メモラビリア / 3



 月の光降る境内で、白虎は人懐こそうな笑みを浮かべていた。最初に出会った頃の懐かしい姿形で、あの頃の様に。

 『なーに景気の悪ィ面してやがるんだよ、ヤクモ。ヒトが折角心配して、ちっと無理して闘神機から抜けて来てやったってのによ』

 呆然と見返すしかないヤクモの眼前へと白虎は悠然と歩んで来て、指先で鼻をぴしりと弾く仕草をしてみせた。
 とは云え実際に感触は無い。幾ら霊体とは云えど、本来の時間軸を異にした身に触れる事は流石に適わないらしい。
 「……なんで」
 そんな無粋とも云える微細な事実の積み重ねを意識する事が、却ってヤクモの意識を現実に留めてくれていた。危うく懐かしさに泣き言などこぼしそうになっていた事に気付いて、そんな自分に苦笑が浮かぶ。
 『何で、も何もなァ。俺は一応お前と契約してやった式神なんだぞ?一度絆を結んだ相手を、なんだかちーっとばかし薄くなっちまってるけど、だからって何年経ったって見失っちまう様な事はねェよ』
 くらくらする頭で紡いだ疑問に、白虎は得意気な笑顔でそう返して来た。
 懐かしい気配と、変わらない心の有り様に、ヤクモの肩から一気に力が抜けた。ずっと抱いていた不安が、まるで毒気を抜かれた様に流れ出て仕舞う。
 却って、この夢の様な過去の時間を『そう』であると認識出来る。
 何故ならば『不安』の正体は、過去(これ)を得難い、取り戻す事をさえ望もうとして仕舞うのではないかと云う、己の心自身にあったのだから。
 だからこそ、懐かしさに安心したらその理由も、無くなる。変わらぬ過去に、ただ静かに憧憬を馳せる。
 そう思った途端、ヤクモの喉が鳴った。くつくつと笑いが漏れる。
 『あぁ?ナンだよ、景気悪ィ面してたかと思えばいきなり笑いだしやがって』
 「久し振りで、懐かしくなったんだ。お前はやっぱり相変わらずだなって」
 笑みの気配のまだ強い顔を起こすと、奇妙に穏やかな白虎の表情に出会う。優しさと慈しむ様な気配を漂わせたその様子は、別れの時に目の当たりにした横顔に酷くよく似ている様に見えた。
 「あ、」
 ヤクモは気付いて口元を押さえた。ここが己の時間軸よりも過去の時空であるのならば、未来(さき)の事は漏らしては決していけない事だ。
 『久し振り』と語ったヤクモの、その年頃には、この白虎は共に在る事が出来ないのだと。未来と云う明確な形で示して仕舞った。
 然し白虎は全く気にした様子無く、軽く腕を組んで口の片端を持ち上げた。再びの微笑みを寄越す。
 『気にすんなって。お前のその闘神機を見りゃ解るさ。そこに俺じゃねェ式神が繋がってる事ぐらいな。
 ま、どう云う形になったかは知らねェが──その面見る限り心配はなさそうだな』
 子を見守る親の様な言い種と同時に大きな手が伸びて来て、座り込んだ侭のヤクモの頭をぐしゃぐしゃと撫でる仕草をした。
 「……うん。お前のお陰で、俺は随分変われたと思うよ」
 届いてはいないのに、その温度や感触を胸の奥で思い出し感じる事が出来て、目元が自然と弛む。それとは真逆に、ふと白虎の眉が寄せられた。
 『おいこらヤクモ。さっきッからお前お前って、まさかテメェで付けた名前を忘れてんじゃねェだろうな?』
 不機嫌そうな様子の中に、然し何処か面白そうな気配を残した表情を前にして、ヤクモは相好を静かに崩した。口元を甘く弛めて、先程から掠れて出なかったその名を。
 
