2019-08-17
・ちょっと前にも触れて来ましたが、名落宮は本来、闘神士が通常知っているべき基本情報じゃないといけないものの様な気がします。
名落宮は式神にとっての地獄であるからして、式神の扱いを──言って仕舞えば『間違えた』闘神士の負うべき罪であるのが、本来正しい認識でなければいけない類のものです。

"お前が誤った所為でお前の大事な式神が地獄に堕ちたのだ"、と。

そうでなければ名落宮と言うものに闘神士が立ち入れる様になっている筈も無いのです。式神に与えられる「だけ」のペナルティであれば、闘神士が名落宮に式神を探しに行ける道理も必要無い。
ところが実際は闘神士は名落宮へ行けます。勿論幾つかの条件(や状況)はあるでしょうが、空間を越える術さえあれば、伏魔殿を経由せずとも名落宮へ行ける事は小ヤクモさんが実証済みです。
・ところが漫画版アニメ版共に、名落宮については闘神士も闘神巫女もその存在を知らない事が普通と言う認識です。
少なくとも現代の闘神士たちは名落宮と言う存在を、そこに式神が堕ちると言う事を知らない様です。
…と言うより、敢えて知らされていないのだ、と推測します。…と言う話です今回は。

・名落宮に赴いたのはアニメ、漫画共に作中三人のみです。前回とちょっと被りますがまとめると、
りっくん>マサオミに教えて貰い伏魔殿経由で向かった。なおナズナは名落宮の事を知り得ていなかった。
マサオミ>ヨウメイの両親に教えて貰い、伏魔殿経由で向かった。
ヤクモ>ラクサイ様に使いに出されたバンナイに(式神に)直接案内された。
・りっくんは子供ガシン時代の多分そのまんまの行き方でしょう。つまりはりっくんは時を越えて両親に教えて貰った様なものとも言えますね。

・闘神士ではなかった子供ガシンが名落宮の事を知っていたかどうかは解りませんが、少なくとも1200年前のタイザンやウスベニには、「式神に人を傷つけさせたら式神が名落宮へ堕ちて仕舞う」と言う認識がありました。
そしてりっくんの両親も名落宮の事を知っており、名落宮へ至る道も知っていた。更には名落宮の式神との契約方法も当然の様に知っていました。
ここから解るのは、少なくとも1000年前までは名落宮についてを闘神士は(宗家は)知り得ていた、と言う点。
伏魔殿経由での行き方(道)がある以上、ひょっとしたら名落宮に闘神士が行ける様に設えた可能性もあります。いざと言う時に式神を迎えに(救済に)行ける様にと。
・……つまりは、大昔の真っ当な闘神士たちは、式神を扱う時の戒めとして名落宮の事を知っていたし、出来れば名落宮に堕とさない様に尽力していたのだと推測出来ます。
少なくともウスベニは式神で人を傷つける事だけは絶対に避けようとしていました。
・然しそんな『正しい』闘神士の居る反面で、1200年前頃の人間同士の戦で式神が使われ、式神たちは次々に名落宮へと堕ちた(アバンより)。そうしてウツホが世界再生を行う訳ですがそこは一旦さておいて…。

・名落宮と言う重要情報が現代の闘神士まで伝わらなかった理由としては恐らく、ウツホの件同様に意図的な動きがあったのだと推測出来ます。
式神で人を傷つける事に罪悪を憶える必要はない、と。
・それは式神を「名」で縛り使役する闘神機の使用が広まるのとほぼ同時の動きだったのではないかと思われますが、要するに戦の手段の為にでしょう。式神は武器であって力。権能であって人間の道具。いざと言う時には式神が失われようが、敵を倒すに手段を選ぶ必要はない。そう言う認識にしようとしたのではないかと。

・然しそんな動きがあったかも知れない反面で、式神で人を傷つけるのはタブー、と現代の闘神士の間には何となく伝わっています。飽くまで何となく程度であって、名落宮がどうとかまでは知られていない様ですが。
一応の理由としては、式神を失う、節季のバランスが乱れる、などの言い分(…)がある様ですが、少なくとも地流の皆さんは式神を降神して初めて「さあ戦いだ!」と解り易いルールとしての理解をしている風には見えます。
・式神で闘神士を倒すのではなく、式神で式神を倒して結果闘神士の記憶共々倒すと言う状況は、現代的な解釈にすると、法に触れるから、とも取れます。式神を扱ったと言う証拠が無いにしても、行為そのものは傷害には代わりないですしねえ…。
・地流闘神士たちが犯罪者集団みたいにカオス化するのを防ぐ為に、ミカヅチがそう情報統制(式神で人間を傷つけるのは禁忌だと)した可能性もありますね。禁忌どころかもっと明確に「減俸」とか解り易い処罰があるのかも知れません…。

・それでも基本的に、式神で人を傷つける>式神が名落宮に堕ちる>名落宮に式神を探しに行く、と言う事に関しては、現状まず失われた知識であると言う事は恐らく間違い無いかと思われます。
特に天流には全くそう言った話は伝わってない(残っていない)様子ですね。
・名落宮の一部は現世と時々(多分は意図的に)繋げられる事がある様な感じですが(アニメ36話)、基本的にはそれには式神側の意志が必要なのだと思われます。ヤクモを迎えに来たバンナイさんもそのケースでしょう。
(契約していない式神が現世に出て来る=契約せずとも存在を保てる空間である名落宮(の一部)と一時的に空間を繋げた、と言う事だと思いますので…)
・ともあれ式神側からは名落宮の存在を隠す様な意図は無さそうですので、やっぱり闘神士サイドに名落宮の存在を隠そうとした、と言った意図があったんじゃないかなあと。

・名落宮へは、伏魔殿から行けるけど伏魔殿とは異なった空間、と言う風にガシン君は教わった様ですね。まあ実際伏魔殿は空間の繋がりが曖昧な部分がある様ですし、名落宮への連結点は他にも幾つかあると思われます。
ヤクモが使ったのもその辺りの様ですが、ラクサイ様のお部屋直通と言う(言って仕舞えば名落宮へ向かう本来の目的は果たせない場所なので)異例の界門な気はしますよねえ…。
漫画版で出てきた、名落宮直通の札を用いた、と個人的には解釈したい所なんですが、大変悔しい事に描写的には厳しいかなあと…。札を予め伏魔殿の中に設置しておいたとかそう言う感じに見るのもアリですかね?
・…まぁそれはさておき。マサオミさんが名落宮行きへの途を、自分の知る一つだけだと思っていたとしたら、自分は式神連れで行きたくないと断言した所から、式神五体も連れて平然とした顔で帰って来たヤクモ様にそりゃ敵愾心も涌くってもんな気はします。ものっそ慌てて隠れたくもなるんじゃないでしょうかねえ…。