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Story/モエかん
モエかん各ルートネタバレ解説と一部余計な考察やメモ。 ※現状自環境でで読み直しの出来た、コンシューマ版及びモエかすを参照。 攻略ではありません。 ほぼほぼ読み直しメモとその注釈程度であり、個人的な感想文の様なものでもあります。 ストーリーラインをその侭追うのではなく、解り易さの為に謎の解答などから先に書かせて頂く事もありますので、物語を楽しみたいと言う場合にはご注意を。 飽く迄いちファンの個人的な理解の範疇ですので、公式の見解とは異なる点も多々あるだろう事を予めお詫び申し上げます。 ========================= ●リニア篇 看板役であってメインヒロインとなっているリニアのシナリオで、一応本篇上ではほぼメインと扱われると思しきルート。 のんびりした前半から、謎解きの中盤、バトルメインとなる終盤と、緩急の付け方は悪いものの、物語としての完成度は高め。 カンパニーの事、ナーサリークライムの事、PIXIESの事など各種設定があちこち詰め込まれており、読み応えは本篇の他ルートに比べると抜群。 他のヒロインたちとの状況もそんなに矛盾はしない関係となっており、他ルートに比べて貴広が主人公として成長して行く段が比較的に細かく表現されていて、主人公の物語と言う点が主軸に置かれている。 その反面中心に据えられるリニアは、設定は濃いのだが、役割としては残念ながら中途半端(これはモエかすにて回収されている)。貴広から見たリニアの存在も少々中途半端。恋愛物としては弱く、設定解説物としても弱いと言う印象。 基本的に、設定などのややこしい部分は放っておいて、「ヒロインを助ける為に戦う主人公」と言う、普通にありきたりな物語として読んだ方が良い。かも。 …個人的感想ながら、PIXIESが完全な私怨で全滅させられるのと、敵役の隷のヤンデレが酷すぎと言う点で、好きと嫌いが自分の中で鬩ぎ合う複雑な感慨をもたらすややこしいルートでもある。 ========================= ・リニア篇※ネタバレ含む大まかなストーリー 旧式のアンドロイドのリニアを連れて飯島と隷と言う嘗ての部下が貴広の居る2563号島を訪れる所から、モエかんの全篇共通のストーリーは始まる。 その為にリニアルートは全篇に渡って一応は主軸に置かれたシナリオとなっていて、どのルートでもリニアの問題に関わり、解消すると言う手順を通る事になる。 そのリニアについての謎がルートの肝となる要素で、終盤までは(何となく解っていても正答には至らない様な)謎提示に費やされるのだが、謎投げタイムが少々長いのと、設定的に複雑な部分が多く、順を追うととてもまとまらないので、ここではずばり答えから説明させて頂く事にします…。 リニアは大昔に造られたアンドロイドで、然しその内側に嘗て百年以上前に亡くなった、制作者の娘である「庵原千歳」の魂を宿している。 (厳密には「魂」では無いのだが、オカルトめいた発想から成る死者の復活、心を刻むアンドロイドが娘として生まれ直して蘇ると言う思想などは非常に興味深く濃い設定となっている) 簡単に言うと、リニアと言うアンドロイドの内側には千歳の体組織から作った、千歳を模した思考部位が存在しており、リニアは千歳と言う思考部位の感情を自身の思考部位にて学習していき、何れリニアは千歳を再現した、千歳そのものになると言った感じの構想。 千歳は病弱な少女で、嘗て人間だった頃の(ナーサリークライムとして覚醒する前の幼生体だった)貴広との交流があり、貴広に借りた懐中時計を返す事が出来なかった事を、約束を果たせなかった事を心残りとして亡くなっていた。 なお貴広は永きを生きるナーサリークライムゆえに、その頃の記憶を明確な形では保持してはいない。リニアとの交流が深まるにつれて断片的にそれを思い出して行く形となっている。 休眠から目覚めて2563号島に来たリニアだが、彼女は千歳と同じ十年の時間しか生きる事が出来ない。