霞雨 / 2



 あれからどれぐらい時間が経過したのだろうか。
 ぼんやりと霞みがかる思考でそんな詮も無い事を考える。
 好き放題に酷使された下肢は酷く鈍くそして重たく、幸いなのは苦痛も快楽も最早痺れた様にしか感じなくなっている事だろうか。
 ぐ、と、背後から覆い被さっていた男が息を詰め、土方の尻を掴んでいた手に力が込もった。ぶるりと胴震いする気配と共に、腰を揺する動きが徐々に収まる。
 「っは……ァ…」
 乾いた喉の奥から掠れた呻きが思わず漏れる。快楽故にではなく、不快感を堪える為の吐息だったのだが、好き放題に腰を振りたてていた幕臣らにとってそんな事はどうでも良いものに違いない。床に擦られ痛む頬の横で、土方は最早ほぼ纏うと言う体裁すら保てていない衣の袂を掴むと静かに拳を握り固めた。
 「ヒッ、ァ…、う…」
 排泄感に似た感覚と共に、後穴に突き立てられていた男の一物がずるりと抜け出る。最初に指で解す時もだが、この感触にだけは相手が誰であろうと、状況がどうあろうと、慣れる事が出来ない。慣れないとも思わないが。
 ぐぽ、と空気の抜ける様な音を伴って空いた孔は、土方の無意識の動きで、元に閉じようとする収縮を懸命に繰り返す。疲労にすっかり浸された身体は自由にならず、膝で立っている事も侭ならなくなり、とさりと身体が横向きに倒れた。ぜいぜいと煩い己の息遣いの向こうで、そんな土方の様を嘲笑う声たちが聞こえる。
 「っ、、あ、ぁ、ぁ、…」
 堪える間もなく、横倒しになった臀部からどろりとしたものが零れ拡がるのが解る。見る迄もなく知るその正体は、男らが好きに吐き散らした精液だ。孔がまだ収縮しきっていないから、溢れていくそれはまるで意識しない排泄の様で気持ちが悪い。
 裡よりこぼれるものなのだから、身じろぎしたところでどうにもならないのだと理性では解っていると言うのに、乱された着物の上で藻掻かずにいられない。吐き捨てたい程の不快感と罵声との代わりの様に、目を硬く瞑って小刻みに震えながらそれを暫し堪える。
 身構えていた訳ではないが、取り敢えず概ねの連中が精を吐き出し満足し終えたらしく、それ以上の暴虐の気配が続かない事に密かに安堵し、土方は握り過ぎて強張ったてのひらを少しづつ開いていった。また爪に因る傷痕が歪な悲鳴を形作っているのは解ったが、今回は極力着物を握り締める様にしていた為にか、傷はそう深くはなさそうだ。
 少なくとも、今『痛み』として感じるものはそう多くはない。
 上げられた『観戦席』の床の上では、佐久間と共に幕臣ら四名が『狗』の痴態やその味についての談義を交わしている。真っ当に耳にしていたらその醜悪さに堪えきれなかったかも知れないが、幸いにも今の土方の感覚は非道く遠い。
 各々着物を寛げていた幕臣らが席へと戻り、膳に残されていた酒を煽っては、温まったそれに文句をつけ、新しいものを持って来る様にと部屋に控えていた護衛らしき男らに指示を出している。
 真選組や見廻組とは異なる、個人的に雇っている浪人か何かだろうか。佩刀こそしていないが、侍らしき風体の二人の男は肩を竦め合いながら廊下に通じる戸を開けて外へ出て行く。
 そこまでをぼんやりと目で追っていると、不意に近付いて来た佐久間が鎖を掴み上げた。それは未だ首に繋がれている、倒れた身体以上に無様な『狗』の証だ。強く引かれるかと思わず土方は身構えるが、まるでその怯えを悟っていたかの様に、緩やかに招く動きで促される。
