天国の日々 / 6 足の間で黒髪の頭部が揺れている。 「んむ、ん、、ン、」 吐息の様な音と、じゅぷじゅぷと鳴る水音とが、狭いホテルの一室に響いていた。 「んっ……、そう。そこ、吸い上げてみ?」 ぞくぞくと性器から伝わる快感が脳をダイレクトに叩く。銀時は快楽と愉悦に目をそっと細めて、眼下の黒い髪をそっと撫でてやった。覗く紅い耳と、時折指示する要望に必死で応える殊勝な態度とが、裏腹で可愛らしい。 張り詰めた銀時の性器を、いつもは煙草なぞくわえている唇で必死に受け入れて、喉奥まで一杯にしながら懸命な奉仕を続ける土方の姿なぞ、少し前までは想像だにしていなかった。 舌を当てて擦り上げながら唇を何度か上下させ、時折思い出して疎かになっている手で根本を愛撫する。銀時が教えた遣り方だ。及第点。 夥しい唾液が滴る口元は浅ましく弛んで見えて、形の良い貌が苦しげに歪む様に何とも言えない満足感を憶えながら、銀時は土方の側頭部をそっと押さえた。『合図』に土方の顔が強張って──次の瞬間には瞠られた目は観念した様に伏せられる。 舌なめずりをしたい心地になりながら、銀時は寝台の下に膝をついた土方の頭を少し持ち上げて、腰をゆっくりと前後に動かし始めた。余り喉に深く入らない様注意してやりながら、咥内だけを往復する動きを徐々に早めて行き、土方がその苦しさに涙をこぼす頃、ずるりと性器を引き抜いた。もう解っているのだろう、目をぎゅっと閉じ口は開かれた侭でその時を待つ、綺麗な貌目掛けて銀時は己の性器を扱き上げた。 顔に遠慮なくぶち撒けられる青臭い液体の感触に、何かに堪える様に土方の拳がぐっと握り締められるのが見えた。 三週間振り程度だったか、自分の事ながら結構溜めていたらしい欲が、狗の様に大人しく座る土方の、日頃は取り澄ました清廉そうな顔を汚すと言う解り易い絵面に、銀時は射精の身体的な満足感と状況への精神的な充足感に大きく息を吐いた。 目に入ったら痛い事を知っているからか、終わっても土方はなかなか目を開かない。銀時は手を伸ばすと土方の目元に飛んだ精液を指でぐいと拭ってやった。整った鼻梁を滴り落ちる液体の生々しさに少し笑って、その指を開かれた侭でいる口へと差し入れる。 ぶっかけるのも好きだけど、飲ませるのも好き、と以前言った事を健気にも憶えているらしい、土方は銀時の指へ舌をちろちろと這わせて、指を汚す精液を綺麗に舐め取った。 「ん」 いいこ、と胸中で続けて、何度か繰り返して顔の汚れを粗方拭ってやってから、 「おいで」 呼んで手を引いて寝台の上へと誘う。恐る恐る目を開いた土方は銀時の手に促される侭に大人しくシーツの上へと身を横たえた。 ご褒美の心算で、啄む様な口接けを何度も落として愛おしみながら、その身に快楽をじわじわと与えて行く事に専念する。 正直、最初にフェラチオをお願いしてみた時は、殴られるか詰られるか程度の覚悟はしていた銀時だったのだが、蓋を開けたらどうだろう。 「……やってみる」と短く一言、耳まで真っ赤にした顔でそう言って。当然他の誰にも──された事があったとして──した事なぞなかっただろう、男の性器を口に受け入れ舐めしゃぶると言う、想いの通じたセックスの際でも無ければ屈辱感さえ憶えそうな奉仕と言うその行為を、土方は僅かの逡巡をしたのみで、文句も言わず行ってくれた。 銀時の教える侭に、憶えた侭に。望まれれば難色を示すこと無く。それからも何度も。 