真っ先にその効果を裏付ける意味での短慮を冒したのは未だ子供であるシノノンだった。だがその時点では話の表現として「見つからない」術の効能を読者に説明する為の、言って仕舞えばイベントの一つである。同時に双子はその場で「離れ過ぎると危険」と言う事を注意しているし、シノノンの行動とその後の説明とは「軽率な真似はしない様にしよう」と一行に再認識させた筈だ。双子の消耗もあるし、迂闊な真似はせずに手早く目的を達成せねばならない、と読者もその切迫感と危機感とを感じただろう。

だが、牢に辿り着いた一行がその目的の一つであるオシュトル救出の機を窺わねばならない場面で、ネコネが短慮を冒しそうになる。然しヴライがその場に居た事もあってか(ハクが萎縮し動けなくなる様な状況)、ネコネはその場ではハクに押さえ込まれて止まる。
だと言うのに、ヴライが消えた途端にネコネは周囲を、状況を省みずにまたしても飛び出して仕舞う。結局一行は発見される事となり、オシュトルを救出するまでに無用な戦闘行為を行う事となって仕舞った。
幸い手早く片付いた為に侵入者の事が露見する事は無かった様だが、一行にも、オシュトルにも、アンジュにも、双子にも、大きなリスクを背負わせる行動となったのは否めない。
だがここまでは、兄を思う故のネコネの感情的で突発的な行動だったのだと、まだフォローが出来る。無論、行動自体は誉められたものでは決してないが、ネコネと言うキャラクターを思えば未だ納得の行く段階だっただろう。傷ついた兄を前に、気丈な彼女とてじっとしてなどいられなかったのだ、と。

騒乱の宮中を何とか逃れようとする一行の前に次に立ち塞がった兵士は、ネコネの変装を怪しみ、荷車に隠したアンジュやオシュトルは危うく発見されそうになる。ハクが咄嗟に弁を利かせる事でその場を逃れたが、ネコネにとっては身長や年齢と言う已むない事とは言え、己が足手纏いになりかねないと言う事実は強く感じ取れた筈だ。頭が良い彼女だからこそ、その事実を本来強く心に留めておかねばならなかった筈なのだ。
それでも彼女はまた繰り返す。一人皆に信じられて残ったオシュトルを、一度は納得した振りをしても結局は案じて勝手に荷車から飛び降りるのだ。ハクが、クオンが、皆が信じたオシュトルの戦いを、妹である彼女は信じる事が出来なかった。そして、誰に相談する事も願う事もなく、身勝手に飛び出して行く。
結局追い掛けようとしたクオンを制してハクがネコネを追った。そしてネコネはハクに言われ、「遠くから見守るだけ」と約束をする。
それにも関わらず、またしても彼女は繰り返そうとする。が、恐らくはその可能性を考えていたのだろうハクによってネコネは速やかに取り押さえられる。そう、つまりハクがいなければ、或いはハクの手が間に合わなければ、ネコネは兄の元へと駆け寄っていたのだ。これから仮面と言う人ならざる力を使ってヴライと決着をつけようとしている兄の元へと、何も考えずに。己の感情だけで。