 正直もう一歩も動きたくないのが本音だが、『飼い主』にそれを許す気配はない。肩から落ちかけていた単衣を辛うじて羽織って、前を合わせて体裁らしきものを一応取り繕った土方は、渋々と重い身体を引き摺ってそれに応えた。立ち上がると無様に転びそうだった為、膝をついてなんとか鎖の引かれる方へと進み出る。鎖は充分過ぎる程に長いものに変えられており、柱へと括り付けられていたが、観戦席の中を移動するには充分過ぎる余裕があった。
 狗ならば四つ足で這えと、揶揄する様な声たちが嗤うのに、仕方なく手を付く。だが、四つ足で這いずり回ると言う無様な姿になるより先に、観戦席の硝子窓の前へと辿り着く事が叶う。
 「見て御覧。丁度今日最大の目玉となる演目が始まる所だ」
 幸いにか、その言葉に幕臣らも闘技場を見下ろした為、犬の真似事が出来なかった事に対する折檻は無さそうだ。そんな事を安堵と感じる己に嫌気を感じつつも、土方も倣って窓から眼下を見下ろした。
 体裁はどうあれ、演じられるのは殺し合いに違いないと言うのに、それを演目などとよく宣えたものだと。更なる嫌悪感と不快感とに眉を寄せながらも土方が落とした視線の先には、先頃目にしたものと変わりのない、四角く掘られた闘技場の窪地がある。
 擂り鉢状の客席の埋まりは上々の様で、天人や、道楽に飽かした富裕層らしき人間、氏も素性も知れない様な浪士風の者の姿もあった。どうやら嘗ての煉獄関と同じ様に、この存在を知る者へと開く門戸はそう狭く限定されたものではない様だ。恐らく何処かに一般観客用の出入り口もあるのだろう。
 大阪と言う、江戸幕府やその配下の手の届きにくい環境なのも手伝ってか、熱狂的な観客達の空気は以前よりも濃密である様にさえ感じられる。
 その中心に、歓声を受けて立つ闘士らが佇んでいるのが見えた。闘技場の四隅に、一人ずつ。合計四人が立っている。
 「大物の宇宙生物や戦闘特化種の天人が複数の人間らを相手取るが普通の演目よ。だが、今回は少々趣向を変えてみたのだよ。手練れの闘士四名が、獣どもを相手取りながら互いに腕を競い争い、最期に立っている者が勝者となる」
 佐久間の説明とほぼ同時に、闘技場の壁の一箇所が開き、そこから、宇宙生物の類だろうか、大きな猿に少し似た、闘士とは明かに異なる『獣』らが放たれた。
 四隅で身構えていた闘士らがそれぞれ散り、本能の侭に突っ込んで来る獣らを迎え討つ。
 ワアァァ、と一際大きな歓声。人間の浪士らしき闘士の一人が、獣の牙を捌いていたその背後から、残る三名の闘士のうち一人、天人らしき者の手にした矛の様な武器に貫かれたのだ。
 たちまちに闘技場は混戦の様相を呈した。獣ばかりか互いにも気を許せぬのだと、彼らは新たなルールに漸く気付いた様だった。殺られる前に殺れ。とは言え、一人の力では多量に放たれた獣を捌く事など出来やしない。
 自らの生命危機と疑心暗鬼。ぎらぎらとした闘争本能と生存本能との中で、闘士らは細かく手傷を負いながらも互いの動きを伺い合っている。最期まで立っていた者が勝者、と言う事は、どうやって己が最期まで生き残るか、と言う事だ。獣どもを倒した所で、残っていた闘士に殺される様では仕方がない。かと言って互いに全く助け合わなければ獣どもを全て払うのは難しい。
 どれだけ相手に傷を負わせつつ、だが殺されぬ様にしながら、最期に王手を指すか。
 当然結果は賭博の対象になっているからか、観客達は血が流されるその度にどっと沸き上がる。