その様は銀時にとって酷い高揚感と優越感、愉悦と支配欲と快楽をもたらした。 あの土方が、言われる侭に銀時の性器をその口に受け入れて、必死で、自分が多少苦しい思いをしようとも、気持ちよくさせようとしているのだ。これで何も感じない様なら男としてどうかしていると思う。 土方は──『付き合い』が始まる前までは想像だにもしていなかったのだが、大凡、銀時の望む事なら何でもしてやろうと言う気概でも持っているらしく、セックスの際の多少の無茶程度ならば大人しく応じてくれた。色々な体位を試したり、縛ってみたり、目隠しをしてみたり、合法な『気分を高める』程度のクスリを使ってみたり。 別にセックスがマンネリ化していた訳ではないし、そもそも飽きを感じる程回数を重ねてもいない。普通に睦み合うだけでも互いに充足は出来ているのだが──日頃淡泊そうで大凡性的な匂いなどしない様な可愛い(少なくとも精神性の意味では)恋人が、閨の中では銀時の求めとあらば、淫らだったり屈辱的だったりする所業に応じてくれると言う理想的に過ぎる状況なのだ。甘んじるなと言う方が無理な話だろう。そっと目を逸らして済ませられる程に、生憎達観も出来ていなければ枯れてもいないし悟りも開けていない。 大概の『お願い』に前向きに応じてくれる土方の表情には、躊躇や羞恥はあれど嫌悪や拒絶の類は無い。狗が頭を垂れる様に大人しく全てを受け入れて、望まれる侭に形作られて行く。相手の身体を自分の好きなように作り上げる事が叶う日など来るとは思っていなかっただけに、その歓喜はより強くなり、より執着も増していく。 (俺って愛されてんだろうなあ…) 仮に。土方が単に男とのセックスで得る充足が好きなだけだとしたら、こんな自尊心をかなぐり棄てる様な行為に諾を示すとは思えなかった。ので、銀時は純粋な歓喜を以てそう判じていた。 「ぁ、あ…ッ」 奉仕だけですっかり持ち上がって仕舞っていた、土方の性器を達しない程度に可愛がってやれば、もどかしい快楽に堪えかねる様に、掴んだシーツにぐしゃりと皺が寄る。宥める様に、強張った腕を見つめながら割った脚を掴んで、膝裏に唇を当てた。 ちらと見下ろせば、腹につく程反り返った性器と迫り上がった陰嚢の下方で、慎ましやかにしている後孔が恰もその視線を感じたかの様に、その先の快楽を思ってかひくりと収縮するのが解った。 男なぞ知らなかった土方の身体を、同じ男に抱かれ、男に奉仕する事にも昂ぶる様に躾けたのは、紛れもなく自分自身なのだ、と。そう思えば堪らない愉悦が生じる。 ローションを掌に拡げ、少し温まらせてから会陰をつとなぞって後孔に触れた。大分慣らされて来たとは言え、本来の用途に反した事をそこに強いるのだからと、銀時はいつもここで少し慎重になる。土方の身体を気遣っているのもあるが、時にはそれが焦らして愉しんでいる様にも見えるらしい。ぬるぬると、時間をかけて体内を探りながら押し込まれる指に、土方は苦く強張った表情をしながらも全身の神経を向けて集中している。 もどかしさに無意識に揺れる腰や、先走りを滴らせた性器が浅ましく揺れる様子、理性の淵に立った侭快楽を受け入れようとする、濡れた眼差しの行く先。 「よろずや、」 其処に確かに己が居るのだと認識する、その歓喜に背を粟立たせながら銀時は、応じる様に指の動きを早めた。抜き差しして、前後に拡げて、反射的な抵抗を見せる括約筋を少しづつ拓いて、指を増やす。 「〜ッッ!!」 