Story/モエかん
モエかん各ルートネタバレ解説と一部余計な考察やメモ。 ※現状自環境でで読み直しの出来た範囲での参照。 攻略ではありません。 ほぼほぼ読み直しメモとその注釈程度であり、個人的な感想文の様なものでもあります。 ストーリーラインをその侭追うのではなく、解り易さの為に謎の解答などから先に書かせて頂く事もありますので、物語を楽しみたいと言う場合にはご注意を。 飽く迄いちファンの個人的な理解の範疇ですので、公式の見解とは異なる点も多々あるだろう事を予めお詫び申し上げます。 ========================= ●モエかす収録の真霧島篇(Route of Kirishima) 膨大なモエかん設定を語る為のシナリオとして用意されたルートである霧島篇…の、修正と補完を行った書き下ろしルートで、設定的な観点から見るとメインシナリオと言って差し支えない程の存在。 本篇にて未完成だったり中途半端であった部分も大体が隅々までフォローされており、立ち絵やイベント一枚絵の追加や演出面も強化がされている。 補完ルートでありながらそのボリュームも膨大で、ルートは固定ながらも初日から通しでプレイする事が可能となっており、モエかす一本でモエかん設定やストーリーを楽しむのも充分と言える。 (他ヒロイン篇などはプレイ出来ないが、設定準拠ストーリーを楽しむならば…) 本篇霧島ルートとは様々な面で異なり、パラレルと言って良いほぼ別ルート状態になっている。 正直ストーリーのまとめが困難なのと思い入れのありすぎで、ほぼ簡略化出来ませんでした…。アレェ…。 と言う訳で以下クッソ長々と参ります。一応これでも大分省略したんですよ…。 ========================= ・真霧島篇※ネタバレ含む大まかなストーリー リニア篇同様に、飯島がリニア用の最新アンドロイドボディを持って訪れる。その目的を訝しむ貴広に飯島は、貴広が本社の人間に未だ畏れられている事や、PIXIES六天たちが名誉を棄ててまで貴広に何故か付き従い続けている事への疑念を投げかける。 それを、買いかぶり過ぎだと諭す貴広は、自らを無力であると繰り返す。然し飯島は、貴広を再び殺し合いの地獄へ引き摺り出し、六天の見たもの、未だ信奉するものを知りたいのだとこぼすのだった。 不調を起こしたリニアだったが、飯島の持って来た怪しげなボディに積み替える訳にはいかず、現ボディを修理する為のパーツ探しに奔走する貴広。然し飯島に因って圧力が掛けられている商品管理部から協力を得る事は出来ず、貴広は直接飯島に抗議をする。 リニアの不調も、それによって貴広が何を選択するのかも、全ては折り込みだと語る飯島は、情に流される貴広を嘲る。 貴広にはリニアを見殺しにする事も、リニアを新しいボディに替えて道具にして仕舞う選択も出来ない。リニアを救う為には違法な手段に手を出してカンパニーに抗うしか方法が無い。そしてそれが露見すれば立派な反逆者となる。 神崎貴広の粛正。全ては本社の描いたそんな絵図の通りになろうとしていた。 独自の伝手を使って奔走してみても、百年も昔のアンドロイドのパーツが見つかる筈も無かった。 無害で無力な自分を陥れる為だけにリニアは使われた。そしてリニアの信じている隷までもがそれをよしとした。その事実に憤りを隠せない貴広。 貴広に取れる手段であり振るえる力はPIXIESに頼む事しかない。だがそれこそが本社の、飯島の狙いだ。PIXIES六天は確かに絶大な力を持っている。だが、彼らに連絡を取る事がまず貴広の粛正の理由になりかねない上、カンパニーから逃亡を続けて居る彼らの身もまた危険に晒される。 手伝いを申し出る霧島を、巻き込みたくない故に遠ざける貴広。 だが霧島は遂に独断で行動し、自分の伝手を使って物流管理部に掛け合う事で、パーツ入手が可能だと提案して来る。 パーツのありそうな場所は、本社でもジオフロントと呼ばれる危険な、廃棄業者の屯する様な無法地帯だった。霧島が直接行かなければ話は通じないからと、貴広は半ば脅される形で彼女の本社行きを説得される。 霧島は更に、昨日物流管理部の本部長が急死したと言う情報を告げる。状況からしてカンパニー内部の部署同士が割れているのは明らかで、この一連の動きは貴広一人を陥れる謀だけではなく、社内でもっと大きな策略が動いているのだろうと言う見解も示す。 貴広は常にマークされていて危険だが、その秘書である霧島はノーマークだ。だから安全であると彼女は言う。 そしてリニアにも時間がない。迷っている時間、議論している時間でさえも本当ならば惜しい。 根負けした貴広は、危険と思ったら戻る様にと幾度も念を押して、霧島の本社行きに同意するのだった。 翌日、輸送ヘリにて本社へ向かおうとしていた霧島に、通信機器であるPIXIESのバッジを持たせて、貴広は彼女を送り出した。 霧島は「さよなら…」と小さく呟くが、その声はヘリの音にかき消されて、貴広の耳に届く事はなかった。 