 用意された闘士らの力は、偶然ではないだろう、拮抗する力量の者らが選び出されている様だ。故に、仕組まれた中での紙一重の命の遣り取りは酷く本能的で、醜悪だった。
 (趣味の、悪ィ…)
 呻き見下ろす土方の視線の先で、先程不意打ちをした天人の闘士が倒れた。他の闘士らの動きに気を取られる余り、獣の爪を避けきれなかったのだ。
 更に上がる歓声。いつの間にか夢中になって眼下を見下ろしている幕臣らも、愉悦に喉を鳴らしながら『演目』を愉しんでいる。
 「久坊殿の闘士がやられましたな」
 「高い金で買い上げたと言うのに役立たずではないか」
 「未だ御法川殿の賭けていらっしゃる者は生き延びておるようで。おお、佐久間殿の手の者でしたか」
 口々に笑い合う男らは、佐久間と同じく日頃は幕僚の一人として、取り澄ました顔で将軍家に阿り天導衆を崇め、己の足下を権力と言う敷石で固める事に余念の無い様な連中だ。
 彼らの欲や力の集大成のひとつが、この煉獄関と言う『遊び場』なのだ。江戸を遠く離れたこの地こそ、彼らが自らの権能を最大限に振るえる、彼ら自身の『城』。
 『狗』の一匹如き、彼らにとってはただの余興。それがどれだけ無様な醜態を強いられる苦痛に、憎悪の牙を磨ぎ立てているかと言う事など、全く興味のないものに違いない。
 どれだけ、心を斬りつけ苦しもうが。
 どれだけ、血を流して戦う者が居ようが。
 どれだけ、欲と金とが垂れ流されようが。
 神や法でなくとも人心を動かす事は叶う、と佐久間は口にした。それを理解して猶抗う事なく使われる者こそ愚鈍であるのだとも。
 (……それが、道を違えた思い上がりじゃなくて、何と言う)
 人を、心を、踏みにじる棋譜で築き上げた城の中の、傲慢な権力達。
 澱んで溢れ出したそれが、今の世界を保つ者らの生んだ歪み。
 どうすればその世界を正せるか、などと思い上がる資格は、この幕臣らに飼われる幕府の狗共には無いのかも知れない。飼い主を食い殺せば、後に残るのは罪科の皿に並べ供される大義名分でしかない。そしてそれをも食い尽くした後に残るのは、飢餓と破滅だ。
 だが、それでも。あの銀色の男が住む世界を、目を細めて幸福そうに見つめていた世界を、護ってみたいと思ったのだ。
 碌でもなくて、優しくもなくて、無惨な、美しい銀色の世界を。
 自分に出来るのは恐らく、ほんの僅か、手の届く範囲にあるものを掬い取ろうと足掻く事ぐらいしかない。自分の住む場所と、大切な人たちと。比べられない程に大切に思える様になった、銀時の居る世界と、未来とを。失われない様に、護ろうと。みすぼらしい番犬の様に。
 ぐ、と、半身を寄り掛からせた硝子窓の上で拳を固める。
 こんなものは傷ではないから。未だ戦える。まだ護れる。この歪んだ世界の醜い者達に、立ち向かえる。
 疵はいらない。瑕になるのならば、もう必要無い。その感情を疵だと知れた事実だけがあれば、もう要らない。
 (手前ェも大概、道を外した挙げ句思い上がった馬鹿でしか無ェのなんざ、解ってんだ)
 乾いた笑い顔を浮かべながら土方が目をそっと閉じた時、闘技場から一際大きく歓声が上がった。決着がついたのだろうか。それとも。
 「見たまえ」
 耳朶の直ぐ横で佐久間の声が囁き、土方は顎を無理矢理掴まれて顔を闘技場の方へと向かせられる。強制力に反射的に抗いかかるのを堪えて、大人しく視線を落とせば、そこには未だ生き残っている二人の闘士が、それぞれ残り少なくなった獣を相手取っていた。