腹側を擦り上げて前立腺に甘い刺激を与えてやれば、堪えかねると言う様にぶるぶると、持ち上げた脚から腰に漣の様な震えが走った。張り詰めた性器の頭が震えて、とろりと先走りの蜜が滴る。 悩ましげに因った眉の下で、硬く瞑られていた目が薄ら覗くとその拍子に綺麗な涙が汚れた頬を伝って落ちた。 「……な。欲しい?」 悪戯を仕掛ける子供の様な、くすくす笑いを潜ませた声の問いに、流石に土方は寸時批難めいた眼差しを向けて寄越してくる。行為が始まってから向こう、勃ち上げられた侭で戯れ程度の刺激しか与えられていないのだ。欲しいかどうかはさておいて、イきたいのは確かだろう。 土方の性生活や自慰の頻度なぞ知らないが、順調ならば一週間に一度は叶う逢瀬では、必ずと言って良いほどぐずぐずになるまで睦み合っている。翌朝仕事を控えている時は幾分気も遣うが、何しろまだ枯れた訳でもない年頃の男二人だ。少々お盛んになるのも致し方無いだろう。 そこに来て、今日の三週間ぶりと言う間は今までで最長記録である。それなり定期的に使う事に慣れかかっていた銀時の方の性欲は、その間を平然と過ごせた訳ではなかったのだが、果たして土方の方はどうだっただろうか。 この批難にも似た、『空腹』の目つきが全てを物語っているやもしれない。 さてどうしよう、と銀時は考える。自分で擦ってみて、と要求して、自慰で達して脱力しきった土方の中にその侭挿れてみるのも悪くない。 或いはこの侭触るのを禁じて、体内への刺激だけでイかせるのに挑んでみても良いかも知れない。 こう言った良からぬ方向への発想は──誉められた事ではないかも知れないが──結構に働く。そしてその想像の何れも、要求した銀時より、要求された土方の方が叶えてくれようと必死になると言うのだから堪らない。欲求も、想像も、実践も、留まらなくなる。 じっと土方の、少し紅い目元に視線を注ぐ。僅か刻まれた眉間の皺が、その裡の懊悩と羞恥と理性との間で揺れる土方の内心をよく表していた。 どうすればいいんだ。 そう、問いながら待っている。銀時が何かを『要求』するのを、待っている。 ごくりと生唾を密かに飲み込んだ銀時は、口元をゆるりと吊り上げる。要求と、それに応じてくれる事で与えられる満足感。それに返す情愛と快楽。実に体の良いギブアンドテイクの構図だ。 「じゃ、さ。イれてってお強請りしてみな。出来るだけ銀さんがその気になれそうな、エロい感じで」 愉悦の侭に、下卑た情感さえ込めて言ってやれば、土方の顔にまた更に朱が走った。固く握りしめ過ぎて震える手の下で、シーツがその裡の躊躇いや恥辱その侭の様にぐしゃぐしゃに掴まれる。 それきり銀時は促しも退きもせずにただ土方の行動を待った。正確には、土方が行動を起こすのを待った。既に一度口淫で達した筈の性器は硬く上向き始めていたが、それは特に隠さずにおく。土方がその裡のものを吐き出すのを待つならば、自分も剥き出しの欲望を見せつけて、求めてやる。 土方がそれに気付いていたかは定かではない。間は、躊躇いは、少し長かった。 やがて、土方の右手指がぎくしゃくと強張った侭シーツを離した。その長い指が自らのなだらかな腹筋の上を滑って、銀時によって持ち上げ開かれ暴かれた脚の間にゆっくりと下りて行く。 色白な肌の上を辿る指が、獲物を求める節足動物の様に見えて。その様が酷く卑猥で倒錯的だ。 時間を掛けて辿り着いた後孔は、未だ銀時の指を二本くわえた侭でいる。その淵に新たに自らの中指が掛かった。