おやじさんが、カンパニーの一斉粛正が始まった事を貴広に報告して来た。 そんな最中、ヘリポートに奇妙な輸送船が降り立つ。中から出て来たのは骸骨の様な扮装をした不気味な男たち。彼らはアンドロイドのパーツを届けに来たと言う。 おやじさんは彼らと、彼らの持って来たケースをLABのものであると指摘するが、疑った貴広は彼らに思わず掴みかかる。 その瞬間、神経を灼く電流に撃たれて貴広は一瞬で意識を失う。男たちはまるで全てを知っているかの様に「その男ならば数日で元に戻る」と、狼狽するおやじさんに言い残し、パーツを置いて去って行くのだった。 二日後。冬葉の治癒もあって丸一日寝込む程度で済んだ貴広だったが、本来ならば死んでもおかしくないダメージであったと教えられる。 その間におやじさんはLABの連中の持って来たパーツを調べ尽くし、それが代替品ではなくリニアのオリジナルのパーツである事を突き止めていた。 リニアにパーツが必要となった時にそれが届けられる。まるで遙か昔、リニアが造られた時から仕組まれていたかの様な話だ。 そもそも霧島がLABにパーツを届ける様に頼める筈もないのだから、本社に向かった霧島がこのパーツの入手に関わっていると言う訳ではない筈だ。 一体誰が何の為にこれを用意したのかと訝しむ貴広。然しリニアを救う為にはそのパーツを用いるしかなかった。 その翌日にはネットワーク回線で不通が起きる。ほぼ唯一の外部からの情報入手手段が断たれた形になったが、それは本社の仕業ではないらしい。一斉粛正と関係があるのか、ないのか。幾つかの島が消滅したらしいと言う分析まで出ている。 狼狽した貴広は取り乱して、霧島を助けに行くと言い出すが、おやじさんはそれを制して言う。 「昔のお前ならそんな行動は絶対に取らなかっただろうが。ここに来て人間くさくなったのは良いが、冷静な判断すらつかない様でどうするんだ」 諭された貴広は、この十年で自分をそう変えたのは霧島なのだと返す。 それ程までに感情的になってまで、貴広は霧島の身を案じていた。 ともあれ、出来る限り情報を集めて情報を把握する事に努めるほかない事態。貴広はPIXIES時代の極秘回線を使って情報収集を行う事にする。危険はあるが、この回線を使う「だけ」ならば、六天に直接の連絡を取る訳ではないから問題は無い。 そこに霧島からの連絡が入る。彼女は帰港便が無くて戻れない状況なのだと説明し、PIXIESを出してでも救援をしたいと申し出る貴広を叱責し、有無を言わせずに通信を切る。 それから貴広が幾らリダイヤルしようとも応答すら無くなって仕舞う。PIXIESの通信装置であるバッジで回線を遮断する事、現在地の座標を知る事も出来ないと言うのは普通では考えられない事だ。 ここに来て、霧島の様子にも焦臭いものをおやじさんも感じたのか、PIXIESを動かすと言う貴広をもう咎める事は無かった。 長考の末、貴広はPIXIESのバッジを用いた衛星回線から、六天の一人である神風の伊勢へと指令を送信した。これで本格的に本社を敵に回す事態になったと言える。 だがこれはきっと、飯島と隷がリニアを連れて来た時から定められていた戦い。きっと逃げ道など最初から何処にも無かったのだ。 昔取った杵柄で貴広は周囲の状況把握を開始していた。そしてどうやら何者かがこの近海の島々を破壊しながら移動していると言う事を突き止める。 だがそれはカンパニーの粛正部隊の所行ではない。他国の仕業でもない。その第三者の存在によって各部署も混乱している様で、独自に島を守る行動に出たりと、互いに疑心暗鬼になっている様な状況らしい。 幾度もPIXIESバッジ経由で霧島に連絡を試みる貴広だったが、やはり彼女の居所は特定出来ず、連絡も取れない侭だった。 そこに着信が入り、霧島だろうかと必死の声を上げて応じる貴広。だがそれは霧島ではなく、PIXIES六天の一人である神風の伊勢の双子の弟で、自身も六天に名を連ねる神風の五十鈴からの連絡だった。 本社に赴いた霧島の捜索と保護と言う指令を受けた五十鈴は早速本社に向かったと言うのだが、霧島が本社に入ったと言う機械的な記録も、人々の記憶も、一切無いと言う事実を貴広へと告げる。 困惑する貴広。五十鈴はそんな貴広に落ち着く様に言い置いてから、自分が独断で調べた、霧島香織と言う人物が十年前に突如記録に現れた存在であると言う、信じ難い様な調査結果を報告して寄越す。 十年もの間自分と共に居た霧島香織と言う存在が、偽りのものであったと言う事実を受け入れられずに反論する貴広であったが、五十鈴は飽く迄淡々と現実を、貴広が現実逃避も出来ぬ程に完璧に伝えて寄越すのだった。 霧島は社長直属のN Girlか、LABの粛正部隊であるNINに関係している可能性が高い。そのどちらもが情報と諜報とに長けたPIXIESであっても全容を掴みかねている組織だ。 霧島は恐らく貴広の、ナーサリークライムである彼の監視の為に、捏造されて送り込まれた存在。 突きつけられたそんな事実を前に消沈する貴広。それは十年前の貴広であれば到底感じなかった様な心の痛痒だった。 