その間にリニアの心の映し身として千歳が蘇ったとしても、その直後にリニアは機能停止の刻限を迎えて仕舞う。 そんなリニアを連れて来たのが隷。 隷は十年前に貴広の率いていたPIXIESの補欠要員の一人、要するに部下の一人だった。 そんな隷の正体は、リニアのプロトタイプのアンドロイド。つまりは千歳の心と呼ばれるものを持った存在であった。千歳の心が隷に、貴広の傍に行く事=PIXIESに入る事を望ませていたのだ。 (要するに男装っ娘と言う事なのだが、アンドロイドなのでどちらのボディなのかはよく解らない) 然し貴広は力を失って遠くへ行って仕舞った。憧れて焦がれたナーサリークライムの神崎貴広は失われて、遙か離島の2563号島で無害な昼行灯を気取る様になり、その時は停まって仕舞った。 やがて隷は庵原博士に因って封印されていた筈のリニアが再起動し、スクラップ寸前になっていた所を発見する。 リニアを回収し解析したLABの計画(これはモエかすではきちんと説明されるが、本篇中では不明瞭)に乗り、自分の想いを、本来の制作者──父の構想通りにリニアに託す事を決めた隷は、同じくPIXIESの補欠要員であって数少ない生き残りであった飯島と結託する。貴広を陥れる手段と嘯かれ、貴広に憎しみや失望の感情を抱く飯島はそれに乗る形となって、リニアと言う旧式のアンドロイドを、カンパニーの育成メイドとして2563号島へと持ち込んだのであった。 それと同時に、隷は貴広が嘗て千歳に預けていた金の懐中時計も置いていく。無論現在の貴広は時計の事を憶えてはいない。 リニアは島に来て程なくして、停止の刻限を前に弱っていく。貴広は一度懐に入れた存在を斬り捨てられる様な人間ではないから、リニアを救おうと奔走するだろう。 そこにカンパニーから、リニアを諜報用メイドと言う心の無い道具にしろと言う命令が来る。その命令と共に納品される新たなアンドロイドのボディを使えばリニアは助かるが、そのアンティーク価値や人格AIは失われて仕舞う。 命令を受ければ、自らの保身の為にリニアを斬り捨てたと、本社に未だ根強く残る貴広への崇拝や信用も消える。 命令に背けば、リニアを救う可能性は得られるかも知れないが、カンパニーは体よく粛正と言う名目で貴広を処分する事が出来る。 どちらに転んでも碌な未来は待っていない。だが貴広は霧島の反対を押し切って命令違反を選ぶ。飯島や隷の思った通り、貴広は一度懐に入れた存在を斬り捨てられる様な男では無かったのだ。 そんな最中、自分を慕いカンパニーに離反したPIXIES六天筆頭でもある伊勢が何者かに因って暗殺されたらしいと言う事を、連絡にやっていた伝書鷲の蛍火の死を以て貴広は知り、衝撃を受ける。 貴広の命令違反に対して粛正が行われる事となった。 念願叶ったとばかりに飯島と隷が訪れるが、貴広を守ろうとしたかずさが傷つけられ、リニアも貴広を庇って銃弾を受けて仕舞う。 隷はぼろぼろの身体で貴広を庇おうとするリニアを見て考えを変え、銃ではない謎の手段を使って飯島を殺害。 隷は飯島の属する取締役会と敵対状態にあるLABの擁する粛正組織である、NINの者だった。飯島は己が利用された事を悟りながら、無念の中で死亡する。 12月25日までと言う刻限を残した隷は、貴広らに情けをかけて立ち去る。 恐らくはこの猶予期間で、リニアや自分の正体に行き着いて欲しいと言う事なのだろうが、正直無茶振りヤンデレ過ぎる。 隷の寄越した情けこと、NINのIDを使ってあらゆる手段を尽くした貴広は、霧島や、かずさ、冬葉、鈴希ら他ヒロインや一般職員を島から逃がし、おやじさんと二人だけで戦いの準備を始める。 彼らは所長の横暴から逃れて来たと言う名目で本社に保護される事になる。霧島は別れ際に己の想いを貴広に向けてこぼすのだった。だがそれでも、貴広の決意は固かった。 (霧島の事などはこのルートでは明かされない為に、少々設定に無理矢理感が出て仕舞っている) 伝書鷲の蛍火の残したPIXIES六天・神風の伊勢の死の寸前の映像から、貴広とおやじさんは隷が漆黒に酷似した能力を使う事を知る。 