ここまでで既に四回。実際に飛び出せたものと未遂を含めても、四回。兄を思う突発的な衝動だけで、ネコネは仲間の手を振り払って飛び出している。理性で止まった事はここまで一度も無い。
そして、更に五回目。遂にネコネは決定的な過ちを犯す。
やった事はと言えば簡単だ。今までの四回と全く同じ。「兄さま!」と叫んで飛び出した。それだけ。何かが出来た訳でもない。何かをした訳でもない。ただ衝動的に声を上げ足を動かした。たったのそれだけ。
四回、繰り返して。その内では敵兵に見つかり皆を危険に晒すと言う明かな過ちを一度経ていると言うにも拘わらず、ネコネはまたしても繰り返して仕舞うのだ。
ハクはオシュトルの戦いを信じていた。隙を見て全力を叩き込む事を、オシュトルが勝つ事を信じていた。だから、その正に手に汗握る戦いを目の当たりにして、ネコネから手が離れて仕舞っていたのかも知れない。
然しネコネは兄を信じなかった。兄を信じず、己の感情だけで動いた。
結果、オシュトルの待っていた一撃は外された。更に、怒り狂ったヴライの前に晒されたネコネは、逃げる事も出来ずに、正に言葉通りの足手纏いとなって仕舞う。
そんなネコネを庇いにハクが飛び出し、オシュトルは妹を、親友を護る為に自らの命を投げ出した。
誰よりも「こうなって欲しくない」と思っていた筈のネコネが、結果的に兄を死なせる事となったのだ。
頭が良い筈の少女が、たった一回――否、たった五回の、取り戻しのつかない過ちを犯した結果がそれなのだ。
これが、茶番でなければ何だと言うのか。ライターさんはここに来て何がなんでもネコネの株価を落としたかったとしか思えない。

オシュトルの死は結果的にハクの死となった。そしてハクの死は、クオンやルルティエ、仲間の皆を悲しませる事となった。特にクオンには、その心に非道い瑕を残した。
恐らく。これは半ば想像でしかないのだが、ハクは酷い自責を感じた筈だ。自分がネコネを止める事が出来ていたら、と思った筈だ。ネコネが愚かな真似をしたから、ではなく、己がネコネを止められなかったからだと、あの茫然の瞬間にそう思ったからこそ、ネコネを庇いに飛び出したのだろうから。
だからか、ハクはオシュトルの死を前に、彼の願いを受けてヤマトを、アンジュを護る事を、親友の無念を晴らし名誉を取り戻す事を誓い、ネコネもそれに応じる事を選んだのだろう。兄を失い泣きじゃくるネコネにハクがどんな言葉をかけたのかは解らない。
だが、二人は共犯者となった。偽りの仮面の共犯となる事を二人は選んだ。それを貫き通し、皆を欺き通し、それでもハクの決意した修羅道を共に歩く事を選んだのだ。
それだと言うのにネコネは最後に言う。「演じてやるのです」と。
………何故上から目線?兄が死んだのは、ハクが死ななければならなかったのは、四回やっても懲りなかったアナタの責任でしょう?
単にいつもの強がり口調だったとしても、この言葉一つだけでネコネの最後を締める印象は大きく変わる。ハクを殺してまで、オシュトルの道を修羅に貶めてまで、クオンを傷つけてまで「二人」が選んだ事なのだから、ここは台詞を変えるべきだった。ネコネにはその道を選び護って支える義務がある。責任がある。贖罪の必要がある。
だから、「演じるのです」こう言うだけで、全然違った。いつもの強がり口調の上から目線だと、ネコネの意思はそこには無く、「仕方がない」と言う様にしか聞こえなくなる。ネコネは繰り返した愚かさから何一つ変わっていない様にしか見えない。
ネコネの意思が定まった事を表現する為にも、彼女が変わらなければならない、強くならなければならないと言う表現の為にも、この台詞は本当に頂けなかった。五度の過ちも含めて、ライターさんはネコネに何か恨みでもあるんじゃないかと疑いたくなる程にこれは酷いと心底に思った。

3でこの辺りやネコネの心情に対して何かしらフォローが無ければ、ネコネと言うキャラクターを本当に嫌いになって仕舞うかも知れない。本編中が可愛すぎるだけに、この落差は酷いと言わざるを得ない。

*

続けてハク。
(本編中はともかく)アニメでは顕著だが、オシュトルと矢膤と対比させようと言う意図が出ていたし、それとなく似せている容姿、偽りの仮面と言う言葉からも、ハクがオシュトルに成り代わる或いは成るのだろう想像は出来て仕舞っていた。
偽りの仮面に関してはアニメから入った為に、「オシュトルが何らかの理由で死に、ハクが代わりを務める」のではないかと当初思っていたのだが、肝心のオシュトルはずっと息災の侭。
やがて八柱将たちの身につける仮面を見て、そして帝が嘗ての人類だろう確信もあって、仮面はウィツァルネミテアのレプリカか何かで=偽りの仮面、と言う意味なのだろうかと思い直しかけていた所でゲーム本編をプレイし、「偽りの仮面」の真意を知った、と言う形となった。

