天国の日々 / 12 翌日には朝から訪れた山崎が、事情を説明しておいたと言う新八に頼まれたと言い添えて、銀時の着替えなどを持って来た。流石に土方がこんな状態なのもあってか、見舞いの申し出をされたが断ったそうだ。 銀時があれから食事や厠以外では殆ど動いていない事を気にしたのか。他に何か必要なものがあれば極力差し入れます、とは言われたものの、特に思いつかなかったので適当にあしらっておけば、 「……何か思いついたら、俺にでも見張りの隊士にでも、何でも申しつけて下さい」 日頃意地汚い事で知られているだろう万事屋に無茶振りをされないのは寧ろ望む処だろうに、何故か不承不承と言った感でそんな風に返された。 昼過ぎにはまた近藤が来て、昨日と同じ様に少しの時間他愛もない会話を交わした。 特に興味も無かったのに捜査の進捗をところどころぼかして報告され、犯人が捕まるのも時間の問題だろうと教えられた。警察がそう言う情報を軽々しく一般人に漏らして良いのだろうかとは思ったが、どうせ銀時は病院から一歩も出ない身だし構わないと判断でもしたのだろう。 或いは。ひょっとしたら近藤には、張り詰めて依頼に集中する銀時の心地を少しでも安心させたい意図でもあったのかも知れない。が。 寧ろ爆弾魔だか何だか、張本人が此処にのこのこと現れてくれた方が余程マシかな、などと密かに思っていた本心が銀時にはあっただけに、また曖昧に、頑張れと言う旨しか言えずに終わる。 (犯人みてーなもんが目の前に来りゃァ、怒りだの、鬱屈だの……もっと解り易く向けられそうな気がしてた、とは。流石に言えねーよなァ) 私刑の趣味はないし鬱憤晴らしをしたいとも思ってはいなかったが、解り易く、其奴に憤慨をぶつける事ぐらいは叶った筈だ。尤も、そんなものは単なる八つ当たりでしかない事は承知の上である。 ……まぁ、結局のところは、だからどう、だとは矢張り言い難い、埒もない想像以上にはならないものだが。 そんな風に不健康な考えが巡る程には、銀時にも矢張り疲労があったのかも知れない。 臥す人の意識が目覚める事はない侭、二日目を終えようとしている。そんな夜半頃にやって来た沖田には「ひでー面なのァどっちですかィ」と挨拶代わりに呆れも露わに投げられた。 「それ、お宅のゴリラ情報?」 酷い面、と言う意味合いで口に上らせたのは、ここ最近では昨日の近藤にしか思い当たりがない。昼間の捜査情報の片鱗と言い、口が軽い事で、と揶揄する様に投げてやれば、沖田は少々彼にしては質の珍しい種の苦笑を浮かべてみせた。 「そのへんは勘弁してやって下せェ。あれで結構参ってるみてーで」 それはわざわざ言われずとも解ってはいた。部下が、しかも親友で組織の要だった男が生死の境を彷徨っていると言うのだから、近藤は心情的にも実情的にも相当の大打撃を受けている最中だろう。 「ストーカーとかふてぶてしい事してる割にゃ、存外繊細なゴリラだったのね」 「あん人ァ面に似合わねー事に旦那より余程ロマンチストですぜィ」 「アレ、旦那がロマンチストとかそれドコ情報。ガセだからねソレ。旦那スゲー現実主義だからね?」 「リアリストがギャンブルで生計立てようとかお思いで?地から足が離れちまってんじゃねーですか。崖っぷちとかそう言う方角に」 「地に足がついてないってそっちの意味で?!ルセーな、こんな碌でも無ェ世の中だからこそ夢が必要なんだよ。因って夢見がちな現実主義て事にしとけや」 一頻り淡々とした応酬を続けてから、銀時は疲れた様に肩を聳やかした。議題が今最も互いの間に欲しくない対象に無いからか、舌の動きは非常に滑らかだった。同時に無意味でもあった。 