天国の日々 / 23



 五日後には、医者は土方が自宅療養に移る許可を出した。事実上の退院である。
 ばらばらに千切れた記憶はともかく、身体の方は至って順調な回復を見せていたのだから、これ以上病院側が治療出来る事は何もない。
 身体のそこかしこに残る疵や痣は少しづつ目立たなくなって来ているし、骨折も日常的に不便を生じる部位には無い。主要な臓器を損傷していなければ、なんでかんで人体とは丈夫なものである。
 二週間後にもう一度検診を受けに来るように、と肺のレントゲン写真を前に言われて、おまけの様に、煙草は今後も控えて下さい、と付け足された。見慣れないレントゲンの意味はよく解らないが、土方十四郎は相当に愛煙家だったと言う話だから、医者が辟易する程凄い有り様でもしていたのだろう。多分。
 脳の方は、今施せる施療は医学的には何も無い為、この侭様子を見ようと言う事で落ち着いた。無理をせずゆっくりとしたリハビリをする様勧められ、もしも不安や強迫観念で鬱や他の症状を併発させる様な事になったら心療内科を受診するのも考えてみて下さいとアドバイスをされた。
 社会的規範に忠実に生きようとする真面目な人間ほど、侭ならない己の身体や心に焦り、気付かぬ内に痛手を遺し易いと言う。
 成程、土方とて坂田の献身的な介助や導きがなければ、ちょっとした記憶と行動との違和感にいちいち己を恥じて責めて焦燥に苛まれる事になっていただろう。そんな生活ではさぞ胃を痛めて心を磨り減らしていたに違いない。
 それから医者は付き添いとして横で聞いている山崎に向けて、あれやこれやと留意点なぞを話して聞かせていた。食生活がどうのとか、健康状態がどうのとか。
 最後に看護婦から、念の為の痛み止めの処方箋と、次回通院の日付を書いた付箋を貼られた診察券を渡された。土方の代わりにそれを受け取った山崎は、薬局に寄って来るから先に病室に戻っていて下さいと言い置いて、そそくさと離れて行って仕舞った。
 それは何やかんやと気の回る部下なりの気遣いだったのだろう。…そう思わなければいけないのだろう。土方はまた少し己の裡の感情の乖離に対して痛みにも似たものを憶え、それを持て余しながらエレベーターに乗った。人や物を運搬するだけの筺の中は狭く息苦しい筈なのに、いつも何故か酷く落ち着いて感じられる。
 閉塞の空間には何も返るものがない。得るものもない。だからかも知れない。
 エレベーターホールにいつも交代で護衛に立っていた真選組隊士の姿はもう無い。彼らの何れの顔にも矢張り憶えはなかったが、生真面目に職務に勤しむその姿には、『副長を護衛するのだ』そう言う決意と意思とが常にはっきりと伺えていた。
 土方十四郎と言う男が彼らにどう思われていたのか。そんな想像が端的に出来る程に、真選組と言う組織にはその存在が必要不可欠であったのだろうと思い知らされる。
 気鬱な心地を抱えた侭で土方が病室に戻れば、坂田が退院の準備を進めていた。とは言っても少々の着替えなどをまとめていると言った程度だが。
 「お帰り。どうだった?」
 「二週間後にまた来い、と言われた」
 いそいそと土方を室内に迎え入れながら、坂田の手指が耳朶を擽って、僅かに触れるだけの口接けをそこに落とす。
 坂田はこう言ったスキンシップが存外に好きらしく、土方との関係性を近藤に『知らしめ』て以降、彼らには憚らずによくこうして絡んで来る。余り人慣れのしない性質だったらしい土方には、羞恥の問題もあってどうにも有り難くない行為なのだが。
 「そか。面倒くせぇな」
 悪戯な手つきが項を辿り、襟足の毛を指に絡める様にして軽く引っ張ってくるのに、土方は微細な痛痒感を堪えきれずに目を眇める。
 「…面倒なのはお前じゃないだろう」
 「お供するんだし、俺も面倒だろ」