 残った闘士は両方共人間の様だ。特別連携をしている風ではないが、少なからず互いの隙を警戒し合って共倒れになる様な愚行はやらかしそうもない。
 一人は、鬼の面や服装に憶えがある。朝倉の様だ。先程倒れた天人のものを拾ったのだろう、長い矛を攻防に器用に操っている。
 そしてもう一人を視界の端に捉えた所で、土方は愕然と目を見開いていた。
 その顔面を覆っていたのは、朝倉のものとはデザインの異なる黒い鬼の面。覗き見える後頭部は短めに切った黒い髪。黒い布に銀の縁取りを施してある長袖の陣羽織の様なものを纏ったその男の、最早記憶以上に身体に刻まれた、見覚えのありすぎる太刀筋。
 (……な、…………んで)
 戦慄く口を必死に堪えて引き結んだ。がくがくと震え出しかかる全身を意志の力だけで必死に留め、土方は鮮やかな剣技を振るい続ける、黒い夜叉めいたその闘士を茫然と見下ろす。
 「まるで、在りし日の君の写し身の様だと。そう思わんかね?」
 ふ、と。笑う佐久間の声には紛れもない苛立ちが乗っている。はっとなった土方が身を固くするが、ぐいと強い力で窓から引き剥がされ、その侭背後に引き倒された。
 「今更、どんな小賢しい手を指そうと言うのか知らぬが……、余興程度には愉しませて貰おうかねぇ?」
 「ヒァッ!」
 倒れた土方の身体へと、佐久間が背後から覆い被さる様な姿勢で手を伸ばして来た。未だ緩やかに開かれ、散々体内に吐き出された白濁で汚された孔へと乱暴に指を突き入れ、ぐちゃりと音を立てて掻き回される。
 思わず上がった甲高い悲鳴に、観覧席にそれぞれ着いている幕臣らがまた嗤い声を上げた。
 寄り掛かる形になっている佐久間の膝に爪を立てたくなるのを何とか抑え、土方は乱れた着物を掴んで暴虐に堪える。狙って差し込まれる指が探る性感に、熟れた身体が自然と反応するのを幾ら嫌悪すれども抗う術は無い。
 びくびくと痙攣する脚が宙を虚しく蹴っているのを、見かねた様にまた幕臣の一人が近付いて来て掴み取った。
 「っあ、や…、ッ、ぁあッ」
 脚の間に身体を滑り込ませると、舌なめずりせんばかりの表情で、男は未だくたりと萎えている土方の性器を戯れに弄り出す。散々に遊ばれ達せられた身体は、最早吐き出す事の出来ない快楽を持て余して、逃れようとのたうつ。
 その様をまた嗤う声達。醜悪なその顔も声もせめて意識から締め出したくて、土方は硬く硬く目を瞑った。
 程なく聞こえる、濡れた音と己の上げる嬌声に混じった、大きな歓声。
 今度こそ決着が付いたのだろうか。だとすれば、どちらが勝利したのか。生き残る権利を得たのはどちらの鬼なのか。
 そんな事を詮無く考えれば、先頃目に焼き付けられた光景がまざまざと脳内に蘇った。
 見慣れた太刀筋の男の、土方を模した様な黒い鬼の扮装。
 (なんで……、お前が…)
 問いに答える者が居ずとも、叶うならば叫んで、そして拒絶したい最悪の結果の一つが、確かにそこにはあった。
 佐久間はあの、あからさまに土方に似た扮装をした男のエントリーを土方の反撃の企みの一つではないかと取った様だが、それはない。それだけは無い、と断言出来る。そう口にした所でメリットなど何も無いだろうから、言う気はないが。
 だが、あの男が此処に居る、と言う事は──紛れもない。『そう言う事』なのだ。
 ただの趣味や偶然でなど、ある筈がない。
 あいつは間違いなく、全てを理解して此処に居る。
 この、『狗』の為体も。無様に過ぎる取引も、疾うに知られていた。それ自体は諦念の中で認めている。
 あの男の目的が『何』であるかなど、知れない。