両者の視線の集中する先にあるものを意識に捉えながらも、互いにそこには触れない。 「まぁロマンチストかどうかはどうでも良いんですがねィ、本当に酷ぇ面してますよ旦那。顔でも洗いに行って鏡とゆっくり世間話でもしてきなせェ」 「イヤそれただの危ない人だからね?寝不足なんだから面ぐれェ多少は酷くもなんだろ。徹夜にゃ慣れてっからもう二日ぐらい行けるたァ思うけど」 心底興味無さそうにそう締められ、銀時は口を尖らせつつも反論を乗せた。どうもこのドS王子も銀時をダシにする程度には、議題をどうでも良い方向にしたかったらしい。 戦の時は睡眠をまともに摂れない事も、睡眠を途切れ途切れに阻害された事も、深く眠りに就けなかった事もあった。今の平和な日常と怠惰な睡眠時間とで大分鈍ってはいるが、気の保ち様で堪える事は可能だ。 とは言え、人間の身体なのだから、いつかは休まないと強制的にシャットダウンされる事は避けられない。今も時折思考の合間で意識を休ませたりはしているが(目は閉じているが寝ている訳では断じてない)、それが本当の寝落ちに変わるのも、この侭の生活が続けばそう遠くはないだろう。 依頼が続くのであれば、交代要員の用意なり、と言った手を打たねばならない所だが── 「爆弾犯は直に逮捕出来そうだとかゴリラ情報であったしな。そうなりゃ真選組(そっち)の人手にも余裕出来んだろ?」 そうなりゃ警護もお役御免だろうと、そんな意図で投げ遣りに放たれた銀時の言い種を受けて、沖田は「おや」と小首を傾げてみせた。同じ面をした他の人間がやれば可愛らしい仕草なのかも知れないが、中身がドSの悪魔だと思うだけで逆にぞっとしない。 「お忘れですかねィ?今回の爆弾犯を捕まえた所で、土方さんの命が危険から解放される訳じゃねーんですぜィ?ウチの隊士どもが信用出来ねぇって訳じゃ無ェですが、近藤さんは最も手前ェの信頼出来るお人に土方さんを任せてぇでしょう。そいつは犯人を逮捕した後でもどうしたって変わり様が無ぇ事実でさァ」 「………」 事も無げに言う沖田の瞼が半分近く落ちる。今更何を、と言いたげなその目から思わず顔をぐるりと逸らして、銀時は短く息を次いだ。結局話はここに至るほかないのか、と思えば溜息も出ようものだ。 「…別に忘れてた訳じゃねェけど、よ」 そう。忘れていた訳ではない。目先の犯人が確保された所で、刺客の可能性は土方の体調が持ち直さない限りは尽きないのだ。 ただ、極力考えたくはなかったと言うだけだ。こんな終わりの見えない現実の引き延ばしも、それが『唐突に』終わる可能性も。 「爆傷に因る内臓へのダメージや細かい外傷やらもありますが、吹き飛んだ時に頭も強く打ったらしいですからねィ。最低限現場復帰が望ましい所でしょうが、下手を打ちゃァ、」 そこから先を沖田は続けはしなかった。銀時も引き取りはしなかった。 身体の損傷が時間の経過で叶ったとして、人間は脳に生かされている生物だ。沖田の言う『頭を強く打った』と言うのがどの程度の影響を医学的に及ぼしているのかなどは、素人な上に土方の容態を把握してもいない銀時には知れる由も無いが──最悪、 (………、) それは死と変わらないと思った。嘗て土方の魂が妖刀に喰われたその時にも同じ様に、思った。 生きてはいるが、土方十四郎として生きる事のもう無い、それは。彼の生きて来た鋳型を壊して、有り様を歪めたその存在は、ひとりの人間の死と同じだと。 そんな馬鹿な、と小さくかぶりを振る。仮にあったとして、それは最悪の更に最悪の結果であり、今は単なる想像でしかないものだ。 だから、損なう前に逃げたのだ。 