 「………コゲンタ」
 
 呼んだ。
 己の付けた名を。式神の名乗る名を。これからも誰かが呼ぶ事になるのだろう、その名を。
 証を。絆を。思い出を。呼んだ。
 
 『おう』
 
 ヤクモの真摯な呼び声に、コゲンタは満足そうに頷いた。カラン、と尻尾の鈴を鳴らすと、少し真剣に戻った表情で向き直る。
 『で、お前は何でそんな状態になっちまってこんな所に居るんだ?刻渡りの…じゃなさそうだし、何か厄介事にでも巻き込まれちまったのか?』
 「そうだな……うん、そんな所。早い所戻らないといけないんだが、その方策がね」
 ふむ、と考える様な仕草をするコゲンタの姿を前に。懐かしい場所で懐かしい相手と向き合う内、段々自分があの頃に戻って仕舞った様な錯覚を憶える。挙措や言動まで何処か幼くなっている様な気がして来て、誤魔化す様に軽く喉を鳴らしてヤクモは立ち上がった。
 そうすれば、少し眉を寄せているコゲンタの背丈は自分よりも頭ひとつ分は下になる。果たしてあの頃には無かった目線に戻った所為か、先程までの甘い惑いが薄らぐ。
 此処は確かに六年前の刻だ。然し此処で自分は、コゲンタや此の時空の知る『今の』ヤクモでは有り得ないのだ。
 この時間軸には既に、小学五年生のヤクモが居る。故に同一の魂を持つ存在としての矛盾に弾かれ、今の彼は此の『六年前』には存在する事が出来ない。
 刻渡りの鏡の様に、その矛盾を排する事を許す世界の意志が介在しない限り、この時空に本来有り得ない存在である『六年後』のヤクモはその有り様の介入を許されない。
 然し目の前の白虎の式神だけは、その繋がり続ける絆で、ヤクモの存在を知ってくれた。
 これが縁なのかと、心の何処かがひっそり安堵に微笑む。
 『なァ、ヤクモ』
 不意にかけられた声に静かに視線を落とせば、真剣な表情のコゲンタに出会う。
 『余り過去(じぶん)を排するな』
 そう、紛れない忠告の意図を持って、紅い瞳が案ずる様に顔を覗き上げて来るのに、ヤクモは息を呑んだ。本能的な感覚がその意を正しく汲み取り、拙い、と囁く。
 『今の時間軸には、本来在るべきお前が既に居る。つまり未来に在るべきお前の存在は、理に適って無い以上凄ェ不安定だ。
 存在力の均衡(バランス)としちゃ今(こっち)のヤクモの方が優先される筈なんだが…、外的要因としてだけ見るとお前の力はそれを上回る──
 んっと、云っちまえば存在力の矛盾を、時空の理を変容させちまうに値する……様な気がするんだよ』
 理解はしていても言葉でニュアンスを伝えるのが難しいのか、コゲンタは今ひとつ歯切れの悪い言い回しをして、『とにかく』と人差し指を立てた。目を細める。
 『自己矛盾になっちまうんだが、お前が余りこの時間軸に浸っちまうと、どう云った訳か本来のお前の方が、存在って意味で排除されちまう可能性がある。本当は有り得ねェ事なんだが、何となく『揺らいで』いるのが俺には解るんだよ。何でだかは解らねェが……』
 お前の来た先の時代ってのはそんなんじゃねェだろ?、と念を押す様に云うと、再びあの慕わしげな眼差しをひととき見せてくる。
 それは紛れない信頼の。
 その視線に身につまされる様な思いを感じ取って仕舞い、ヤクモは強く頷きを返した。
 「……大丈夫。過去(ここ)は俺にとって確かに、取り戻せないものを思い知らしめる、望ませる事を錯覚させる程に、甘くて優しい時間だけど、」