変則的ではあったが予想通り…なのは良いとして。ゲーム本編ではハクとオシュトルとの「似ている」対比は正直あからさまには表現されていない。ハクとウコン=オシュトルとは親友であり仲間と言う存在にはなったが、本編中のハクとオシュトルとの絡みはその殆どが、オシュトルの依頼をハクが聞くだけ、と言った類のものであった。ネコネが珍しく懐いた(?)と言われる下りはあるが、それとて別段説得力があるものではない。

中盤〜終盤近くに二度だけ、ハクが手製の仮面でオシュトルの振りをすると言うイベントがある。どちらもコメディタッチに描かれており、どちらもネコネ絡みの和み系イベント。ネコネがハクの変装とオシュトル演技にまるで気付かない、と言う表現がされており、エンディングで二人が迎える「偽りの仮面」の結末の伏線と言えば伏線に当たるのかも知れないが、こんな和み系ギャグイベントを以てして伏線と言い張るには余りに御粗末と言わざるを得ない。

言って仕舞えばハクは「オシュトルとして」皆を欺いた事が本編中に無いのだ。つまりエンディングでは実績ゼロの変装、否、変身となる。
作中、クオンやオウギには鋭い洞察力がある事が幾度も描かれている。特にクオンは幾度となくハクの嘘を見抜いては指摘している。
つまり、クオンはハクに対する洞察が非常に深い筈なのだ。「オシュトル」がハクの死を告げた時にまずクオンは鋭く反論した。つまり状況がどうであろうと、クオンは「オシュトル」の言葉を疑ったのだ。その鋭い言葉からはショックを受けて判断力が鈍っていた、とは到底思えない。クオンはハクの生存を信じていた。況してまともな死亡報告さえも受けていない、骸も見ていない状況なればこそ、クオンがハクの死亡を信じる根拠は何処にも無い。傷ついていた筈のオシュトルが無傷で戻り、ハクが不在だと言うその状況を不審に思わないと言うのは余りにおかしいのだ。
ネコネと「オシュトル」の沈痛な様子を目の当たりにした所で、クオンにはハクの生存を信じる気持ちの方が大きい筈なのだ。そこまでクオンはハクの事を軽く思っていないからこそ。
詰まる所、クオンがハクを見誤るに値する根拠が、状況が、あの場の「初めてのオシュトル変装」には全く無いと言える。それだと言うのにクオンは何故「オシュトル」の変装如きを見破れないのか。
今まで作中クオンを欺く事など一度も出来なかったハクが、どうしてそれを成功させられたのか。クオンがどうして、仮面を纏っただけのハクを見誤れると言うのだろうか。
それだけハクの演技が、心が徹底していたと言うならば、その根拠や伏線が事前に無ければ説得力が全く足りていない。だから、どうして鋭い筈のクオンがあの瞬間だけ、最も忌避したかった筈の現象に対して急に鈍くなって仕舞ったのか。不思議でならない。
夕陽の中ハク達の帰還を待ち続けた彼女には、戻る人影が二人しか居なかった時点で既に厭な予感の様なものはしていたのかも知れない。だからこそ最後までハクの事を訊かなかったのだろうとは思える。だが、それならば余計にハクの生存を信じる筈なのだ。少なくとも今まで本編中に居たクオンであればそうしていた筈だ。
この辺りから、話の都合、と言うもので、クオンの心が折られて仕舞ったと感じざるを得なかった。もう少し上手く「クオンにも見抜けない」理由が必要だったと思う。