然し五十鈴はそんな貴広の変化を「そんな隊長も悪くないですよ」と、やんわりと肯定する。それは飯島や隷が口々に貴広を「腑抜けた」と評した事でもあった。 五十鈴は最後にこう付け足した。 「霧島さんの正体が誰であったとしても、もし隊長に危害を加えるのであれば、僕たちは霧島さんを許しませんよ…。全力で排除します…」 それは恐らく、事実を知って尚、霧島の事を今更信じられないと言う選択肢を選べない貴広の事を、正しくそうと解したからこその言葉であった。貴広はそれに対して「すまない」と返す事しか出来なかった。 今度はヘリポートに直接、リニアのオリジナルのパーツが届けられた。霧島の手紙が添えられていたが、それを運搬する航空機の訪れた様子はない。 それは荷物と同時に2563号島に現れた隷の持ってきたものであった。 説明もなく、まずはALICE IN CHAINSの間者を葬ると言って歩き出す隷。 島に居るALICE IN CHAINSと言えばかずさしかいない。かずさが危険だと思った貴広だが、隷はかずさを本物のALICE IN CHAINSではないとあっさりと見抜き、「ファーストの因子のないALICE」だと意味深に呟くのみで手を出さず、その代わりに侵入者であった怪しい男を武器も使わずに葬った。更には一般メイドの振りをしていたALICEの刺客である柚羽をも瞬時に葬る。 柚羽をALICE IN CHAINSの間者ではなく通常のメイドと思っていた貴広であったが、彼女の肉塊は漆黒の様な色を纏い、再生しようとするかの様に蠢いていた。 その様に愕然とする貴広に隷は、ALICE IN CHAINSは全て漆黒の因子を与えられた強化人間であると言う残酷な真実を告げる。つまりそれは、貴広の力が、貴広自身の感知していない所で、殺戮に用いられていたと言う事でもあった。 隷は千歳の記憶(リニア篇参照)を思い出さないどころか、間者の存在にすら気付かず、己の存在の起こす意味ですら理解しないでいる貴広に失望している様だったが、おやじさんが取りなす事で、リニアの為にも協力をしようと折れるのだった。 今日持ち込まれたパーツも、隷と霧島が共謀しLABより持ち出して来たものであると言う。 隷はリニアを利用して貴広を陥れる謀略を仕組んだのではなかったのか?困惑するほかない貴広。 「この島は不思議な所だ。こんな天才的な科学者がいると思えば、無限の力を有する者までもいる。何故この島には貴広を護るように強大な力が存在する?」 それはここが設えられた舞台である事を知って欲しいと言う隷の言葉だったのだろうが、今の貴広にそれを理解する事は出来なかった。 隷とおやじさんの発案によって、この島から無関係の人間たちを退避させる事になる。 一方でおやじさんは貴広に、LABから入手したパーツを調べて解って来た、己の掴みかけている真実の一端を告げる。 リニアは誰かの心を保存し、その心を持った人間を生み出す為に居るのだと。 生殖機能の無いアンドロイドが生命を生む。その矛盾に混乱する貴広。 それではその人間を生んだらリニアは消えて仕舞うのか?問う貴広に隷は、リニアは消えないと言う。寧ろ彼女はそうなるべくして生まれたのだとも。 「リニアは無機物から有機物に…アンドロイドから人間になる…。今度は完全な生殖機能を備えた…」 庵原千歳。その少女の存在を思い出す事の出来なかった貴広には、リニアの裡で眠る少女と言う存在も、その少女が貴広と再会する為に百年以上の時を越えて、再び世界に生まれようとしている事も、知る事は叶わなかった。 中央島で惨劇が起こった事を掴んだ貴広はその余りに一瞬の壊滅に、ナーサリークライムである極東日没の仕業である事を確信する。ここ数日の周辺の島々の混乱は全て、極東日没の存在を由来としていたのだ。 霧島がこの島から離れた事で貴広の存在が極東日没に気取られたのだろうと推測の一つを延べる隷は、その意味の解らない貴広の疑問には答えない。 この島には動かす事の出来ないリニアが眠っている。貴広は自分が囮として中央島に出向く事で、島を発見させない様にし、極東日没を遠ざけると言う作戦を提唱。隷もそれに賛同し、二人は壊滅した中央島へと向かう事にした。 どちらかの命に危険が迫っても、どちらかが捕まっても、決して助けには入らない。ただひたすらに逃げる。そうして極東日没を撒く事が目的だ。 2563号島を発見さえされなければ勝利。隷と貴広は互いにその条件に同意するのだった。 二人の乗った航空機は中央島の上空で極東日没に捕捉され、二人はバラバラに島に降り立つ事になった。 人っ子一人いない廃墟と化した中央島で、脱出用の航空機を探そうとする貴広の前に、十年前と同じ朱の色彩を引き連れた極東日没が現れる。確かに奴は貴広を──水気のナーサリークライムを探していた。今度こそ確実に滅ぼす為に。 朱キ日。その再来であった。 その圧倒的なプレッシャーに圧されながらも「俺にはお前みたいな土木業の肉体系の友達はいない」などと軽口や冗談を投げる貴広であったが、相変わらず極東日没とは会話が全く成立しない。 (極東日没は、貴広の力の一部が金気のナーサリークライムに因って切り離されている事(ALICE Firstの存在)などの重要な事を呟いていたりするのだけど…) 会敵。フェイントを交えてオートマチックの大型拳銃まで撃ちまくる貴広であったが、土気のナーサリークライムは無傷。 貴広は航空機から脱出する時に持ち出していた、武器ケースに換装したレーザー兵器と言う虎の子まで使うが、レーザーは直撃前にその軌道をねじ曲げられた。空間を曲げる荒技は正しく人間技ではない。 だが、防いだと言う事は効果があると言う事かも知れない。貴広は逃げる振りをして、トラップを仕込んで極東日没の心臓をレーザーで貫く事に成功するが、それでも奴は少し驚きを見せた程度で、平然としていた。 ナーサリークライムを害する事は人の力では不可能。そう知らしめるには充分に過ぎる、圧倒的な強さであった。 万事休す。そこに漆黒を扱う隷が現れる。貴広の驚愕を余所に、極東日没はそれを漆黒ではない紛い物と怒りを露わにする。「霧島差異は五行の理を我が物にすべく、紛い物を創り出したか」とも。 本物のナーサリークライム、しかも相剋である土気に対して、水気の紛い物しか持たない隷に勝ち目は無い。だが、隷は抗いながら、リニアの、千歳の事を思い出して欲しいと願い、貴広を海まで吹き飛ばして逃がした。 貴広が極東日没を惹き付けている間に逃げていれば、隷は助かった筈だと言うのに何故。そう取り決めた筈なのに何故。 貴広は隷を助けるべく戻ろうとするが、そこに何らかの力が割って入った。その余波の中で貴広は意識を失った。 はっきりしない意識の中、ぼろぼろの貴広は、同じくぼろぼろの霧島に引き摺られる様に担がれて歩いていた。 霧島はまるで極東日没と交戦した様な事を呟くのだが、冗談だと付け足して笑うのだった。 だが状況は明らかだった。ナーサリークライムである極東日没を、霧島は一時でもなんとか退け、貴広を救出したのだ。 次に貴広が目覚めたのは自室のベッドの中だった。傷も全て治っている。夢うつつに霧島の声を聞いていた記憶を頼りにして彼女を捜し回る貴広。 所長室で霧島を漸く発見するが、然し彼女は自分の知る霧島香織と何かが違う。思わず銃を向ける貴広。 すると『霧島』は隷の声音でおやじさんに内線電話をかけ、リニアを連れて地下に退避しろと伝える。 目の前で起きている事が全く理解出来ない。霧島が霧島ではなく、隷の声でも喋った。そして隷のつかぬ様な嘘をついておやじさんを欺いた。 『霧島』は貴広に来客の訪れを告げ、無用な死者を出す前に行った方が良いと言って歩き出す。言われる侭に貴広もヘリポートへと向かった。 ヘリポートに入って来ていたのはALICE IN CHAINSの空中空母、通称アリスの箱船であった。そこから降りて来たのは貴広の上司に当たる、商品育成課課長の大柴と言う男と、彼の伴う三人のALICEたちだった。 3rd、9th、12thのALICEの三者は何れも不気味な仮面に赤いマントを羽織っており、仮装大会か何かの様な扮装をしていた。 形ばかりの上司として、貴広の仕事ぶりや島のメイドの出来を根拠なく詰った挙げ句、食堂で給仕に当たったメイドを射殺する大柴。 その所業に憤った貴広は叛意ありとみなされ、ALICE 12thに因って義肢の上で右足を切断される。大柴は反逆罪として貴広の拘束を命じ、抵抗出来ない貴広を嬲る。 貴広の苦悶を受けて、その場にかずさが飛び込んで来る。12thは自らを「朝霧一紗」と名乗り、かずさの事を自分を騙る偽物と呼び、二人の戦闘が始まる。 戦いは、然し他者を傷つけたり殺したくはしたくないかずさの甘さに因って終わる。そこに、冬葉を人質にしたALICE 9thに因ってかずさも抵抗を封じられ、甘いかずさに憤った朝霧はその右手首を容赦なく切断した。 それ以上の暴虐を、今まで黙って見ていた『霧島』が止める。12thの薙刀を掴んで揺るぎもしないその力に、ALICEたちはただならないものを感じて矛先を収める。その様子を理解出来ずにいたのは大柴だけであった。 貴広、かずさ、冬葉らは揃って地下牢に閉じ込められた。 冬葉のヒーリング能力に因って貴広の足も、かずさの手首も無事に元に戻って事なきを得た。 二人は、「本物」を名乗るALICE 12thこと朝霧一紗の存在を思い出し、今は眠っているかずさの正体を一瞬は訝しむが、かずさが悪い奴と言う事は無いだろうと納得し合い、その素性を問う事はやめておく事にした。 大柴は中央島に派遣していた飯島からの情報を元に、首尾良く神崎貴広を処刑するべくこの僻地まで来た筈だった。然しそこに届けられたのは「社長命令」。それも、神崎貴広の処刑は認められず、厳重注意の処罰にとどめろと言う内容だった。 一斉粛正の計画は、取締役会がLABを越える権限を伸張する為の社内政治活動の為、幾年もかけて慎重に準備されたプロジェクトであった。 だがそれを「社長命令」の一言が全てふいにしたのだ。 