 もう、願いは叶ったのだから。

 そう、言葉にはせずに呟く。
 この白虎との契約は、満了を迎えた。願った事は叶った。その先に佇むのが、今の『俺(じぶん)』なのだと。言い聞かせる様にして返す。
 二度と同じ望みを重ねるのは、結果に違えた過去(できごと)までをも望むのは、単なる我侭でしかない。或いは傲慢に似た思い違え。
 ここを越えて立った、先にある己の形は決して間違えてはいない。少なくとも、そう思える程には、ヤクモは健全な精神で育って来ている。
 この白虎や、その後の式神たちの、家族達の、周囲の人々全てのお陰で。
 だから、懐かしむ。その心を。この時間軸の世界を。其処に確かに在った自分自身を。それを見つめる式神を。
 「全く。お前に心配される様じゃまだまだ俺も駄目だなあ」
 『はッ。図体がちょっとばかりデカくなった所で、俺サマから見ればお前なんてまだまだ子供だっての』
 甘い記憶に浸りたくなる己を払い除ける様に殊更軽くそう云えば、似た様な云い種で返され、暫し二人して同じ様な表情で笑い合う。
 『なぁ、刻渡りの鏡を使う訳にはいかねェのか?』
 そうしていきなり笑顔から転じて、思いついた様に云うコゲンタへと、ヤクモは肩を竦めてみせた。
 心の裡にあった、この刻へと馳せる弱気を聡くも察して、コゲンタはわざと心安く在れる様に気遣って話してくれていたのだろうと気付いて、話題の割には自然と頬が弛む。
 「無理だな。イヅナさんに頼む訳にはいかないし、俺もあれを扱えるだけの知識がある訳じゃないからな。第一俺自体がこの時代にとっての『歪み』だって判断されたら、それこそ世界の調整力で俺そのものがどうにかされかねないし。
 一番手っ取り早いのは、此処に来た…と云うか連れてこられた時と同じ方法を使う事なんだが──ちょっと問題があって」
 『問題?』
 「どうも不完全だったらしくて失敗したそうだ。その結果が今の俺のこの不安定な有り様だとしたら、同じ方法を取った所で、」
 言いかけて、ヤクモは目をふと見開いた。うん?と首を傾げるコゲンタに視線を遣った侭、僅かに引っ掛かった思考を引っ張り出す。
 身体をすり抜けて通った人々。それは吉川ヤクモと云う、本来この時代に在るべく存在がそもそも居たからだ。同一の存在を排する矛盾への調整力で、ヤクモは己の時間軸と異なった時代である此処で、生物の認識から外された。矛盾の事象として。
 物質に作用する事が出来るのは、ただの物質には認識力が無いからだ。そもそもそうでなければヤクモは大地に足で立つ事も出来ていない。
 己の式神達と切り離されたのは、式神は時を超越した存在である為にだ。式神はあらゆる時空に介在する事の叶う存在であり、然しそれ故に全ての時間軸で同一の存在を保つ事はならない様に出来ている。
 過去より一本の道筋を辿る式神は唯一であり、記憶は時間を超えるが存在は時間を超えない。つまり同一の式神が同じ時間軸に顕現する事は世界の理を反した究極の矛盾となる。そしてそれは節季と太極のバランスをも崩しかねない。
 ヤクモは嘗て幾つも過去の時代を巡ったが、そこで白虎のコゲンタと存在を同じくする式神に出会った事は一度も無い。それが有り得てはならない事象故に。
 逆にこのコゲンタが『先』のヤクモの存在を、矛盾事象である筈の存在を認識出来たのは、『今』の契約者がヤクモ当人だった事に因る。結ぶ絆を同一とする、その深い縁のお陰だ。
 ともあれ。最初から時空の歪みの調整を目的とした刻渡りの鏡の場合とは異なり、単純に時空を越えて仕舞ったヤクモにはあらゆる矛盾を排斥するなど本来は叶わない筈、なのだが──
 先程コゲンタが警告して寄越したのは、己の存在の不安定さ(本来在ってはならないものとして)故に、本来は矛盾として排除されるべき側なのだが、この時代へと思いを深く埋める事で逆に『本来』此処に在るべくヤクモ少年の方が反発を受けると云う。
 それは果たして存在の不安定ばかりではなく、ヤクモ当人にある『力』の仕業である、と云われた訳だが。
 (だからと云い此処にとって未来の俺が少し強くこの時代を思っただけで、『本来』の俺が逆に排斥されるなんて事は、有り得ない)
 寧ろ逆に。この時代に在る本来のヤクモ自体もまた、存在を不安定にしていたとしたら?
 「あ、そうか」
 呟きがぽろりとこぼれた。余りに簡単と云えば簡単な結論に、口元が力なく少し下がる。
 そんなヤクモの表情を見上げ、コゲンタが不機嫌そうに鈴を鳴らした。
 『おい、さっきッからブツブツ考えてると思えば──手前一人で納得してねェで解る様に説明しやがれって!』
 「ん?いや、余りに簡単な話だったからつい。コゲンタ、俺がこの頃毎日何をしていたかぐらいは解るだろう?」
 『はァ?何してた、ってお前そりゃ、毎日の様に刻を渡って戦いに』
 簡単、などと云われた所為か、コゲンタは少し憮然と眉を寄せた。それが何だと云うのだとばかりに胡乱げな目つきになる。
 「だからさ。俺が不安定な状況にそもそも在る事になったのは、こっちの俺もまた、時空を度々渡る事で少しばかり不安定だったんじゃないかって。