そして一方のハクもハクだ。クオンはハクの死をショックとして抱えながらその場を去った。ハクはクオンにだけでも真実を話そうかと悩み、然し断念する。
だが考えてみよう。クオンはその後、追っ手に因って一度は捕らえられる。だがあれはクオンだからこそ生存出来たが、もしもあれがショックを受けて飛び出したルルティエだったらどうだろう?或いはクオンが普通の女の子であったらどうだろう?
命は無いだろう。或いはもっと酷い事になっていただろう。ハクの偽りは、(その偽りに付き合わねばならぬ筈のネコネもだけど)そしてその後にフォローをしなかった事は、下手をすればクオンを殺しかねないものだったのだ。
余り考えたくはないが、ハクはトゥスクルに戻るクオンに、ヤマトの内情の、しかも今後護られなければならない秘密を知らせる訳にはいかないと「オシュトル」として考えたのだと思えなくもない。
こんな事情もあって、ハクは恩義ある筈のクオンではなく、ウコン=オシュトルとの友情と、兄の娘であるアンジュを護る方を取ったのだ、と見える。

……正直に言おう。ハクが、あの怠け者の男が、どうしてオシュトルを演じきる、全てを偽り通して生きると言う悲壮で絶対的な決意を出来たのか、それが最後まで読み終えた今も理解出来ない。
オシュトルに対して、ネコネを止められなかった事に責任をどれだけ感じたと言え。兄の護りたかった人間の意志云々の話を継ぐとして。「あの」ハクが、全てを欺き「オシュトル」として責を負うなどと言う大それた決断が出来たのか。
元よりハクは弁が立つし頭は良い。表層的にオシュトルの有り様を演じる事ぐらいは可能だろう。だが、体力も剣技もオシュトルには到底及ばない。仮面を外して仕舞えば誤魔化す事さえ出来ない。これから敵として向かい立つ事になるやも知れない親友のミカヅチを、頭の切れるライコウを、同じ八柱将の者たちを、一体どう欺けると思ったのか。そして真実が露見して仕舞えばハクは、オシュトルに成り代わり民を欺いた男として糾弾されるだろう。ネコネ以外の全ての人間を欺き通そうなどと、適う筈もないのだ。
それらのリスクや労ぐらいハクには想像が容易い筈だ。それでも、怠け者で極力面倒事を回避しようとする男が、どうしてそれを選べたのか。
果たして責と言うだけで人格を曲げてまでその道を選ぼうとしたのか。どうして皆を欺いて生きようなどと思ったのか。その二つの説明が圧倒的に足りていない。無理矢理に結論付けている様にしか見えないからこそ、この「偽り」は茶番にしか見えなかった。オチになんとか持って行く為の話にしか見えなかった。
仲間たちもハクとオシュトルを案じているのだ。だと言うのに、どうして最後の最後「だけ」、ハクは真実を知るネコネ以外の誰をも信用せずに、誰もを騙して生きる事を選んで仕舞ったのか。
仲間たちは一体何だったのだろうか?ハクにとっては信用に足りぬ存在でしか無かったのだろうか。「オシュトル」として生きる事に責任を感じ、修羅の道となる事を理解しているならば、だからこそ皆の助けは絶対に必要だった筈だと言うのに。
……本当に、理解に苦しむ所だった。

その結果クオンが酷く心を灼かれ苦しんでいた事を見ればこそ、ハクの所業は、決断は、残酷なものであったと言わざるを得ない。
ハク自身にも躊躇いや苦しみがある事は否応なしに伝わって来たが、それでもハクはそれを選ばなかったのだから。
これであっさりネコネ以外の人に「オシュトル」の正体が知れたりしたら、本当に救いが無いしフォローも出来ない。

オボロはハクを殴りに行っても良いと思いました本当に。

*

そしてクオン。
ずっと気になっていたのは、何故クオンはトゥスクルを出たのか、と言う点。
当初やクオンの態度からして、「皇」或いは「お姫様」として扱われ、未来の定まって仕舞っている己を憂いたのもあって、國を少し離れ自由な世界で様々な見識を深めてみたいと言う「理由」なのだろうと思っていた。遺跡巡りが趣味なのも、父であるウィツァルネミテアの事を少しでも知りたいと言う思いからではないだろうか。