己でそれを歪め違えて仕舞うのが怖かったからこそ。手を放した。 だと言うのに、それが、全く無関係に結局は壊される、など。 安易な運命論などを信じる心算は銀時にはない、が。だからこそこの皮肉の様な因果の想像の帰結には苦笑すら浮かばない。天の定めだの何だのと言う言い種で荒唐無稽に決めつけられた方が、まだ笑い飛ばしてやる事も出来ただろうに。 そうでなくとも、土方の現場復帰が無事叶ったとして、以前までと同じ『彼』で居られる保証はどこにもないのだ。何しろ全身が砕かれる様な爆傷を負っている。それは五体の何処かに影響を及ぼしているやも知れないし、何らかの後遺症を残す可能性だってある。そうなった時、それらの要素は土方の精神を酷く焦燥に追い遣るだろう。 鈍った身体と、頭と、思う様にならない身体とを引き摺ってでも、土方は『以前まで』と言う理想の己の鋳型を求めて足掻く筈だ。 直ぐに元には戻れない、と言う事実に打ち拉がれながらも、只管に。 『以前まで』の己と言うものが理想化されればされるだけ、その齟齬に自分と他者とが感じる違和感が許せなくなる。こんな筈ではないと焦りばかりが募る。 戦争中に怪我を負った者がよくそう言った精神状態に陥っていたのを、銀時はよく知っている。目や手足を失っても命を長らえた、その奇跡を喜ぶより先に、なまじ生きているだけに絶望感と己への失望に押し潰されて行くのだ。 強い者ほどそれは顕著に。苛烈な精神性の者にこそ、それは起こり得る。 仮に。そうなったとしても、土方は己の無力感や苛立ちとに苛まれながらも、歩む事をきっと止めはしないだろう。途方もない絶望感に動けなくなったとしても、それでも戦う事を放棄する事だけは決して無いだろう。歩みを止めた途端に緩慢に人は死ぬ。生物的な意味で死んで仕舞うのではなく、単純に生きられなくなって仕舞うからだ。 土方はそれを知る男だ。自尊心の高いあの男には喪失の経験は無いだろうが、己の身には起きなかったそれを感覚で理解しているのだろう。だからこそ、いつ何時でもあの男は立ち止まらずに進み続けているのだ。眼前に痛みが在ろうが失望が在ろうが、間違いなく、進む事だけはやめない。 そこまでが容易く想像出来る事こそが今は逆に痛ましかった。 じっとSICUに視線を注ぐ銀時とは逆に、沖田は硝子窓に背を預けた。熱の無い眼差しが宙に伸ばされて、天井の蛍光灯を静かに映している。 この沈黙を沖田が極力避けたかった事は最早想像に易く、銀時とてそれは同じ事だった。奇妙な連帯意識は、然し互いに端を発する要素が同じであれど、見ている方角が違う為に結びつきはしない。 やがて、重苦しい空気の中に、そっと沖田が息を吐き出した。 「爆破の犯人にしちゃァ、復讐達成で万々歳な結果でしょうよ。ま、それが手前ェがお縄になった上、課せられる罪科と刑期とに釣り合うかどうかなんざ知りませんが」 恣意と言うより、ついこぼれた、と言った程度のものだっただろう。その言葉に銀時は片眉を持ち上げた。 「…何。犯行は警察つーよりあいつ個人に対する怨恨?」 思わず問うと、沖田は露骨に、しまった、と言う表情をしたが、次の瞬間には何事もない様に飄々と笑ってみせる。実際どちらでも良かったのかも知れない。 「ゴリラ情報はここまでァ漏らしてませんでしたか。ま、旦那についちゃ心配はしてませんが、部外秘でお願いしますぜィ」 立てた人差し指を唇の前に当てる仕草をしながらそう言い置いて、沖田は続ける。 「そもそも、幾ら間に爆破物処理用の筺があったとか、土方さん本人は爆弾の置かれてた部屋にはまだ踏み入ってなかったとか、色々運が重なったとしても。