 項を弄る手を払おうとすればあっさりと躱され、そんな風に言われる。どうやら離れる心算はまるで無いらしい。溜息。
 仕方なしに坂田の好きな様にさせながら、その肩越しに室内をぐるりと見回す。
 そこは二週間近く世話になった部屋だ。ここしか知らない世界の最も内側であり、土方と言う人間が揺籃の時を終えて外に生まれなければならない、籠の中でもある。
 ベッドの上にあるネームプレートからは、もう名札は取り除かれていた。布団は一式クリーニングの為に運び出され、ベッドマットの上にはベージュ色の毛布が畳んで置いてあるのみだ。
 同時に、そこは坂田に全てを暴かれて曝け出され、抱かれて思い知らされた、部屋だ。そう思えば部屋の至る所にその痕跡が染み付いている気がして、益々に土方は身の置き所を失う。
 あの夜以降、坂田は土方に戯れの様な触れ方は頻りにして来たが──と言うか今もしているのだが──、性的な匂いをさせる様な行為に及ぼうとした事は無い。土方が警戒していた、と言うのもあるかも知れないが、取り敢えず本人も言っていた通りに、無体を好んで強いたいと言う訳ではない様だった。
 そもそもである。坂田が土方へと、確かな情愛めいたものを寄せてくれているのは間違い無いのだ。そうでもなければ、徹夜で付き添い続けたり献身的に介助や護衛として居てくれる理由が解らない。幾ら何でも屋──万事屋とは言え、意に沿わぬ相手にそこまで身も時間も砕いてくれる筈がないだろう。
 それに何より、近藤も山崎も坂田を信頼している様で、二人とも土方との関係に少しは驚いたが、最終的には理解を示し納得までしているのだ。少なくとも坂田は『他人』であるところの真選組の局長と監察方筆頭には一目置かれているらしい。
 坂田がどう言った人間なのか、土方は未だによく解らない。ただ示された通りの、大凡素直とは言えはしないが、優しく面倒見が良く懐が広い男と言うだけではない事は知った。
 怠そうな顔をしている事が多いが、物腰は戦う男のそれだ。実際に、均整も美しく鍛え上げられた肉体の語る通り、腕は良いらしい。
 軽口は叩く。下品な物言いをする。糖分ばかり摂る。ギャンブルが好き。常に生活は困窮。従業員の子供らや大家にまで呆れられ諦められている。……などなど。偶々坂田が病室にいない時に、山崎に聞いた情報である。何れも、この病室で土方の得た坂田の印象とは余り合致してくれそうもないものばかりだ。
 以前までの自分は、果たしてこの男の事をどう思っていたのだろうか。
 恋人だと宣われたその通りに、恐らくは身体を重ねるに至る様な関係であった事は確かだろう。
 同性故に──或いはそれだからこそか。歪な関係をそれでも貫いて寄越した、その想いの強さは想像だに出来ない程のものなのだろう。想いと言うより最早執着と言って良いものかもしれない。
 そんな関係性で居た事を当人達以外の誰もが知らぬと言うのに、それを『忘れられた』。どう身を、心を置こうかと悩んだ坂田の懊悩は土方の想像の及ぶ所ではない。
 その疵から、素っ気なく突き放した様な態度を取り『腐れ縁』の関係でしかないと言い張っていたと言うのは、感情としては頷ける。『忘れられた』恋人に親身に接して拒絶なぞされた日には堪ったものではないだろうから。
 実際に、お前と俺は付き合っていました、だのと言って聞かせられたとして、それを額面通り受け取れた自信は土方にはない。寧ろ『初対面』の時にそんな事を言われていたら、ドン引きした挙げ句避けた事請け合いである。
 両者の関係性を知る証言者も無く、証拠はそれこそ肉体そのものにしかないのだ。そう思えば坂田の強引な手段にも納得はいく、が。
