Story/モエかん
モエかん各ルートネタバレ解説と一部余計な考察やメモ。
※現状自環境でで読み直しの出来た、コンシューマ版及びモエかすを参照。

攻略ではありません。
ほぼほぼ読み直しメモとその注釈程度であり、個人的な感想文の様なものでもあります。
ストーリーラインをその侭追うのではなく、解り易さの為に謎の解答などから先に書かせて頂く事もありますので、物語を楽しみたいと言う場合にはご注意を。
飽く迄いちファンの個人的な理解の範疇ですので、公式の見解とは異なる点も多々あるだろう事を予めお詫び申し上げます。

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 ●霧島篇
膨大なモエかん設定を語る為のシナリオとして用意されたルートで、設定的な観点から見るとメインと言っても良い存在に当たる。
……が、残念ながらモエかん本篇では、未完成の様な状態として存在しており、設定補完のシナリオとしてだけ見ても、中途半端でよく解らなかったり適当に見える流れとなって仕舞っている。

元々、大体が決着のつく他篇とは異なった様相を呈しており、モエかん設定を理解or楽しむ上では欠かせないシナリオである事は間違い無い存在。
この霧島ルートの補完であって完成版と言えるのが、ファンディスク「モエかす」収録の「Route of Kirishima」である。
そちらに比べると本篇霧島ルートは、大体の流れは同じでも、大幅にボリュームや説得力が異なり、もしもモエかんかモエかすか、どちらかをプレイ出来るのであれば、モエかすのRoute of Kirishimaを読む事を推奨するレベル。

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・霧島篇※ネタバレ含む大まかなストーリー

途中まではリニア篇同様に、リニアの不調を解決する為に貴広が奔走すると言う流れで進む。
貴広はリニアを救う為には本社へ逆らう事も視野に入れている為、秘書である霧島を巻き込むまいとする。
だが、貴広がカンパニーから逃亡中のPIXIES六天と連絡を取って解決策を模索すると言う叛逆行為を行うのは本社の思うつぼ。そこで、霧島が自らリニアを修理する為のパーツを調達しに本社へ赴くと提案。
危険だからと気が進まない貴広だったが、結局は霧島に言いくるめ…もとい説得され、彼女を本社へ向かわせる事になる。
然し帰還予定の翌日になっても、ある程度のパーツだけが届けられて霧島は戻らなかった。

そんな中、本社で何かが起きていると言う情報をおやじさんが掴んだ。
貴広はPIXIES六天を動かす事を決め、アナログだがこう言う事態では有効な通信手段である伝書鷲の蛍火を使い、伊勢へと連絡を取り、霧島が何者かに追われているらしいと言う事を知る。
霧島が何者かに追われる様な事は考え難い。だから、それは自分にまつわるトラブルなのではないかと、貴広はそう考える。

PIXIES六天の豪速の島風から蛍火の持ち帰った情報には、霧島を追う追跡者の名が欠けていた。島風が情報を伝え損ねるなどと言う事は考え難い。海を駆ける、豪速の名を持つ島風を捉える事が可能な者がそう居るとも思えない。
周囲の島々を破壊し、島風を捉える事も可能な存在。それは貴広にとって因縁深い、ナーサリークライムである極東日没に間違いなかった。だが何故、極東日没が霧島を追うのだろうか。

それからどれだけ経った頃か。不意に外に飛び出した貴広はいつか見た朱の光景を再び目の当たりにする。十年前にも見た、世界全てが朱に染まった朱キ日。真っ赤な夕日を背に、そこに極東日没が現れた。
その言葉の断片から、金気のナーサリークライムに因って、微弱になった貴広の存在が隠されていた事、霧島香織がその金気の血族として関わっていると言う事、極東日没の目的が五行の輪廻を断ち切る事である事などが知れる。
連絡不能となった島風も極東日没にやられたのだと知らされて貴広は怒りを憶え、無意識の内に僅かの力を取り戻すのだが、完全なナーサリークライム、それも相剋の相手に勝つには至らなかった。
戦いの中で崖から落下した貴広を海が守る。極東日没は、海と言う広大な水瓶全体が水気の主である貴広を守ろうとするのであれば、それは厄介であると感じたのか、その場は退いていった。