だが、双子の用いた大封印(の亜種)を目の当たりにし、その効果の前に体調不良の様な姿を見せた事で考えが変わった。或いは新たな真実の断片が見えた気がした。
実は、わたしはハクオロ=ウィツァルネミテア、であっても、肉体的には「人間」のアイスマンであると言う認識だった。故にミコトとの間に為した子は、少なくとも本編中知れる限りでは「普通」である様に見えていた。遠い子孫となるだろうエルルゥには何ら特異な能力は見受けられず、アルルゥの「森の娘」の能力は珍しいがゼロではないのだと、ルルティエの存在で明かになって仕舞っている。
アイスマンの遺伝子を改良した事でムツミの様な特殊な能力を持った存在も生まれている。だが、それはアイスマンの望んだ「子供」ではない、人工的な改良を施された「子供」だ。
つまり、ユズハとハクオロとの間に普通に生まれた子供が、その特異性を受け継いでいるとは全く認識していなかったのだ。
作中クオンは何度も怪力を発揮するがそれはギャグ的な話の中の事であり、クオンだけが特別怪力だと語られる事は無い。尻尾の握力(?)は凄いが、それは他のキャラが行っていないので比べ様がない。戦闘中のクオンの体術は確かに恐ろしいものはあるが、それは他のキャラと比べて威力が際立っている訳ではないし、身のこなしと言う意味ではどのキャラクターも似たり寄ったりに凄い。
クオンは既に非凡なる才や様々な能力を見せていたので、そこに来てウィツァルネミテアの影響が彼女の遺伝子中に刻まれている事、更なる人外の存在であるなどとは想像の埒外だった。

大封印はウィツァルネミテアを封じる術だ。双子が行ったものはムツミが行ったものとは異なり、ヤマトの帝が造った「仮面」に対し効力を発揮し易いものだったのか、クオンはヴライ程にはその影響を受けてはいない様だった。そしてエピローグで彼女は発火や凍結と言う能力を以て他者の命を容易く奪った。
ここからも、クオンの受け継いで仕舞ったウィツァルネミテアの力とは、想像以上に大きすぎるものであるのではないか、と推測出来る。
ハクの死と言うショックを前に暴走したクオンの意識がそれを行った事に対し、アルルゥもオボロもドリグラも然程に驚いてはいなかった。どころか、オボロはそんなクオンの宥め方を知っている様だった。つまり、これは初めての事ではないのだろう。
幼い頃、感情のコントロールも侭ならぬ様な頃に、クオンは度々この様な状態に陥って仕舞っていたのかも知れない。幸いにも彼女の周囲に居た兄や姉は強者ばかりだし、彼女に愛を寄せてくれていたから、止める事は出来ていたのだろう。クオンが決定的に傷つく事がない様に、最悪の事が起きる前に止められていたのではないかと思える。
それでも、もしも民がクオンのそんな力を目の当たりにしたらどうなるだろうか。禍日神、とヤマトの兵が怖れたのと同じ様な反応が返った筈だ。

これは単なる想像でしかないのだが……、ひょっとしたらクオンは、そう言った経験を経た事で國を一時とは言え離れたくなったのかも知れない。友達が出来なかったと言う台詞も、皇の娘だから誰とも仲良くなれなかったと言う訳ではなく、彼女が幼い頃のカミュの様に「そうだったから」なのではないだろうか。畏れられる事をこそ怖れて、クオンは己の事を誰も知らない所に行ってみたかったのかも知れない。……なんて。


ともあれ、今回の「偽りの仮面」の物語は、ハクを導いたクオンの想いの物語であったのだろうと個人的にはそう思えた。
OPのヌエドリとは鵺鳥。鵺とは様々な動物の混じった怪物の事。
そして鵺鳥と言うクオンの技。歌詞。
鵺とはクオンの、ウィツァルネミテアの力を受け継いだ存在の暗喩だろうか。