カンパニーの社長と言うのは名ばかりの存在であり、実質社長代行として活動しているのはN Girlたち。ここに来て何故N Girlたちは傍観を止めて介入して来たのか。 取締役会は社長を、N Girlを敵にする気はないと負けを認めて引き下がった。大柴もまた保身の為に引き下がる事を選択するが、ALICEの三人は違った。 ここで貴広の処刑を敢行すれば、取締役会は動かざるを得なくなる。末端の粛正部隊の独断であると言い訳をすれば、取締役会の漸く手に入れた武力であるALICE IN CHAINSの解体は免れない。やられる前にやるしかないと、N Girlや「社長」を敵に回した泥沼の戦争が始まるだろう。 N Girlに敵対心を燃やすALICE 3rdは特にそのプランに乗り気だった。戦闘狂どもに付き合う訳にはいかない大柴は慌てて制止しようとするが、その瞬間に体がバラバラに砕けた。 大柴を葬ったのは、中央島で死んだと思われていた飯島の操るワイヤーだった。彼は極東日没との交戦経験から、抗っても無駄だととっとと逃げ出して来ていたのだ。 ALICEたちの直接の上司である飯島は3rdの狂ったプランをあっさり認め、この島ごと目障りな者たちを葬る事を決定した。 その最中でALICE 9thを12th朝霧が殺す。ただの言い合いの延長線の様なものだったが、9thは取締役会の寄越した監視役だったらしく丁度良かった様だ。 3rdが霧島を、12thはかずさを、飯島は貴広を。それぞれ殺す事を決めて、三者は動き出した。 その頃、影を渡って来た鈴希の手助けに因って貴広たちは地下牢から脱出していた。 途中で貴広は、所長として自分だけ逃げる訳にはいかないと戻ろうとするのだが、そこに飯島と朝霧が追いついて来る。 「前にも言っただろう?俺はあれを見るまでは死ねないさ」立ち塞がった飯島はそう言った。 飯島の単分子ワイヤーと朝霧の薙刀。貴広は拳銃で、かずさは包丁で。そして鈴希は影を使って守りに入り、戦いが始まった。 一方3rdは『霧島』と対峙していた。3rdの見た目はパペ○ペの様な人形を手にはめた幼い少女であったが、残虐性が強く、己の力に絶対の自信を持っていた。 大気中の水分を凍結、凝固させる3rdの攻撃に傷つく『霧島』は、「お姉様の姿を模倣していたら戦い難い」と、N Girl4、N4としての正体を顕して戦いを始める。 N4の扱う空間切断と言う技の前に3rdは圧されるが、己への精神的な自信が漆黒を介してその存在を支えており、一遍に滅ぼしでもしないと幾ら壊しても再生して仕舞う。 そこにもう一人のN GilrであるN12が加勢するが、N12の用いる重火器もまた3rdには通用しない。埒が開かないと、N4とN12は一旦退く。 森の中に退いたN4。彼女らは現在力の配分が少なく、思う様に戦えない状態にあったのだ。そのもどかしさに歯噛みする。 N Girlの二人は霧島が何処にいるのかを気にしていた。どうやら、霧島香織は貴広への想いから、自らを生み出した『本体』である霧島差異を裏切ったのだと言う。 差異の分身である霧島には元々心など無かった筈だと言うのに、十年と言う歳月が彼女に心を生み、神崎貴広に肩入れをする様になって仕舞ったのだ。 神崎貴広がこの島に居る以上、幾ら極東日没と戦闘し疲弊していたとしても、きっと霧島香織は彼を守るべく現れるだろう。 森から廃墟にかけて、朝霧VSかずさ、飯島VS貴広の戦いは続いていた。 朝霧を傷つけても貴広を、この島を守る事を決意したかずさは、猫の化生である本性を顕して朝霧を圧倒する。 朝霧は自らを犠牲にしかずさを道連れにすると言う覚悟と執念を見せ、飯島に自分ごとかずさを葬る様に攻撃を願う。だが飯島のワイヤーは途中で全て力無く崩れ落ちた。 見ると、朝霧の身体からは血ではなく、その裡に埋め込まれていた漆黒がこぼれ落ちていた。漆黒は自らを縛り付けていた朝霧の生命力と言う軛を失い、本来の主である貴広の元へと戻って行く。 裡なる闇の声に耳を傾けた貴広は、漆黒との二度目の邂逅に、水気のナーサリークライムとしての自身を思い出す。 だが貴広は自らの取り戻した力がまだ僅かなものでしかないと理解をしていた。そこに、漆黒に惹かれる様に現れたのはALICE 3rd。己と同じ漆黒を操るその様を目の当たりにした貴広は、ALICE IN CHAINSが漆黒の因子を用いて人間を兵器としていたその所行に憤る。 無理矢理に漆黒の因子を与えられた人間は正しくヒトではない兵器。一見子供にしか見えない3rdの、残虐性を露わにした様子からもその非人道的な兵器としての設計は明らかだった。 飯島は漆黒の保有量ならばまだ3rdが絶対優位であるとけしかけ、3rdはN4の身体を一度は痛めつけた、大気中の水分を凝固する技を放つ。 それを真っ向から喰らう貴広。皮膚が剥がれて血の流れる凄惨な有り様に悲鳴を上げる冬葉。 然し貴広は──水気のナーサリークライムはそれに全く動じず、技を真似て返してみせた挙げ句、無限を司るナーサリークライムの使う様な技ではないと一蹴する。 