死に近い意識の中に在った貴広は、霧島の金気に因って呼び戻された。金は水を生む。その理に因って貴広の傷も癒されていく。
貴広が目を醒ました時、霧島は傍に居たのだが、酷く悲しそうに「これは一時の夢」なのだと告げる。そして再びの眠りに貴広が落ちた後、霧島は秘書室にて「社長」と思しき存在と電話で会話し、貴広との別れを覚悟するのだった。

翌朝、無傷で目覚めた貴広だったが、極東日没と戦ってからの記憶が曖昧になっている。幾らナーサリークライムとは言え、重症を負っていた筈なのに身体には傷ひとつない。
そこに現れた霧島は余所余所しい態度で、来客の訪れを告げる。
食堂で迎え入れた来客とは、本社から来た商品育成課の大柴と言う男だった。貴広の上司に当たる存在だが、横柄な態度を取る大柴と貴広は今まで顔を合わせた事すらない。
大柴は社長直属の戦闘メイドであるN Girl二人を伴っていた。実質社長の威光を背負った大柴に因って、島のメイドの一人が理不尽に殺され、怒りを隠せずに手を出した貴広は、反逆者としてN Girlに因って右の腕を切断されて仕舞う。
大柴の目的は始めから神崎貴広の粛正だったのだ。然しこの場での処刑は独断になると霧島が諫め、貴広は傷の手当てもされない侭に牢屋に監禁された。

本社からの命令として正式に、神崎貴広の解雇通知が届き、大柴は漸く処刑を実行出来ると喜ぶ。
失血で既に死に体の貴広と一緒に、貴広を助けようとして拘束されたリニア、冬葉、かずさらも中庭に連れ出される。
絶体絶命の状況に、貴広は抵抗する気力も力もない。だが、そんな彼の裡に語りかける声があった。
それは漆黒。貴広自身であり、貴広のナーサリークライムとしての力でもあるものの声。
(多分にこの場では霧島が金気相生で力を貸しているのだと思うのだけど…)
突如、中庭の噴水が壁となって、銃殺の為に放たれた弾丸を防いだ。そして闇の色をして貴広にまとわりついた水は、斬り去られた筈の右腕になる。
理解と再覚醒を果たした貴広に怯えて大柴はN Girlの一人であるN4に伴われて逃走。残るN12は貴広に対峙するが、N12はナーサリークライムの力の前にあっさりと返り討ちに遭って斃れる。

続けてN4と大柴を追った貴広は、ヘリポートにて逃亡しようとしていた大柴を捉える。
N4を自らの片腕を犠牲に絶命させた貴広が、逃げて行こうとしている大柴の方を見ると、丁度その乗ったヘリが何者かによって撃墜された所だった。撃墜したのは巨大な輸送機。ヘリポートに接岸した輸送機からは十人のN Girlたちが現れる。
新手かと身構える貴広であったが、その横を霧島が通り抜ける。そして彼女の身に、恭しくN0のマントが羽織らされた。
その手には、金気のナーサリークライムである霧島差異の愛刀である九字兼定。
霧島が、金気の霧島差異の遣わした存在であると気付く貴広。霧島は自らを差異の妹であると語り、自分は今まで貴広の監視をしていただけだと言い放ち、もっと強くなる様にと貴広に告げて立ち去って行った。

LABの深層にて、役目を終えた霧島香織を労う霧島差異。差異は妹が貴広の事を想っていた事を知っている。それ故に、自分を恨んでくれと言う。
ナーサリークライムの呪われた環を、いつまで繰り返せば良いのか。そうこぼして泣く霧島に、もうすぐ終わるだろうと霧島差異は呟くのだった。

数年後。
荒廃した世界にて貴広は、世界観どうなったの的なマント姿で酒場に居た。
その荷物から転げ落ちるN6の首に、貴広がナーサリークライムだと知った人々は蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。
命乞いをする者らに、「貴様たちにその価値はない」と、慈悲でもなくただ冷たく言い放つ貴広。それは最早人ではない何かの遣わした意志の様だった。
そんな酒場の外に極東日没が現れる。相変わらずの朱の色彩の中、三度目の対峙を果たすナーサリークライムたち。
全ては、人にとって全き災厄が如く存在たちの、終わらぬ呪われた輪の内での事だった。