この後のクオンがどうなるのか、「オシュトル」はどうなるのか。3でその辺りが語られるとしたら、フォローされるとしたら、クオンの深い悲しみと、ハクの修羅の決意とがどう相容れるのか、それ次第でこの「偽りの仮面」の評価は(割と)大きく変わると思う。

*

……そんな訳で色んな意味で呆気に取られるエンディングと、ガン泣きするエピローグを経て、残された謎についてを少し考えてみる。妄想八割で。

・黒幕について。
…………まあ、ウォシスかその背後か、と言った所。が、現在知れる範囲での黒幕。
ホノカの彼に対する態度やウォシスが帝から得ていた謎の信頼を思えば、ウォシスは帝の秘密をある程度知る(知らされている)人物であった可能性は十二分に有り得るだろう。ホノカやアンジュと同じで、帝によって造られたと言う説も考えられる。
シャクコポルの従者を連れていると言うのも意味深。嘗てシャクコポル族は人間の愛玩用のイキモノとして寵愛を受けていたと言う設定がある。
そんなシャクコポルは、(今はトゥスクルの領土となった)クンネカムンにて王国を築き、ウィツァルネミテアの怒りに因って滅ぼされた。だが何人かは他の地に逃れたと言う可能性はあるし、元よりヤマトの領土の近くに住んでいたと言う可能性もあるので、彼らがどう生き延びているのか詳細は定かではない。
ただ、ウォシスがそんなシャクコポルを従えていると言うのは、「人間」或いは「支配者」の暗喩とも取れる。
何にせよ、アンジュに「頑丈に造られている筈の天子をも害せる」毒を仕込むならば、それを知っている者にしか出来ない筈である。また丁度良くアンジュから証言を引き出しているしで。
まあ真っ黒過ぎて逆になんだかなあと言う感はする。

・エントゥアについて。
わざわざ、ホノカを探す事を諦めウォプタルに乗って飛び出す描写があったのだから、ほぼ確実に彼女は「ハク→オシュトル」の場面を見ていると思われる。そうでなければ何の為にオシュトルを追ったのかの意味が無くなって仕舞う。
今のところウォシスを全く疑っていない彼女が「それ」を知る事で果たしてどうなるのか……。

・ホノカについて。
帝によって造られたとは言え、亡き妻の姿を模した彼女は帝の知る全てを任されていた。
今は恐らく地下のシェルターに逃れているのではないかと推測されるが、双子と意思疎通が出来ないと言う状況は謎に過ぎる。彼女が意識的に(理由あって)思念を通さぬ様にしていたのか、そんな事も出来ぬ状況に晒されて(既に捕まっているとか)いたのか。
ハクがホノカの行き先として思い当たった筈の地下を、逃げ場や避難の場として選ばなかったのも、その辺りに答えがありそうな無さそうな。双子の手にかかれば仲間たちに状況を悟られせる事なく地下へ逃れる事も、そこから帝都の外へ逃れる事も出来そうな気もするのだが。
何にせよ「都合良く」ハクはそれを選ばなかった様に見える為になんとも言い難い所。

・覆面兵たちについて。
……〜前作の仮面兵の様なものの様に思えるが、もっと発展した……仮面の成分を体内に直接取り込んだとかそう言う感じ?
死して塩の山になるのはオシュトルと同じ。つまり、仮面の力は身を文字通り滅ぼすのだと言う解答。
ウズールッシャの残党たちが偶々にその実験に扱われたのか、ウズールッシャの残党がその力に触れて仕舞ったのかは不明。
ただ、トゥスクルと言う戦地に於いて確実にハク達一行を狙ったと言うのは確かなので、何者かに因る作為がある事は間違い様がない。
もしもハクの存在やクオンの力を狙う何かだとしたら、それに対する描写が何も無いのは奇妙過ぎるので、全員を等しく狙った様に見えるが…。


……………想像を挟む余地が微妙に少ないのが難点。