3rdは自分の漆黒までも貴広が既に支配下に置いている事を悟る。そして飯島はそんな貴広の、未だ不完全な力に驚嘆し喜悦の声を上げる。これこそが己の求めていたものであると。 そこに仲裁する様にN4とN12が現れ、続けて登場したのは、空間切断を使って冬葉、かずさ、鈴希を逃がし、N0と刻印されたマントを羽織ったもう一人のN Girlの姿。 貴広は五十鈴の寄越した警告を憶えていた。然し、N0のマントの下から現れた霧島の姿に思わず安堵の声を上げる。 霧島はそんな甘い貴広をやんわりと諭し、もう元には戻れないのだと淡々と告げる。そして自らを、霧島差異の代理──金気のナーサリークライムの力を自由に使える存在、N Girl0ことN0であると名乗るのだった。 霧島は3rdをその力で圧倒する。勝ち目が無いと見た飯島は、3rdの「人間」としてのリミッターを解除。漆黒そのものと化して辺りを包み込むそれに、まずN12が瞬時に粉砕された。 そして飯島もまた漆黒に飲まれて崩壊して行く。然し彼は哄笑する。貴広をこの世界に引き戻せただけでも己の願いは叶ったのだと彼は苦悶の中で嗤い続け、そして消えた。 神崎貴広は、血と死の匂いしかない地獄へと引き戻された。そこに至った飯島の狂気とも言える執念に怒りの声を上げる貴広。 3rdは既に実体を失っていた。在るのは人格ではなくただの破壊衝動と残虐性を有した本能。この侭では漆黒が島を侵食し、地下にいるリニアたちにも被害が及ぶと言う霧島。貴広は霧島の金気の特性を聞き出し、二人は協力して3rdの妄執だけを残した漆黒の化け物へと挑む。 「俺とお前の力を合わせれば出来るだろう?今までだってそうしてきたんだ、お前と俺ならば出来ない事などない!」 今まで二人して書類と戦った事ぐらいしかないと言うのに。全く根拠のない言葉に、然し霧島は乗った。 実体のない3rdの座標と思しき場所の漆黒を貴広が水に戻し、そこに霧島が土中の金属を凝固させて固める。後は地の底へと沈めると言う作戦で、二人は何とか勝利する。 漆黒も周囲に水気が無ければ何も出来ない。後は3rdの意志が消滅し活動停止するまで待つだけだった。そうすれば漆黒は元通りに貴広の支配下へと戻るだろう。 これにて一件落着と思う貴広だったが、その目の前で霧島は白い光に包まれて消えて行く。 霧島は己を、リニアが千歳として転生し目覚める時までの存在であると言い、千歳の事を思い出して幸せになって欲しいと貴広に願いながら、光の中で笑顔を浮かべた侭消滅した。 貴広が吼える。激しいその瞋恚の感情に、漆黒が、世界の水気が応えて集う。 嘗て世界を滅ぼした水気の暴走。Jesus and Mary Chainの再来かと畏れるN4の前に、霧島香織の消滅と同時に復活した、霧島差異が顕現する。 差異は、千歳と結ばせる筈だった貴広の感情が、自分の創り出した分身である香織に向いた『予定外』に嘆息しつつ、激情の侭に向かって来る貴広に、影殺しの銘を持つ日本刀を構えて対峙する。 差異は未だ貴広の力の大半をALICE Firstとして分かたって封印している。それ故にか、貴広の抵抗は児戯に等しくあしらわれ、片腕と片足とを容易く切り落とされて仕舞う。 貴広は霧島差異の言葉から、彼が今までの己の人生を『作っていた』事を知る。記憶を消されて、力を封印され、カンパニーの養成所へ入れられ、PIXIESと言う組織で育てられた。そうして力を失い島流しにされて、人間らしい感情を得た。だがそれら全ては差異のお膳立てに因るものであった。 差異の誤算はそこから生じたたった二つ。霧島香織に添う心を得て仕舞った事。そして、叛逆する意志を得て仕舞った事だけ。 だが、二つの誤算など貴広の記憶を消去し、またやり直せば良いだけの事。今度は千歳と添わせるだけだから容易い。 首を落とされた貴広は活動停止し、漆黒は霧散した。 一時死した身が再生する前に本社に戻して記憶を消去しなければ、と差異が動きだそうとしたその時、首の無い貴広の身体が静かに立ち上がった。 辺りは再び漆黒の世界へと戻る。否、もっと強大な力がここに呼び寄せられて集っている。 ナーサリークライムの力を最も効率的に封印出来る地を選び、霧島差異は嘗てそこに神崎貴広の力の大半を封印した。それは一度は自らの半身を求めて暴走したが、再びの封印以降は大人しくしていた筈のものだった。 己の計算外の事態に、半ば感嘆めいた呟きを漏らす差異。そこに、遙か空から飛来する十字架。それは、ここから何千kmも離れた本社、ALICE IN CHAINS本部。その地下に封印されていた筈の、ALICE Firstを戒める十字架であった。 嘗ての彼女の暴走時には、N Girlは何人もの損壊と言う被害を出した。金気の者と因縁深いそれは、神崎貴広から切り分けた力を具現化させた、霧島差異にとっての霧島香織と同様に、貴広の分身と言える存在。意志を持たぬ彼女は今、貴広と言う本体に呼ばれて此処に取り戻されたのだった。 