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・霧島篇まとめと補足

霧島は当時攻略対象ですら無かったなど様々な事情があったからか、他キャラよりも若干少ない日数となっている。
過剰なモエかん設定を紹介する為のシナリオであったと言うぐらいなので、リニア篇を軸にしつつも他キャラ篇とは全く異なった展開・エンディングとなっており、空気感も全く異なる。

数年後の様子はエピローグだが、極東日没VSカンパニー(霧島差異)とで一悶着があったらしく、最早カンパニーだの何だのと言う世界観が何処かへお出かけし、一気に荒野な感じになっている。
ナーサリークライムと言う存在が理不尽に世界を破壊した恐るべき存在、である事は人々に広く認識されている様で、N6の首を持っていた貴広=N6と言う霧島差異の配下を倒す事が出来る(カンパニーに敵対している)者=ナーサリークライムと呼ばれている。
…と言うか世界に四人しか居ないのだから、個体名で知れていても良さそうなものなのですが。
また、N6の首が某国では数億の価値と言う事は、カンパニー(霧島差異)に敵対している国があって、差異の配下を倒す事でその勢力を削げると言う目的で、賞金をかけている、とか言う想像も出来ますね。
N Girlはナーサリークライムではないし、差異でないと再生が出来ない様なので、首を封印なりすれば少なくとも首の主は復活出来ないし、それで差異の戦力も減らせる訳で。
貴広が首を持ち歩いていた理由はよくわからんですが、金目当てと言うより、差異を倒す為にN Girl狩りをしていると言う、モエかす真霧島ルートみたいな行動を取っていた様な気はします。首持ってれば取り返しに他のN Girlが現れるかもとかそう言う理由もありそうですが…。
何にしても、荒野、酒場、金になる首と、西部劇めいた様相の画です、このエンディングは。最後に極東日没が夕陽の中に現れる(朱キ日現象)のも含めて。

先述通りにモエかすにて完全版の霧島ルート(Route of Kirishima=真霧島ルート)が発表されており、この本篇霧島篇とは展開ばかりか設定面なども大分異なっている為、この本篇霧島ルートは一種の未完成パラレルと見て良い。
俗に言う、俺(たち)の戦いはこれからだ!エンドである事は真霧島ルートも同様なのだが、そこに至るまでの流れ、戦闘メインの展開は非常に細かく描写されており、本篇霧島ルートでのすっきりしない感は概ね解消されている。

例えば本篇霧島ルートでは、
・霧島香織は霧島差異の妹と言う明確な存在であり、自身もナーサリークライムやそれに準じた存在である様な描写がある。
・霧島差異がカンパニー設立に関わっていたとしても、その目的は五行の輪廻の破壊であり、悪人の様には描かれていない。
・極東日没も五行の輪廻を破壊する為に行動しており、カンパニーの集めた情報を欲していた。
・飯島やALICE IN CHAINSの出番は無し。リニアに関する陰謀までは関わっていたのに、以降音沙汰がなくなって仕舞う。
・リニアが霧島の調達した代替パーツで即座に回復すると言う他篇同様の扱いで、途中からほぼ存在感がない。
・ナーサリークライムの設定も、五行五人が幾度も闘争をして来た様な風になっているのか、貴広が霧島差異の事や愛刀の事まで知っている。
・PIXIESを動かす事について慎重論が交わされるものの、いざ動かしても結局貴広自身の徒にはならなくなっている。
・然しそれによって島風が極東日没に倒されリタイアしている。

………などなどの点が描かれているが、真霧島ルートでは全くこれらは異なっている。全体的な流れに関する所にはそれ程に違いはない。
ただ設定があちこち異なり、それに因って貴広や霧島の行動の意味にも違いが出て来るので、やはり本篇霧島ルートはかなり軽いと言うか、行き当たりばったりの様に進んで行く感がある。

個人的な感想ながら、霧島ルートでは蛍火がものっそ酷使されているのが堪らない。貴広が蛍火をいちいち気遣って飛ばしたり、蛍火が貴広の言葉に相槌を打っていたりととにかく可愛いんですよもう。
それだけに「霧島の援護に」と飛ばして以降蛍火の消息が途絶え(本篇中で一切触れない状態)るのが悲しい。

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