 さっきも刻を渡って戦いに出ていただろう?実はその時、生物の認識に叶ってない筈の俺が近づいた事で鳥が逃げていったんだ。つまりそれはその瞬間は俺の存在が認識に適っていたと云う事だろう?今気付いたよ」
 つまり本来、矛盾として排されている筈のヤクモは、この時代に本来在るヤクモが時を越える事で『不在』になっている間は、辛うじて世界の認識に当てはまっていた、と云う事になる。
 恐らく、あの術は本当に『失敗』だったのだ。時空を越えると云う世界の矛盾を、正しく排せなかった。時を越える事で存在をあやふやにしていたヤクモだったからこそ偶然にも、反発される事も矛盾にかかる事も無かっただけで。
 刻を渡ろうとした瞬間、世界の理──調整力に適わず、弾かれるなり排されるなりの現象が起こったのは想像に易い。
 (失敗の記録が残ってる筈もない。そもそも過去へ戻ると云う事自体が上手く行かなかった訳だからな。
 つまりこの時間軸は彼らが求めていた宗家へ至る為の『刻』と云うよりも、時空に於いて矛盾を抱いた存在になった俺を、辛うじて矛盾を生み辛い場所(時間軸)へと飛ばしただけに過ぎない)
 時は不変を望む。過去から現在へと至る筋道は辿った一本のみで、その最中の歪みは大きく未来を違えはしない。そうならない様に世界の理は出来ている。
 そう安易に、人は時を渡る事など出来ないのだ。ましてそれが、歪みを調整する為ではなく、歪みそのものを生む為だとすれば猶更。
 「兎に角、物凄い偶然の産物とでも云えば良いかな。そうとなれば帰るのも特に難しい話じゃない。そもそも俺が『矛盾』なら余計」
 『??』
 「今日帰って来たのが午後早かった様だから明日は日曜だろう?日曜なら朝から戦いに出るだろうし──確かこの頃はマホロバ一派も精力的に働き過ぎていて毎日の様に刻を渡っていた筈だから……うん、問題無し」
 疑問符を量産し続ける白虎の表情がどんどん不機嫌になって行くのを感じ、ヤクモは軽く微笑みをコゲンタへと向けた。
 短気なこの白虎は、永い刻を生きる式神の癖に、苛立ちの沸点がかなり低い。
 「心配は要らないと云う事だ。明日になれば元に戻る」
 そう、軽く締めるとヤクモは再び元の位置に腰を下ろした。意味を問い質したいのだろうが、異なった時空の存在として深く介入する訳にもいかないと云う葛藤に、コゲンタが何とも云えないまどろっこしそうな様子で呻いているのを見上げ、笑う。
 「だからもう『俺』は大丈夫だ。心配してくれて有り難う、コゲンタ」
 じゃ、とぱたぱた手を振るヤクモを真正面から見下ろして、白虎の表情は何とも煮え切らない様な戸惑う様な類の表情を見せて来る。
 『……お前、なんッか淡泊になったなあ?俺はともかくお前にしてみりゃ久し振りとか、もっとこう…色々あるんじゃねェのか?』
 不審そうな物言いだが、心を案じる様な気配を含む事には気付いて、「ああ」とヤクモは笑んだ侭で頷いた。
 確かに、先程までの──コゲンタに声をかけられる迄の心行きであったのならば、この優しい日の憧憬に浸って仕舞いたくなっていただろう。
 然しもう今ははっきりとしている。
 「だから、だよ。今(ここ)の俺はずっとお前に会えているんだ。今日だって明日だって、一緒に戦っている。共に生きている。その事実(過去)以上は別に必要無いさ」
 これは、過ぎた時代を思い出している様なものだ。
 過去のコゲンタとは既に共に生きて来た。未来がどうなっているかは誰も知らず。
 そう云う意味では未だ、自分はこの白虎とは再会出来ていない。
 全てを割り切ったヤクモのそんな言葉に、コゲンタは数回ぱちくりと瞬きをしてから、鼻の下を擦って、へッ、と笑った。
 『ッたく、可愛気のねェ奴に育ったなぁお前』
 「多分それもコゲンタのお陰だな。精々可愛気とやらが出る様に育ててやってくれ」
 『ッかー。ナマイキ云う様にもなりやがって。
 ……ま、お前が大丈夫だってんなら俺はいつだってそれを信じているからよ』
 溜息も心なし、穏やかな。そんなやり取りの最後をそう、はっきりと──『信頼』の式神らしい確信を込めて。心底己がそう思う事を誇りにしているかの様に云って締められる。
 『じゃあまたな、ヤクモ』
 ぐ、と握った拳を差し出して来るのに応え、ヤクモも手を伸ばした。感触もない拳同士が然し確かに触れて、そうして離れる。
 『また』と。どう云う意図を以て白虎(かれ)はそう口にしたのか。
 「……バイス」
 密かな呟きに、返るのは温かな微笑み。口の動きが同じ言葉を告げ、コゲンタの霊体は現れた時と同様に音も無く消えていった。
 先程までの様な空虚な感覚の残滓もなく。ヤクモは吹き零す様な吐息を漏らし、静かに目蓋を下ろした。
 「……………でもさ。もし望む事が許されたとしても」
 呟きは吐息に似て。
 「過去(お前)はもう記憶(ここ)に居るから。俺が呼ぶとしたら、それは『此処』ではなく、未来なんだよ」
 夜の帳の様に、感情の蓋と共に静かにそこに落ちていった。
 