ALICE Firstは貴広の感情を受け取り同調した侭に、差異に向けて激しい殺意を向ける。 本体ではない筈の彼女の力は、己を封印していた筈の金気の十字架を逆に取り込んで力とする程に肥大化していた。金生水。それもまた世界の理。 集った漆黒の渦の中、ALICE Firstの姿は神崎貴広へと変わる。水気のナーサリークライムの分かたれた力は、その潮流として望んで本体へと還ったのだ。己が敵とみなした、霧島差異を断つ為に。 霧島差異はナーサリークライムと言う存在の思わぬ不可解さに笑うと、今回は諦めようと言い残し、空間切断を用いてN4と共にあっさりと退いた。 後に残されたのは貴広ただ一人。 怒りとも嘆きともつかぬ絶叫の中、水気のナーサリークライムは、金気のナーサリークライムを討つ事をその身に課したのだった。 それから一年後。 2563号島は平穏を取り戻していたが、冬葉、かずさ、鈴希たちはあれから消えて仕舞った人たちの事を思わぬ日は無かった。 貴広はあの後ほぼすぐに姿を消し、霧島の行方も解らない。 記憶を取り戻したリニアは、貴広と霧島が消えたのは自分の所為だと悲しみ、暫くの間は島に居たが、やがておやじさんと共に姿を消して仕舞っていた。 三人はきっといつか霧島を助けて貴広が戻ってくると言う日をただ信じて待っていた。 LABの遙か地下にて、霧島差異は香織の夢を見ていた。 己の創った己の分身の記憶の見せたそれは果たして夢か、心か。 「一度持って仕舞った心は無くす事が出来ない、か…。消えても、まだ我が内でその夢を見るのか……香織」 その呟きは憐れみとも情けともつかない。 差異の傍らには、嘗てリニアと、或いは庵原千歳と呼ばれた少女が眠るカプセルがある。 人の創り出した、人ではない生命の器。遙か昔に貴広と縁のあったそれが、ナーサリークライムを生むものになりはすまいかと言うのが、差異の描いていた計画であり、目的でもあった。 即ち、水生木の理。生殖の叶わないナーサリークライムの身であっても、人であって人ではない器を介する事ならば叶うやも知れない。 水気のナーサリークライムである貴広が、理の通りに木気のナーサリークライムを生む鍵になるかも知れない。 仮に子を為す事が叶ったとすれば、それがナーサリークライムとして生まれる可能性もあるかも知れない。 そうして生じたナーサリークライムは木気の相を持つかも知れない。 嘗て失われた、木気のナーサリークライムである、榊千尋として再び生まれるかも知れない。 全ては空論の続く、戯れ。永き刻の中、霧島差異の見続ける夢。 神崎貴広が、庵原千歳と言う過去の記憶を捨てて、幻に過ぎない霧島香織の存在を追いかけ続けるのと同じ。ただの夢。 ゆえに差異は五行の輪廻を、世界の理を破らんとする。 「ナーサリークライムと言えども、人の形を持って仕舞った以上、人が持つ夢の中からは逃れられぬか…。それもまた良し…」 ナーサリークライムと呼ばれ永劫の生や無限の力を得た所で、人と言う器の中で生きているならば、愚かな夢を見るもまた、必定。人は愚かに夢を抱く生物である故。 神崎貴広はPIXIESの五人を率い、カンパニーと世界とを震え上がらせ続けていた。 彼らは漆黒と呼ばれる力を操り、朱に染まった世界を駆ける。 ナーサリークライムの戦いとは永遠の力の闘争。 即ちそれは、終わる事のない、混沌を繰り返すだけの存在。 ========================= ・真霧島篇まとめと補足 諄い様ですが、設定ほぼ全補完した霧島ルート。分岐や余計なエロ要素も無く、シナリオだけを純粋に楽しめると言うのも評価点。 メインヒロインであるリニアが2563号島に連れて来られた所から始まるモエかんストーリーなだけに、そのリニアをきちんと最後まで、意味のある存在として絡めているのも良。 そのリニアに関わる隷も、他ルートの様に途中から忘れられる訳ではなく、邪魔にならない程度に登場し、リニアルートの様なヤンデレ力も発揮しない、共闘と言う個人的には良い塩梅の登場だったと思う次第。 このルートでのメインとなる霧島も、正体や設定から無理なく貴広との関係が描かれているので、申し訳ないけれど他ヒロインのルートの様に、最近恋に落ちたり、憶えていない様な過去の縁などではなく、自然にスッと入れる。 とにかく純粋にモエかん世界や設定を食い尽くすシナリオと言える。 PIXIESの設定や方向性も、リニアルートでの噛ませ的ピンポイント登場だけではなくがっつりとストーリーに絡んで来ており、貴広の過去の設定も全て無駄なく使われている。 そんなPIXIESを易々とは使えない縛りが表現された事で、貴広が「ただの人間」として無力である事、戦闘ではない事は都合良く便利な力でぱっと解決とはいかないもどかしさもあって良い。 社内揉めの細かい描写などもかなり濃く練り込まれて描かれていて、シナリオの深み、世界描写や設定の有効活用は元々の霧島篇とは比べものにならないぐらいに洗練された。 