 何を思って、土方の姿を模した様な扮装をして、目の前で刀を振っているのか。知れない。
 だが、間違いなくあの男は──あいつは、此処での『狗』の様を知り、それに関わる形で横槍を入れに来たのだ。何でも無い事の様に日頃見せる、性格の悪さを引っ提げて。
 それは、助けになるかも知れない、などと。土方に楽観的に喜べる要素など何ひとつないものだ。
 寧ろ逆に、最も『探られる』以上には知られたくはない相手に、余す事無い全てを確実に知られただろうと言う、絶望にも似た諦めがひとつ。
 「──ッう、ッ、ぅ、あ…、ぁ」
 喉を迸る事のない慟哭が、無様な泣き声の様に響く。
 地の底から響く様な熱狂的な歓声と、幕臣らの笑い声がぐるぐると脳を回って落ちて行き、まともな思考が上手く紡げない。子供の癇性の様に騒ぎ立て喚き散らしたくなる。
 「ほう、あの者ら、獣共を殲滅させましたぞ」
 「佐久間殿の闘士と……もう一人は飛び入りの者ですか。これはオッズも高くつきそうですな」
 「それにしてもあの黒鬼とか言う闘士、是非とも飼いたいものだ」
 何かの歯車が落ちて仕舞ったかの様に上手く回らなくなった土方の思考へと、幕臣らのそんな暢気な会話が飛び込んで来る。どうやら闘士二人が生き残る結果となったらしい。反射的に土方が意識をそちらへと向ければ、開いた視界に、佐久間の笑みが映り込んだ。
 「下男をここに」
 控えて居る護衛か誰かに命じたのだろう、老人のその、喜悦を隠しきれない表情を目の当たりにした土方の背筋が冷える。
 『狗』を犬たらしめようと、何度か見せた、餌を前に首輪を押さえつける様なそれは。
 「っあ!」
 嬲る意図を感じた土方が思わず身を起こそうとすれば、脚の間に陣取っていた男に引き戻される。
 再び仰向けに倒れ込んだ土方の頭上で、こちらを再び見下ろした佐久間が、酷く嗜虐的に口角を持ち上げるのが見えた。
 「いよいよ、最後の余興の時間だ。『化け物』の主賓を特別に招いてやろう」
 厭な予感しか無い言葉のはじまりに、土方の鼓動は跳ね上がった。
 やめてくれ。あいつは違う。違うんだ。何も関係無いんだ。
 あいつの強さは知っている。あいつがちょっとやそっとで死ぬ様なタマではない、寧ろ殺そうとしたって大人しく死んでくれる様な奴ではない事も知っている。信じている。
 だが、あの羅刹と言う化け物や、他に幾らでもこいつらが飼っているだろう宇宙生物や天人たちを前に、ひとりで立ち向かって生き残れる確実な保証など無い。
 これが──これが、護ることのできないものへの、無力感。己への失望。世界への悲嘆。
 護りたいのに。手の中にはぐしゃぐしゃに握り固められた高級な着物の感触があるばかり。
 刀がない。この『世界』を斬り捨てる為の、刀が、無い。
 土方の表情が悲痛なものに歪められるのを殊更愉しむ様に喉を鳴らすと、佐久間は黒髪の頭を、犬にする様に優しげな仕草でぐしゃぐしゃと撫でた。
 「あれは君が『狗』になってまで護ろうとした大事なものだろうに。本当は情けをかけてそっとしておいてやろうと思っていたのだがねぇ。こうなれば致し方あるまいよ」
 「──、!」
 く、と乱杭歯を見せて嗤う老人の顔を、思わずはっとなって顔を起こした土方が激しく睨みつけたその瞬間──
 闘技場から、爆発音にも似た轟音が響き渡り、辺りを揺るがした。







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