 己がどんなものであったのか、形が解らない。立つ根が解らない。坂田の教え導いてくれたものにしか確かな確証を得られないなどと──あの男の鋳型に形作られた事しか得たものがないなど、と。
 真選組の副長。そんな肩書きを持つ筈の公人に、それが果たして相応しいのか、正しいのか。解らない。
 だが、もう揺籃の時は終わりを迎えた。解らなくとも、知らなくとも、思い出せずとも、それを受け入れて生きていくしか己に出来る事はない。そうして生きていくしか、己の居場所を見出す方法はない。
 「…に、しても髪随分伸びたな」
 きゅ、と毛先を摘まれて、引っ張られる頭皮の痛痒感に土方は思考の底から意識を戻す。項の辺りをうろうろとしていた坂田の手がさらりと頭頂から後頭部までを撫で下ろして、適当なところで長さを見る様に髪を引っ張っている。
 「そうなのか。気になるなら髪結い床でも寄る」
 ずっと臥していたのなら、確かに伸びているのかも知れない。言われてみれば写真の頃よりは全体的に重く見える気はするが。余り意識はしていなかった為によく解らず、土方は自らの指で前髪の緞帳を軽く除けた。邪魔と言えばそうなのだろうか。
 「いや、『帰った』ら切ってやるよ。毛先揃える程度なら何とか出来るし」
 鋏を動かす様な仕草を指で作って言う、坂田の笑みからは隠しきれない──隠す気もない──上機嫌な様子が伺えた。
 それもそうかも知れない。元来自由気侭を好む男だと言う。仕事とは言え──否、『恋人』の為とは言え──ずっと窮屈な病院に缶詰だったのだから、外に出たり自由のきく身になれる事はさぞ嬉しい事だろう。
 同じ目線の高さで、坂田は口元を甘く緩めながら土方の毛先を指先で弄んでいる。それこそ、埒もない恋人同士の戯れの様に。
 慣れない、が。慣れるべきなのだろう。ここが戻る場所であるのなら、坂田が寄る辺であるのなら、それはきっと正しい答えの筈だ。
 キスをするにも似た距離での優しい戯れに、土方は怖じけるのを誤魔化す様にほんの少しだけ目を細めた。
 そこに、コンコン、とお座なりなノックの音がして、それと同時に山崎が姿を覗かせた。「失礼しま」そこで硬直するのを見て、土方は咄嗟に坂田から離れるが、坂田の方は然程気にした風情でもない。だが特別引き留めも見せつけもしない。
 「エート…、薬、貰って来ましたんでここに入れときます、ね」
 ひょっとしなくても邪魔なタイミングでしたよねー。そんな遠慮の眼差しが泳ぎがちに坂田と土方の方から離れ、出入り口付近の簡易ベッドの上に纏めてある荷物へとぎくしゃくと向かう。
 山崎は坂田と土方の関係について近藤ほどあっさりとした納得は得なかった様だったが、薄々は思い当たる様なものがあったのかそれとも無かったのか──兎に角、慣れてはいないが反対もしないと言うスタンスの様で、取り分け土方が坂田を拒絶する気配が無いと言う事を尊重する選択を選んだらしい。
 「つーか、もう行くんだろ?」
 「あ、はい。えーと、そうですね。車も下に置いてありますし…」
 ひょいと山崎の後ろから荷物を覗き込んで言う坂田に、山崎は壁掛け時計を見上げてから慌てた様に頷いた。どんだけチェリーな反応なの、と小声で吐き落とされた坂田の悪態は聞こえないフリを決め込む事にしたらしい。そそくさと、土方の荷物の入った鞄を持ち上げる。
 土方は反射的に、荷物ぐらい自分で持てると手を伸ばしたが、それはやんわりとした仕草で止められた。真選組の副長と言う肩書きは、そう重くないものとは言え部下に荷物を運ばせる事ぐらいは平常営業で行うものなのだろうか。
 坂田は自分の荷物は自分で持つと、複雑な感情を噛み締めて佇む土方の背を軽く押した。廊下に出て行く山崎の後に二人は無言で続く。
 エレベーターホールまで来ると呼出ボタンを押し、一階から上がって来る筺を待つ。その間に思い出した様に山崎が口を開く。