 *
 
 早朝。まだ早い内から慌ただしく手伝いに走り回っていた少年が本殿へその姿を消した後、ヤクモはゆっくりと立ち上がった。
 今日も良い天気になりそうだ。まだ朝の内はそう温度も高くなく、山から下って来る涼しい風が木々を揺らしながら斜面を降りていく。
 そろそろ、あの頃の自分はコゲンタと共に刻を渡っただろうか。そんな事を考えながら境内の中程に佇み、静かな挙措で顔を起こす。
 余りのんびりしていると、イヅナが巫女の仕事をこなす為に忙しく立ち働き始める。ヤクモの『未来』である己が彼女に見咎められる事は避けるべきだ。
 だのに、まだ僅か心に引っ掛かるのは──在りし日のこの有り様への未練だろうか。
 否。近い意味で辿れば恐らく、憐憫。未だあの少年はこの先に待ち受ける運命を知らない。
 それでも勿論、確信はある。あの信頼の白虎が共に居てくれる限り自分(かれ)は大丈夫だと。
 こうして、今此処にある己こそがその答えなのだから。
 (コゲンタは……その事を、知っていて敢えて指摘しなかったのかも知れないな)
 あの温かな眼差しを最後に思い出し、心の引っ掛かりごと胸の裡へと静かに収めると、ヤクモは長い時間をかけて瞬きをし、それからはっきりと空を見据えた。見る方角は何処でも良かったのだが、目指すと云う意図を思えば尤も相応しい様に思えたのだ。
 (歪み。矛盾。此の刻の理に俺が違えた存在ならば)
 此処に今はっきりと、本来在る存在を払い除け『有り得ない』存在として在るものを、世界の──刻の理が、捨て置く筈は、無い。
 本来この時空に正しく在るべくヤクモではない、違えたこの存在を。その調整力が放置してくれる筈など、無いのだ。
 コゲンタの警告の通りに、ヤクモははっきりと己の存在を其処に誇示した。意識で、知覚で、己こそ違えた存在であると示す。
 端的な手段として──式神を、己の『今』契約する式神たちを望んだ。その存在を『呼ん』だ。
 闘神機に手を沿わせた瞬間、ぞわり、と背筋を強烈な圧力が走る。転移し此処に降り立ったのとは逆の、空へと吹き上げる様な、意識を攪拌する不快感と安堵。耳鳴り。
 「──頼む、皆」
 振り抜いた闘神機を抱いて、ヤクモは目を見開いた。
 歪みであるヤクモ自身を弾き出す際、その着地点が何処になるかは正直、こちらからは定め様がない。単純な圧力のみで或いは消失させられる畏れも充分に可能性としては有り得る事だが、それよりも己と本来繋がっている筈の絆を信じる事を選ぶ。
 この絆を辿る事が叶えば、この時空にとって歪みたるヤクモは元通りに、本来己の在るべき刻へと弾き出される筈だ。呼ばれる筈だ。
 探し出せ。この矛盾ではなく、ひとつ未来へと続く確実の絆を。探し出せ。違えぬ刻を。此の俺の辿り着いた先を──!
 視覚で理解する事が果たして叶うのか、真白な光がヤクモの全身を包み抱え上げ、次の瞬間、光の柱はその侭遙か天へと立ち上っていった。
 