爆発の現場に居合わせておいて重軽傷者のみで済んでるって時点で、犯人には警察組織に対する怨みや土方さんの存在を近くに確認した所でスイッチを押す様な害意がある事は間違いありませんが、そこに明確な殺意があったか、と言う意味では寧ろ誰もが可能性の段階を論じれば否定的です。 今回の犯行は、確実性と殺傷力って意味に置き換えると、勝率は限りなく低いんでさァ。運、て要素もそこからマイナスすれば尚更の事で」 「……殺意が。いや、勝率?まぁその言い方で良いけどよ、確実に殺傷出来る成功率が低かったとしても、目論んだ時点で立派な殺意以外のなんでもねーだろそんなん」 憮然とする銀時へと、憎たらしい程の淡々とした調子で、沖田。 「残念ながら今の法律じゃ、悪意だの害意だの殺意だのは、抱いてるだけじゃ罪にゃ問えません。同時に、爆弾に殺傷力が無かった、イコール殺意が無かったって証明にもならねーんですがね」 遠隔操作出来る爆弾などと言う想定外のシロモノを人間へと、害意ひとつで使おうなどとは普通の人間の神経では大凡考えられない。自らは安全な場所で凶器のトリガーを引くだけなどと言う遠回しな悪意。人々が手元の端末で、顔も知れない誰かへの無意味な罵声を投げるにも似た、卑劣な臆病者の様な子供だましの『悪意』。 だが、そんな害意が何らかの瑕疵を何処かに、遺恨を誰かに、遺さぬ可能性はゼロではない。悪意を抱いて置かれた爆弾は、害意を持って作動させられ、殺意に変わって土方とその部下たちを襲った。 怨みらしきものはあった。実行に移すだけの行動力と、それを支持した害意への意欲はあった。だが、殺そうとした訳ではない、と言う。 「要するに、結果だけを言っちまえば全部偶さかの運て事です。土方さんが対爆装備もしない侭現場に向かったのも、その声を聞きつけた犯人が衝動的にか確信的にか、まあどっちでも良いんですが起爆スイッチを押しただろう事も。それで土方さんが打ち所で生死の境を彷徨ってる事も。旦那がその護衛って依頼でこんな所に留め置かれてる事も」 「それは、」 殺意の有無の問題ではない。その思考や行動が害悪かどうかと問うべきだろうと、声を上げかけた銀時を制する様に掌をこちらへと向けて、沖田は幼さの残る顔立ちに明晰な色を乗せた。 「話の焦点はそこじゃあねーでしょう、旦那。俺は別に旦那と法律談義をしたい訳じゃねーんです。 ここまでの情報と捜査とで出たあれやこれやとで、犯人は──怨恨で警察を、まあ願わくば土方さんをですが、殺害しようとは思わずとも、負傷ぐらいは負わせようと息巻いてるだろう子供じみた阿呆、に絞られたって事です」 一杯食わされた、と言う程ではないが、巧い具合に怒りや苛立ちへと感情を誘導された気がしてならない。銀時はひととき上がった内圧を舌打ちひとつで吹き消して、『らしくない』自分の様に呆れてみせる素振りをして言う。 「その阿呆の心当たり、既に出てそうだな?その様子からすると」 「流石に個人名までは言えませんがねィ。爆弾義賊なんて言われてる一連の『義人党』の事件の本質とも言える存在を特定するに至った、最初の方の捜査の中で、別件の容疑者でしたが取り調べの最中に土方さんがちっと荒めに傷負わせましてねィ。ま、容疑者が小型とは言え爆弾を取り出したのもあって、職務中の正しい行動、正当防衛となりましたが」 向けられた銀時の舌打ちを耳にしても悪びれた様子はなく、沖田は澱みのない調子で言うと、持ち上げていた右掌の上、指の付け根辺りを手刀の様な形にした左手ですっと薙いでみせた。銀時は少し考えてから、恐らく容疑者が爆弾を取り出すのを見るなり、土方の刀がその指ごと驚異を切り払ったのだろうと推測した。