どのルートでも「人間」の神崎貴広の敵役として配される飯島も、貴広やPIXIESに執着する根っこの深さがしっかりと描かれている為、噛ませ脱却で敵役感が増しており、戦闘用の立ち絵が追加されてるサプライズも。 設定と言えば、ALICE Firstの、本篇中では全く表現されない設定も当然フォロー。貴広の分身であり、それを取り戻す事で貴広が水気のナーサリークライムとして完全覚醒する段が描かれたのは、この真霧島ルートのみ。 個人的にALICE Firstが大好きなので本当にこの展開は素晴らしいと言うかなんというか。当時、まさかALICE Firstが出てくれるとは全く思っていなかったので、主人公交代して終わりと言うパターンか?!と、テンション爆発させながら読んだの憶えてますよ…。 その直後にイベントCGでALICE Firstが貴広に変わった時の、拳を天に突き上げながらガッツポしたくなった感動もよっく憶えてます…。 真の敵である霧島差異も強キャラ感を残して退きつつ、非情なキャラの様でも人間くさい様な感慨を持ち合わせていたりと、ただの殴り合いで済むラスボス敵では終わらせない様な雰囲気を漂わせている。 とは言え差異が非道なのも間違いなく、でも全くそれを意にも介していないと言うのも、生まれついての(?)ナーサリークライムと言う存在の異質さが出ているかと。 極東日没もがっつり貴広と殴り合いをしてくれるしで、こちらはこちらで、相剋のナーサリークライムを相手にした絶望感が凄い。 ……まぁただ、完全に「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドであって、「人間」神崎貴広の幸せと言う意味では、このルートは最も救われないとも言える。 一応、霧島差異の内側に香織は残っていると言う表現はあるが、それを取り戻せるかも定かではないと言う状況は、差異が榊千尋を蘇らせようと足掻き続けている事にも通じており、敵役との対比と言うより、敵と同じものを求めて仕舞うのだなと言う見事な重ね方。 …あと、リニア(千歳)が差異の元に居る=おやじさんとリニアは2563号島から連れ去られたと思われるので、おやじさんの安否がかなり心配になると言う、かなり喉奥の小骨感も残してくれており、ほんと何媒体でもいいから続きをですね…。 ・真霧島篇の裏の裏事情の推察とか。 差異の呆れた長期計画での、木気のナーサリークライムである榊千尋の復活プランと言うのが全体的に設定の下地となっている訳ですが…、 要するに、木気を生み出すのに水気の相生は欠かせないと言う発想ですよね。 (説明調子)その為に差異は昔から水気のナーサリークライムを探し続けており、覚醒前の貴広を発見し、金気の相生に因って無理矢理に水気を覚醒させています。 それがJesus and Mary Chainと言う大災害を引き起こし、世界を一度軽く崩壊させかけました。 その際に貴広をLABで回収及び研究して、漆黒の因子を確保。レプリカを作るN計画開始。 ついでに貴広を御し易くする為に、その力を切り分けてALICE Firstが誕生。差異的には香織と言う分身を作るのと同じ感覚だったのだと思われます。当然ながら貴広側に自覚も意識も無し。 仮に、貴広の遺伝子を分けた子供やクローンが水気のナーサリークライム或いは木気のナーサリークライムとなるのだとしたら、この段階で「計画通り」の悪い顔が出来た筈です。が、実際それは叶っていない。 モエかす「鈴希とかずさ」シナリオでちょろっと語られていましたが、水気のナーサリークライムである貴広は陰の気に属する存在なので、陰陽が混じって生命が誕生すると言う理の外に居るらしいです。 つまりは、LABに出来る通常の手段では貴広の遺伝子を幾ら用いても、子供は生まれないし、クローンはそもそも作る事が出来ないと考えるのが妥当。貴広の子供が普通に産まれるのだとすれば、誰と添わせても構わない筈だし、最悪人工授精しても構わない筈なので。 その為に差異はリニア=千歳と言う、陰陽に属さず、生殖機能を備えたアンドロイドであれば、貴広の子=水気からの相生を正式に得た、輪廻の輪から外れた新たな存在を生み出せると考え、前述通りの超長期計画に乗り出した訳ですね。 しかもこれだけの長期計画なのに、不確定要素が多すぎると言う凄まじさを思うと、ナーサリークライムがどれだけの永遠と迂遠とを平然と生きている存在であるかと言う事が何となく知れますね…。 貴広の人生を完全に操っていたと言う点から見ても、自分の目的を果たす為ならばそんなのどうでもいいレベルに考えているのは言うまでもなく、貴広の過ごして来た数十年間も容易く消して問題ないと思っているのも(自分で言ってるし)間違いない。 そんな差異が、不確定要素だらけ且つ、何百年をかけてでも、貴広を幾ら利用しても復活と言う悲願を叶えたいと思っている、榊千尋さんとの関係や、どうして彼女を消滅させて仕舞ったのかと言う経緯がほんと気になるどころの騒ぎじゃないですよ…。 ========================= ========================= |