 *
 
 『ヤクモ様!』
 脊髄から神経を一本に束ね引き抜かれる様な異様な不快感と、誰かの呼ぶ声に急激に、そして乱暴に意識が引き戻される。
 「ッ!!」
 眼球の裏に熱と違和感。背筋を走った、怖気と云うよりは吐き気に喉を鳴らし、ヤクモは横たわった侭で転がった。心臓がばくばくと音を立てて煩い。血流の速さが血管を軋ませ、全身が疼痛に満たされる厭な感覚。脳を巡る鼓動の度激しい痛みが脳髄を叩いて痛い。
 浮遊感どころか落下感。余程乱暴に引っ張り落とされたらしい。こんな酷い転移は初めてだと、冷や汗をたっぷりかいた額に手を当て、漸く思いだした様に呼吸を再開させる。
 『ヤクモ様、ご無事でありますか!?』
 『しっかりしてヤクモ、何処か痛い所とかはない?』
 のろのろと見やった右掌の中の紅い闘神機から、そんな類の五者五様の声が聞こえて来るのを暫し耳に流し、それからヤクモは漸く周囲に視線を巡らせた。
 在るのは一日近く前に目にした、あの暗い儀式の場。天井が高く見えるのは恐らく自分が横たわっている為。
 「……戻って、来れたか……」
 どっと全身から安堵の息を吐いて、ヤクモは身体を横倒しにすると左手を闘神機の上へと重ねた。
 『ヤクモ様、』
 伺う様な案ずる声達にその行動で応え、一息をついてから泥の様に重たい身体をゆっくりと起こす。
 周囲の様子は憶えのある侭変化は何ら見受けられない。とは云え時間の停滞した伏魔殿の内部では、一日が経過したのか、それとも転移した直後に戻ったのかさえも判然としない。
 「一体、どの位の間消えていたんだ?俺」
 訊いても詮はないと思っていたのだが、疲労は想像以上に思考能力を衰えさせていたのか、気付けば頭に浮かんだ疑問のその侭そう問いていた。途端、タンカムイの霊体がヤクモの眼前へと浮かび上がる。
 『殆ど一日!いきなり闘神機から放り出されて周囲もヤクモの様子も全く解らないしで、本当に心配したんだよ!?』
 堰が決壊したかの如く、姿を見せるなりタンカムイは物凄い勢いでまくし立て、猶もああだこうだと言い募る。途中ブリュネやタカマルやリクドウも混じり、彼らの剣幕に改めて己がどれだけ彼らに心配をかけて仕舞ったのかを思い知る事となり、ヤクモは闘神機を抱えて心底安堵の息を吐き出した。
 戻って来れた大半は、式神らがずっと正しき時空からヤクモを呼び続けてくれていた事なのは確かだ。それをも信じて、自ら歪みとして弾き出される事を選んだ訳だが、彼らの寄せてくれていた思いには感謝の念が尽きない。
 「大丈夫。無理矢理に時空を振り回された負荷で少し気持ちが悪いだけだ。心配をかけて済まない。……ありがとう」
 背を丸める僅かの挙措だけでも、泥の様に怠い身が不満を訴え軋むのだが、無理矢理に抱えた闘神機に顔を近づけると意識を総動員して、表情筋を笑みの形に動かす。
 『ヤクモ様もお疲れの様子でおじゃるし、今回は不可抗力とも云えるから、お説教は取り敢えず止めておくでおじゃるよ』
 そんな闘神士の様子から相当濃い疲労の質でも感じ取ったか、サネマロがそう取りなし、漸く式神達の興奮状態は何とか終息を見せる。
 『動けるか?ヤクモ。またこの術式が何らかの切っ掛けで起動する様な事になったら…』
 『そうですなあ。出来るだけ早いとこ離れたほうが良さそうでっせ?』
 未だ心配の質の濃い式神達の声の中、タカマルとリクドウとがそう云って来るのに、ヤクモは怠い脳を何とか活性化させた。油断なく周囲を見やる。
 最初に術が起動した時は何かをいじった憶えなど無いので、偶然かそれとも天流の闘神士に反応したか、それとも他に要因があったのかは解らない。今は何事も無かったかの様に場は静まりかえっているが、確かに再び何が起こるとも知れないのは確かだ。
 「気力は…万全。体力は──……お世辞にも、ちょっと満足とは云えなさそうだ。此処もこの侭放置して行くと云う訳にもいかないし……、少しの間休ませてくれ。端にでも寄っていれば、最悪術がまた起動したとしても巻き込まれはしないだろうから…」
 苦い表情を、体調に因るものばかりではなく浮かべ、ヤクモはふらふらと立ち上がった。三半規管がおかしくなっているかの様に地面とのバランス感覚も今一つ不確かで、かなり憶束ない足取りになって仕舞うのは致し方ない。まるで流動する泥の中を歩いている様だ。
 「あー……気持ち悪…」
 身体の側面で衝突する様にして漸く壁に辿り着くと、ずるずると肩をぶつけた侭で座り込む。表面的にも全身が怠い所に持って来て、油断すると脳の奥の不快感がダイレクトに、胃が逆さまになりそうな錯覚をも訴えて来て、ひょっとして二日酔いとはこんな感じなのではないだろうかと思ってみたりする。飲酒が原因ではないので、差詰め時空酔いとでも云えば良いのか。
 ともあれ。無理矢理歪みを越えて跳んで、無理矢理歪みとして正され戻されて来たのだからこの程度の不快感は我慢すべきだろう。
 『ねぇヤクモ。一体『何処』まで行っていたの?』
 不意に。寧ろ優しい気配すら漂わせて届いたタンカムイの言葉に、ぽたり、と額からつめたい汗が滑った。気怠さに虚ろに開かれていた目蓋を縁取る睫毛に落ち、押され自然と目が閉ざされる。
 「……少し前」
 『………………そっか』
 掠れた様な、然し何処か満足そうに笑みを乗せたその表情だけで全てを察したのか。タンカムイも、他の式神達も、コゲンタが見せた様な酷く慈しみ深い温かな気配を、ただ無言で寄り添わせて来てくれる。
 (…これが、お前の叶えてくれた願いの先だよ、コゲンタ)
 ふたりで戦って手に入れた、その先の。今の己の有り様。
 いつかはそれを、コゲンタに報告出来る時が来るだろうか。本当の意味での『再会』が叶う未来は訪れるだろうか。
 両の手で包み込む様に持った闘神機に向けて微笑もうとしたのだが、一旦落ちた目蓋は疲労と云う錘を乗せられ開いてくれそうにない。実際笑みを作れたかも解らない。気付けば全身の何処の箇所も僅かにさえ動いてくれそうにない。疲労感はいい加減に限界だ。
 少し休んだら、この傍迷惑な場所を封じるなり破壊するなりしなければならないと、その方策を巡らせる内、ヤクモは疲労の為の休息へと意識を手放していた。
 
 *

 泥の様な意識は、夢すらを見ない。
 過去を漂った、あれは或いは記憶の追体験と云うよりは、夢に近いものだったのかも知れない。
 事実。未来から、変わらない過去を望み見る事は、夢と云う事象と意味を同じくすると云えよう。
 然し、夢になど見ずとも、過ぎた記憶はいつでもそこにある。

 