物騒な想像ではあるが実にそれらしい。 「で、下手人の土方さんの指示で、切断面の細胞が壊死するより先に氷水で冷やしたのもあって、なんとか容疑者の指は元通りくっついたそうですが…」 「……それこそ、今までと同じ、って訳にはいかなかった、って?」 先頃の想像を未だ見ぬ犯人像へと当て嵌めかけた所で打ち消して、銀時は静かにかぶりを振った。憶えたのは怒りと言うよりは寧ろ慨嘆だった。 今まで幾らでも他者の恨みを買って来た鬼の副長が、そんな下らない的外れの、出鱈目に向けられた害意の為に手折れるなど。 「…………まぁ、害意か殺意か。そう言うものに足る動機があるとすればそんな所でしょう。容疑者が買い揃えた爆弾の一部の出所の店と、封鎖区域にそれらしい人間の姿があった事は監視カメラなんかで確証が取れてます。あと、犬の剥製を個人輸入で購入していた事も、今回の現場となった黒川邸に奉公していた友人からの証言も既に揃ってるんで、奴さんの確保は時間の問題でしょうねィ」 「そう、か」 一応は是を示したものの、銀時には続く言葉も堪えうる憤慨も持てそうになかった。 怨恨が結果的に犯行を引き起こしたとして。殺意の立証が難しかったとして。銀時にはその犯人とやらを赦せる気は到底しない。 だが、明確な怒りもそこに抱く事が出来ないのは──己にもその心当たりとなるべき感情が確かにあった事に気付いて仕舞ったからだ。 あいつの心を、馬鹿にする様に、嗤ったのは俺も同じだった。憐れんで、虐げる様に、組み敷いて首に手を掛けて愉悦を快楽にして啜ったのだ。確かに一度は、全てを諾々と受け入れていたあの男に、手前勝手な感情や情動を押しつけた。 それが愛だの情だのと言う名前に由来する様なものであったとして、本当にそこにはただの加虐心は無かったか。ただ蔑んで愉悦するだけの支配者の心地は無かったか。 (──……俺も、) 害意とか殺意とか、そう言うものでは無かったと言うだけで。土方の矜持や心や、様々なものを踏み躙って居た事に、違いはない。 銀時の浮かべた苦渋の顔には気付いただろうに、沖田は特に何の指摘も投げては来なかった。詮索めいた揶揄の一つでさえも。 土方が、警察を標的としたと見られる爆破事件で負傷した。そして今も猶昏々と眠り続けている事に対して、当初は、怒りよりも嘆きよりも先に疑問が涌いて出て、時間の経過につれてそれは焦燥になった。そして、目先に横たわる現実と変わった。 即ち、是か否かの二つに。生きるか死ぬか。活きるか止むか。 「…と、まァ無駄話が過ぎましたが、犯人だけは少なくとも逮捕出来そうって事でさァ。そうなりゃ殺意の有無には限らず、何らかの法的手続きがきちんと取られる事になるでしょう。警察(俺達)に出来るのは、奴さんに良い弁護士がつかねー事を祈るくれェです」 沖田の言い種は何処か自分に言い聞かせている風でもあった。逮捕の際に「手が滑った」と刺し殺してもおかしくないのではないかと、思わずそんな事を考えて仕舞う。流石にやらないだろうが。 「さっきも言った通り、犯人が逮捕されようがどうだろうが、旦那の仕事は当面変わりねーんで、適当にお願いしまさァ」 態とらしく肩を竦めてみせる、その様子からは内心に渦巻く後悔にも似たものが良く伺えて、やはりこの議題になるとこうなるのは避けられなかったと、銀時は今更の様に思った。そこに混じった沖田の呟きの行き先共々、益々に空気は重くなる一方だった。 「生きるか、それとも死ぬか。どっちに転ぶかはっきりするまでは、近藤さんは納得出来ねぇでしょうねィ」 お見舞い二号。……アレ、やっぱり進んでないようにみえる…? /11← : → /13 |