 「副長の私物や机仕事が可能な程度の道具なんかは先に運び込んであります。生活必需品も一揃え用意しておきましたが、何か足りないものや必要なものがあったら直接でも電話でも言って下さい」
 「飯…つーか食材は?」
 質問を上げたのは坂田だ。山崎は隊服のポケットを漁ると中から折り畳まれた地図らしき印刷物を取り出した。坂田へと渡しながら言う。
 「近くにはコンビニが一件ありますが、スーパーの類は少し離れてます。そちらへ行く時は念の為に、出来ればお二人で出掛けて下さい。もしくは俺に買い物を言いつけて下さればそれで。
 ホームセンターと併設されてる、そこそこ規模の大きな店舗なので、大抵の用ならそこで済ませられると思います」
 「成程。りょーかい」
 渡された地図を一通り見て頷いた坂田が、それを懐に仕舞うのとほぼ同時にエレベーターがやって来る。
 三人が乗り込むと、山崎は三階のボタンを押す。思わず誰何の目を向ければ、「お世話になりましたから、ちゃんとお礼を言っておいた方が良いですよ」だそうだ。成程、道理だと思った土方は、一時期己の眠っていたSICUのあったその階に立ち寄ると、世話になった看護婦やスタッフに綺麗に頭を下げて礼を述べた。
 お大事に、と、にこやかに言う笑顔たちに見送られながら、再び三人の乗ったエレベーターは、今度こそ出入り口のある一階へと下りた。
 「駐車場は裏の方が近いですから」
 そう促されて、土方は薄暗い廊下を無言で進んだ。警備室に詰めている男が、荷物から退院だと察したのか、愛想の無い声で「お大事に」とお決まりなのだろう文句を述べるのに背中を押しだされ、外への扉を潜る。
 外は生憎の曇り空だった。だが、ずっとブラインドと遮光カーテンの下りた部屋に居た土方には、紛れもなく久方ぶりに全身で浴びる陽光である事に変わりはない。
 「──」
 駐車場は平面で、平日だと言うのに外来の空いている時間帯だからか、殆ど満車だった。停車している乗用車。乱雑に並んだ自転車。江戸の中心部に比較的近い町並みはほんのりと賑わいを漂わせており、空にはターミナル方面に向けて飛んで行く小型の船が見える。
 風は冬の乾いた冷たさで、深々と身体を寒さに晒す。何処かで山茶花が咲いているのだろうか、ほんのりと甘い花の香りがした。
 (ここが、江戸)
 識っている筈なのに知らない世界だ。中心部であるターミナルが何処にあるかは、目立つのだから見れば解る。だが、目の前を通る道路の先に何があるのかは解らない。花の匂いも、雪の降りそうな気配も、歩き方も解るのに。自転車の漕ぎ方は──多分解らない。車はハンドルを握れば運転出来るかも知れないが、流石に公道で試して見る気にはなれそうもない。
 「……行くぞ」
 やがて、ぼんやりと立ち尽くす土方の背中を坂田が軽く押した。山崎は駐車スペースに収まった、一台のシルバーのセダンの前で既に待っている。
 ここは本当に自分の住んでいた世界なのだろうか。解るようで、解らない。継ぎ接ぎの様に、解る事と解らない事とが混在した世界は繋がらず、その事に途方もない不安に襲われる。
 退院と言う、健康の保証された事実への安堵よりも、一寸先の足下が憶束ない。
 坂田に促される侭に車に向かって行く途中で、ふと病院を振り返ってみる。薄曇りの空を背負った白い建造物は、まるで何かの障碍の様に聳えて土方の背を追い立てている様だった。
 
 
 手荷物は軽いものばかりだったが、構わず全部トランクに放り込み、山崎がエンジンを掛ける。冷えた車内は暫く待てば直ぐに温かい温度を保つ様になるが、後部席、銀時の隣に収まっている土方の表情は冷えた様に固く強張った侭、じっと窓の外にその視線は向けられていた。
