天国の日々 / 00



 夢を、見た。
 
 夢を見た、のだろうと思う。
 全身を容赦なく打つ衝撃と、重たい浮遊感。厭に緩慢に働く思考の中、視界は真っ赤に染まっている。
 今までだって大なり小なり怪我を負った。紙一重で命の危険から逃れた事もある。
 それらの数々の記憶や体験から見ても、きっとこれは相当な修羅場になるだろうと直感する。
 そんな中で、夢を、見た。
 
 
 酷   に歪ん 顔   が  、   には  返    戦 お前 、 配   で良いの       。
  め   喉が  。  返    し 。  快 が、  しく醜 。
     、    つ   表  。  った  手   めるお前の、自   た   。

 ──………………"  い"。

 だ ら    と、笑  け 。
  前 望  る     ら、  は何も  ない。
 
 
 夢を見た。
 夢であったらよかったものを、見た。
 
 
 だから。
 ──だから。「すまない」。
 嘘ではないと。今更幾ら叫んだ所で、もうきっとお前には届きはしないのだろうけれど。
 
 「ごめん。好きなんだ。本当なんだ。ごめんな」
 
 あの時、声にならない声をそう、投げて寄越したお前へと、俺はきっと謝らなければいけなかったんだ。
 
 「すまねぇ、な」
 
 走馬燈の様な瞬間の終わりを感じて、瞼を強く瞑った。
 目蓋の裏で砕け散った、夢のようなものを、どこか遠くへと追いやって。
 あとはただ、その瞬間を、待つだけだった。





虫食い反転はないですよー。

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