また、ナーサリークライムへ対抗する手段としてLABは世界に「N計画」の成功体として隷の存在を公にした。 そこにあったのは、隷が漆黒に酷似したあの力を使って艦隊を沈黙させると言う姿であった。人類の叡智がナーサリークライムと言う存在への脅威にも対抗出来るのだと、LABは証明して見せたのだった。 然し漆黒は神崎貴広と言うナーサリークライムのみの持つ力。ナーサリークライムは世界に五人しか存在せず、隷はナーサリークライムでは無い。 誰あろうナーサリークライムである貴広はそれを本能的に理解している。LABは一体如何なる手段を用いて、漆黒を兵器の様に扱っているのだろうか。 貴広は隷の嘗て残したヒントを頼りに、リニアの正体や隷の正体を何とか突き止める。 そして、千歳であろうがリニアであろうが、隷がそれを脅かそうと言うのであれば、退けてでも守るしかないと貴広は決意する。 停まっていた懐中時計の中には、百年は前になる千歳からの手紙が入っていた。そこに記されていたのは、病で亡くなる寸前の千歳からの感謝と別れのメッセージだった。 手紙を取る事で再び動き出す時計。貴広の時も果たして動き出すのか。隷は一体何を望んでいるのか。 機能停止寸前のリニアを守る万全の布陣を用意する貴広とおやじさんは、LABから送り込まれた戦闘用アンドロイドの軍勢を様々な兵器で迎え撃つ籠城戦に入った。 リニアだけでも護る。その為に貴広とおやじさんは昔取った杵柄を駆使して、無謀な抗いを始める。 然し隷は漆黒で身を守りながら高々度からの落下と言う侵入を果たす。艦隊を沈黙せしめた漆黒の力があればこの島を呑み込む事など容易いが、貴広と話す為にか力をセーブして戦う隷。 それは明らかに貴広の負け戦だったが、貴広は戦いながらも思考を止めずに分析を続け、漆黒の様なものの構築していた盾を破って隷に一矢報いる。 そんな貴広をどこか嬉しそうに見る隷の、アンドロイドの体は、裡に無理矢理に注ぎ込んだ漆黒に因って崩壊しつつあった。 隷はナーサリークライムの、貴広の様に漆黒を扱えていた訳ではなかった。世界の根源素である漆黒、嘗てLABが貴広から採取したそれを模造したものを、隷と言う器に入れて無理矢理に動かしていただけだったのだ。 隷の繰る漆黒のレプリカに因って刺され倒れる貴広。そこに無理矢理に再起動したぼろぼろのリニアが駆けつける。リニアは、自分と──千歳と同じ心を持つ隷がどうして大好きな貴広を殺すのだと責める。 そんな中、貴広はナーサリークライムとして一時的に再覚醒し復活する。極東日没に嘗て奪われた右足も、今し方負った傷も無く、貴広は立ち上がる。その姿を見た隷は嬉しそうに笑う。 貴広はリニアの口から、自分の姉の様な存在である隷が千歳と同じ心を持っている事、だからその願いは自分と同じ筈なのだと言う本心を知らされる。 隷は、貴広がどんなに遠くへ行っても追いつける様に力を欲し、また、貴広の停まった時を動かしたいと願い、自ら漆黒の容れ物になる事を選んだのだった。 最期は千歳ではなく隷として扱って欲しいと願われ、二人が戦う必要なんて無いと嘆くリニアの願いも空しく、貴広は望まれる侭に隷を葬ってやる。 現状での再覚醒はほんの僅かの事で、貴広の身は隷の消えた後には、切られた手足や貫かれた傷も元通りの有り様になって、倒れて仕舞う。 こんな負傷は慣れっこだと強がる貴広を、アンドロイドの戦闘モードの膂力で抱えて(多分にお姫様抱っこと言う作中屈指の感動&脱力ポイント)、おやじさんの待つヘリポートに向かうリニア。 脱出を試みる三人だが、敵の戦闘用アンドロイドたちの妨害に遭ってリニアは大幅に損傷。願おうが叫ぼうが僅かしか顕現しない漆黒。誰ひとり守る事の出来ない己の無力さに打ちひしがれる貴広。 一時避難した隣島の廃墟に雪が降る。千歳と最期に会った日も雪が降っていた。 今日こと12月25日と言えば嘗てのクリスマスだが、これは神の計らいでも何でもない。