 『──でね、ヤクモが消えちゃった時の皆の慌てっぷりったら。勿論僕もだけどさ。特にブリュネの叫びっぷり、是非ともヤクモに聞かせてあげたかったよホント』
 五枚目の闘神符を貼り終え、ヤクモはもう一度広間をぐるりと見渡した。
 『丁度ニュアンスとしては、分断されたって云っても良かった感じ。放り出されたって云う感覚はしたんだけど、どっちかって云うと切り離されて取り残された様な。でも僕らの意識は闘神機の中に普段居る時と同じで、会議室の中みたいに共有されてるから、そりゃもう皆して顔突き合わせて血相変えて大騒ぎになっちゃって』
 半時間ばかりの間、泥よりも深い眠りについて、目覚めた時には体調は通常通りに回復していた。一時的な脳の負荷の引き起こした症状と云う所が大きかった為だろう、多少の筋肉痛や頭痛はまだ残っているが、動き回る事には問題も無い。
 一応あれから何度も念入りに、勿論注意を払いつつ広間を調査したのだが、あの紙面に記されていた以上の情報は何ら発見出来なかった。突き放した云い方にすれば、伏魔殿の調査と云う今のヤクモの目的からすると全くの収穫無しと云う事になる。
 『ヤクモが無事だって云うのは何となく感覚的に解るし。僕らも名落宮に堕ちてはいなかったしね。だから最悪の事までは考えなかったんだけどさ、やっぱり心配で心配で』
 結局あれこれと相談し考えた挙げ句の結論は、この空間(フィールド)そのものを破壊する事だった。神流や地流が万が一にでも此処を発見したら、また己の様に巻き込まれる者が出るかも知れないし、何より術の知識などが悪用されかねない危機感が矢張り強い。
 封印と云う形を取っても良かったのだが、後世誰かが、此処を訪れた今回のヤクモ自身の様に、封印されていると云う事に興味を持って来ないとも限らない。
 「これで良し…と」
 故の結論である。
 先程からああだこうだと、ヤクモの意識が戻り体調も幾分良くなったのを見て取るなり、所謂『今までの経緯』と云う奴を語るタンカムイの言葉に頷き相槌を打ちながら、伏魔殿のフィールドとは少し異なった、この擬似的な空間を破壊する為の下準備をしていたと云う訳だ。
 『お疲れ様、ヤクモ』
 「ああ。それじゃ早速」
 ぱん、と軽く手を打つと、広間の五方に貼った符が五行各々の色で緩やかな明滅を開始する。それを確認するなり、ヤクモは別の符を用いて己の前に、この空間より脱出する為の障子(扉)を作り出した。
 足を踏み入れ、振り返る。
 天流の再起を、宗家の再来を悲願とした、此処は天流の妄執の地だ。
 恐らくは幾年もの間、ただそればかりを思い、栄光を再び取り戻す為にと。戻らぬ時へと執念を巡らせたのだろう。
 叶わぬ侭。届かぬ侭。世界の理には逆らえぬと云う事実すら認めず。いつかは取り戻せると、ただ。
 思い出してヤクモは、ジーンズのポケットからメモ帖を取り出した。間に挟んでおいたあの紙片を抜き出し、無造作に広間の中へと投げ戻す。
 はらはらと舞い散る紙面に、妄執の文字が躍って落ちていく。
 過去ばかりを切望し、囚われた結果の──それが或いは報いなれば。
 「……過去は寄る辺になるが、そこに縋り囚われるものでは無いと云う事を、何故認められなかったんだろうな」
 記憶の中に、心の中に残留するものは、未練や悔恨ばかりでは決してない筈なのだ。
 望んだ先の結果。得た未来。
 望んでいた過去。選んだ答え。
 だから。あの頃の思い出はあんなにも眩しかったのではないだろうか?
 時は覆らない。起こった事、起こした事象は結果として今此処に。
 垣間見たのは夢に似た憧憬。望まなくとも常に心の中に寄り添っている。
 縋らずとも、囚われずとも、常に此処に在る。
 そうして音も立てずに障子が閉ざされたその瞬間、妄執を積み重ねた空間は五行の力に因って消失した。
 
 *
 
 今度はいつも通りの、慣れた転移の感覚に押され、そっと足をついて目を開く。
 薄ら青い作り物の様な空の下に広がる、ただ広い草原のフィールドを軽く見渡し、風に煽られ踊るマントをヤクモは器用に捌き、歩き出す。
 目的としての収穫が得られなかった以上、無駄足だったと云えばその通りだ。まだまだ探らなければならない事、知らなければならない真実、辿らなければならない目的は目の前に山積みで、その為の尽力は当分終わりそうにない。
 「あ、そうだ。道すがら、俺がいない間どうだったのかとか、詳しく教えたりしてくれないかな」
 ふと思いだした様に手を打って云うと、タンカムイの、少しばかりむすっとした声音が返って来る。
 『さっき一生懸命話してたのに…。やっぱり空返事だったんだ〜?ブリュネの慌てっぷりとかなら、面白かったから何度でも話してあげるけどさ』
 『よ、余計な事はヤクモ様のお耳に入れる必要などないであります!』
 「そう、それとか。何かムキになっているみたいだから気になって。それに、半分ぐらいはちゃんと聞いていたぞ?」
 『…とか何とか云っているでおじゃるが、当のタンカムイもそれはもう見事な取り乱し方だったでおじゃるよ……多分』
 次々に漏れて来る悲喜交々のやり取りの端々に笑みながら、ヤクモはそっと闘神機に手を沿わせた。無意識に縋る様な感覚に任せる侭、胸に落ちた安堵をそっと仕舞い込む。
 「じゃあいっそ皆隠し事無しで行こうか。まずはタカマルの証言から頼む」
 妙に楽しそうな闘神士の云い種を受け、えーっ、と返る抗議にくつくつと溢れる笑い声。
 皆の珍しい様子を聞いたら、自分の事も話してみようかと心に昇らせて、ひととき意識を振り返らせる。
 あの時笑顔で信頼を向けてくれた白虎と、果たしてこの先に再びの邂逅を果たす日が来れば良い。
 その時は過去ではなく未来を見て、こんな風に笑い合えれば良い。
 敵となって仕舞うか、味方であるのか、それとも或いは全く出会う事など無い、かも、知れない──が。
 何れにしても。願わくば笑顔でいれば良い。
 過去は幸福であり疵でもあり、何より標だが、決して還る場所ではなく、目指して良い場所でもない。
 故に、望む。
 再び心安く、彼の白虎と笑いを交わし合って会える、未来の、その時を。