 車が向かっているのは真選組の屯所ではない。近藤の名義で江戸市内──辛うじて江戸と呼べるが中心地からは大分離れている──に借りた借家だ。
 記憶の問題もあるが、まだ本調子ではない土方の身体を思えば、現場に直ぐ戻せるものでは到底ない。鍛錬は疎か、剣さえまともに扱えるかも解らないのだ。また、そんな状態の土方を大勢の隊士の目につく所となる屯所に置いておく事で、士気も下がりかねない。そのぐらい、真選組に於いて『鬼』の存在は圧倒的で重要なものだったと言える。
 その為、近藤は土方を一旦件の借家で療養と言う名目で匿う事にした訳である(無論近藤一人の決断ではないのだが)。そして銀時に引き続きの護衛と言う名目で、介助と武術方面への鍛え直しを『依頼』してきたと言う訳だ。
 そうする傍ら、机仕事も山崎が持ち込む事で、少しづつ頭脳としての役割も取り戻して行こうと言う、事実上のリハビリ期間が用意されたのだった。
 期間は今の所未定ではあるが、一応は江戸市内と言う立地であるのと、実質ほぼ護衛は必要無いだろうと言う目算もあって、銀時も万事屋に時折戻れる様に計らって貰う事になっている。真選組側から見ても、屯所からもそうアクセスに困る距離ではない。少なくとも病院通いよりは目立たないで済むし、入院費用もかからない。
 どうやら割と長期戦を見越した計画でもある様だ。出来るだけ早くリハビリを、とは言っているが、土方に病院に居る時ほどに無理が強いられる様子でもない。
 ひょっとしたら、銀時の存在が在る事で土方が真選組と言う知らぬ組織に復職しようとする、ともすれば負い目や強迫観念になりかねない様な、精神的ストレスが幾分軽減されると思われているのだろうか。だ、としたら嬉しい誤算だが。実際合っているかどうかはさておいて。
 窓の外に流れゆく風景を、酷く頼りない眼差しで見つめている土方の為にも、出来るだけリハビリの期間は短い方が良い筈だ。今はまだ辛うじて、自分を所持しようとする銀時の存在を受け入れているし、真選組と言う戻るべき終着点が見えているが、『日常』ではない生活の流れはどうしたって互いの調子をおかしくしかねない。『元通り』ではない生活が長く続けば続くだけ、土方の前向きな感情も折れて行って仕舞うだろう。
 銀時は土方を、以前までの彼と同じ存在だとは思っていない。それこそ妖刀に魂を喰われたあの時の様に。これは土方に良く似た、然し土方ではないものだ。
 真っ新に生まれたこの土方十四郎を、今までと全く良く似た土方十四郎として真選組に返す心算など銀時にはもう無い。また真選組と言う存在だけに縛られるのを黙って見てなければならない道理など無いからだ。
 一度は銀時へと全てをギリギリの所まで投げ出した、あの土方の心だけが欲しい。
 あの時は、真選組の副長だった土方だったからこそ、銀時に隷従する様に歪んで行くのを冒涜と感じて畏れたのだ。
 だが、今の真っ新な土方にならそれを躊躇う理由は無い。畏れる必要も無い。これはもう、銀時の所有物である事を誰もが知る、真選組の副長に収まっている土方と言う存在に生まれ変わったのだから。
 これは、今までの土方とは違うのだから、己の思う侭の鋳型で打ち直してやろうと平然と思えるのだ。
 別人だからこそ、意の侭にしてやろうと決めたのだ。そうする事で、一度は仕舞おうとした恋情に再び火が点いた。
 残酷であろうが、自分勝手であろうが、歪であろうが。
 銀時はどうしようもない程に土方への執着を深めていた。これを、自分の好きな様に作り直して愛でると言う、酷く歪んだ熱情は、それでも間違い無い程に確かな愛だった。
 





酷銀さんは土方相手だと甘えが出てド畜生メンタル化するだけなんです(フォロー不可

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