水気のナーサリークライムである貴広の力が、隷との戦いで一時的に強まった事で雪が降って来ただけに過ぎない。 「リニアが消えても、好きと言う想いは消えません。貴広さんの中に、リニアが好きだって想う心は残ります」 奇跡など無い世界の中、リニアは泣く貴広にそう言い、必然として機能を停止した。 ========================= ・リニア篇まとめと補足 …実はこの後十年後、スタッフロールの後にあるエピローグで、リニアはリニアであって千歳として転生した記憶を保持し復活します。(貴広はナーサリークライムなので全く老けてないと思われる) 個人的には、ハピエンながらも、ちょっと蛇足かなあとか…。 都合の良い奇跡なんて無いと繰り返したり、ボディを換装したらリニアはもうリニアではなくなって仕舞うとか散々困難に直面していたのにあっさり修理(十年もかかったけど)でやってのけて仕舞うと言う台無し感もあるので、ここでは身勝手ながら省略します。 まあハッピーならそれで、こまけぇことはいいんだよ!と言うのもありだとは思います。 先述通りに隷のヤンデレエゴ力が物凄い話になっているのが難点かなと。 結局隷のした事は、貴広の十年で得た幸福や生活や過去の繋がりを、千歳の心残り一つ(それも隷のエゴなんだけど)で全部壊して奪っただけなので…。貴広の得て来たものは千歳と天秤にかけられる様なものなのかなと、無粋ですがどうしても思って仕舞う次第。 その心残りである千歳との交流も、長生きの貴広的には実はほんの僅かの出来事でしかなく、心残りとして刻まれっぱなしになる記憶でも無い訳で、ちょっと恋愛要素としても弱いかなとも思うポイントです…。 実はここ余りにさらっと自然に「過去」として展開されるので普通に受け入れがちですが、 リニアの製造年代が百年は前…?……ん?貴広は一体何歳なんだ…? と言う、ナーサリークライムと言う存在の設定を密かに提示している部分だったりします。本篇だけ読むと、年代計算ミスっているのでは?と思うこと請け合い。 また、鈴希ルートでも幼生体時の貴広の過去が出て来る為に余計に混乱するポイント。 別売りのファンブックなどを併読しないと、余程深く本篇を読み込まない限り疑問が色々と残って仕舞うのがモエかんの難点であり、リニアルートはその顕著な例のひとつでもあります…。 アンドロイドの心周りの設定や理論などは、ほぼこのリニアルートでしか語られず、かなり深く設定や描写がされていて、その辺りは面白いです。個人的感想ですが。 余談ながら、本篇中では唯一PIXIES六天のまともに描写されるシナリオでもあります。 死亡シーンゆえに見るのは非常にしんどいのですが、伊勢が登場するのはここだけです…。 貴広の「止まった刻」の象徴でもある時計ですが、本篇の時代では島が買える程のアンティーク価値のあるものの様です。そんなものに傷とかつけちゃって幼生体貴広くんたらもー。 然しこの時計、一体「いつ」、「誰」から手に入れたものなのでしょうね?と言う疑問と興味は尽きません。 千歳と交流のあった頃の貴広はナーサリークライムとして覚醒する前で、長い子供時代を過ごしていた筈です。…で、両親も身寄りもないから孤児院に居た訳です。当時はまだ島を買える価値は無くとも、金の時計ですからね、あの御時世に孤児院で奪われなかったのは奇跡的だと思います。 その頃の貴広ですら、自分がいつから時計を持っていたのか憶えがない。…ので、矢張り千歳に出会う前の「神崎貴広」と言う子供時代を別に過ごしていた可能性は高いかと思われます。 千歳の預かったそれを庵原博士は気にも留めなかったのか、千歳の願いを果たせずに貴広に返せなかった事を気に病んだのかは解りませんが、リニアの傍で共に置かれていて、それを隷が手にして、リニアと共に貴広に返しに来たのでしょう多分。 隷がPIXIES潜入当初から時計を持っていたとしたら、それを貴広に返さない理由がよく解らない事になって仕舞うので…うーん? ========================= ========================= |