素晴らしく説明冗長デッチ上げ完全パラレル、何がやりたかったってOP1のあの表情から24話の惚気聞かされ「はぁ…(きょとん)」までの、喉に引っかかった小骨みたいなすっきりしなさ。とか、もどかしさ。…の筈。
パラレルなのでアニメ本編への妄想接続どころか、今までの話にも繋げる気ありません。投げっぱなしブツ切り。

元ネタと云うか、切っ掛けネタになったのは記憶ちょっとあやふやなんですが覇者印の天神町イベント。小ヤクモさんが刻渡って来てりっくんに遭遇して、コゲンタが何で二人?って焦った後「ここはまだ俺が来て良い時間じゃないんだね」みたいな気付き方する奴。凄く詳細曖昧…。
ともあれ。覇者印自体パラレルだからこそ有効な遊びですが、果たして逆だったらどうかなと云うノリで。

個人的に。カップリングでなく相棒と云う関係として、漫画版の二人が一番理想にあるんですよ、別れ方も。(蛇足に加えるなら再会も)何か完璧に「出来上がって」いる為余計な手出しをせずとも好きなので、逆に言葉少なになって仕舞うんですがそのへん。
シチュエーション的にどうしても過去を振り返る形になって仕舞うので、どうしても未練に見えがち。実際ヤクモは過去を振り返りはするけれど、(有り得なかった事を時に描いて仕舞う事があったとして)そこから使命感以外の理由無しに進む事が出来ない人ではないんだと思(っていたい)う訳で。(……とは云え24話は多分辛いと云うか、漸く吹っ切れた、みたいなものありそうだけどね…。いやいきなり惚気るコゲが悪いとは云わない)
要するにコゲに会いたい様な、でも敵対っていう最悪の結果も有り得るから会いたくない様な。でも過去のコゲを追いかけるんじゃなくて、会うならば未来(このさき)として望む。と云う。 つまり吉川ヤクモって人格を構成しているのは過去の事象だけど、その主体は偉く前向きだって話をどうしても。

ともあれシンシア以上に妄想設定デッチ上げが長くなったので(大半繰り言ですが)一応言い訳ひとつ。強引や矛盾には敢えて触れず(逃)。
・時間を渡る人の事。 … まーあれです軽々しく過去から未来を変動させる事ってやっぱ出来ちゃいかんでしょと云う。
刻渡りの鏡の、とってつけた様な設定仕様に「万能のタイムマシンじゃなくて鏡が何らかの波動を捉えた所じゃないと移動できません」とあるのを、「『今』の未来へ至る流れを変容させかねない『要因』となる歪みが出来た時にそれを正す為」と拡大解釈。実際ノブナガのケースではほぼ歴史通りの流れ(ランマルの存在介入もつまり歴史の一部)になった訳で。つかあんだけマホロバんが各地破壊して暴れ回っていると未来くらい何らか変化しそうなんですがそれはそれで。
時空を移動する手段は鏡以外にもあるのは確か。りっくん(ヨウメイ)の場合は「時を越える」指向性が予めあって飛ばしたと云うより、大鬼門を開いて何処かに飛ばしただけでそれが偶然時空を越えると云う結果になっただけ、な気はしますが…。
ともあれ鏡が実際そう云う効能を持っているなら、それを人の手で再現出来ないか、ぐらいは誰か思う気がしないでもない。
ので、そんな再現が叶ったとして、理論的には万能に時を飛べる筈が、然し世界の理(歪みを正す調整力)に適っていないので、結果矛盾を起こして「無かった事」にされる。だろうと云うデッチ上げ。実際本当に「無かった事」にされちゃったら周囲の人間からも消えた人の記憶なくなる気するけど。

辻褄合わせは大好きですが矛盾だらけなのは仕様です。ついでにおんみょ逸脱してる気がするのも仕様です。あーあorz