拍子に緊張でか括約筋がひくんと動く様は、何か餌を強請る無力なイキモノの様にも思える。 土方の手指は可哀想なぐらいに強張ってぶるぶると震えていた。自らの後孔に恐る恐る触れる、その眼差しは然し熱に浮かされかかってはいるが理性を手放してはいない。 否。逆だ。羞恥と理性との間で、理性を総動員させて、銀時の『要求』に答えようとしているのだ。快楽に委ねて本能の侭に淫蕩に耽って動くのではなく、羞恥に負けて止まって仕舞うのでもなく。理性で、自らの意思で、土方は途方もない恥辱や痛苦に耐えて、応えようと。叶えようと。 土方の目の奥に、棄てきれない羞恥や自尊心の欠片が覗き見えて、然し屈した様にそれを飲み込む、この瞬間が銀時は好きだった。 殊更に嬲りたい訳でも支配したい訳でも無い。愛してやりたい。愛されていると何より実感したい。その歓喜を、土方が自らの意思で能動的に堕ちてくる、この瞬間に最も強く感じる。 銀時が少し指を動かして作ってやった隙間に、ひとつ息を飲んでから、土方の指がゆっくりと入り込んだ。 「ひっ、ぅ、」 びくりと、戦いた様に指がその場で硬直するが、奮い立たせる様に深呼吸をしてから、土方は自らの指を、触れた事もないだろう、自らの後孔にこじ入れていく。 指を届かせる為に、土方の腰は先頃よりも浮き上がっている。因って銀時から見下ろした先の光景は、既に二本の指を飲み込んでいるそこを土方が、第一関節ぐらいまでを突き入れた自らの指で更に拡げてみせていると言う、いっそ冒涜的にも思えるものになる。 「い…、イれ、て……、くれ、」 恥辱に震えて、殆ど吐息の様に掠れた声が何とかそう紡ぐのを聞くや否や。銀時は自らの指を土方の後孔から引き抜いた。一緒になって抜けた自らの指に驚いたのか「ひぁ」と泣きそうな声を上げる、土方の腰を抱き寄せると、一息に身を沈める。 「ィ、っあ、あ、ッ、あ──」 何処まで、赦してくれるのだろうか。 屈辱も羞恥も躊躇いも、理性があるからこそ返るものだ。理性があると言う事は、思考も意識も押し流す様な鋭い快楽に抗っていると言う事だ。溺れ流されずに、自らの意思で『そう』しているのだと示すかの様に。 流されて仕舞えば楽だろうに。高い矜持も躊躇も怯えも流して、全てをセックスの合間の快楽に浸して仕舞えば、楽だろうに。 その理性で、何処まで赦してくれるのだろう。どこまで受け入れてくれる心算なのだろう。 全身を硬直させて仰け反った喉を、噛み千切りたくなるのを堪えて甘く食む。本能的にびくりと竦んだ身を──全身で、心の裡まで晒して己を受け入れてくれた男に精一杯応える心算で頭を抱き込んだ。 繋がった場所ばかりか、全身でぴたりとくっつき合った狭間で、土方の手がまた辿る、銀時の左肩に薄く残った傷痕。 縋る様なその手の動きに、何故か途方もないもどかしさを感じて、銀時は理性の淵で滂沱と涙を流している様な土方の首を辿り頭を通って背に腕を回した。 初めて、怖い、と思った。 その時は、『何が』なのかは、解らない侭だったのだけれど。 * 物思いに囚われながら、銀時は薄く眼を開く。 好きだ、と切なる想いの吐き出す一言が、煙草の匂いを未だ保った着流しに吸い込まれて消えていく。 もう何処にも行けはしない。行きはしない。そうする様に望んだのは自分だからだ。 いつしか、土方の『形』を己の欲だけの鋳型で歪めて仕舞うのではないか、と。別れる前の最後のセックスの時の、戦いた手と、その手指が刻んだ痕を見てそう思ったのだ。 苦しむ土方の顔の中に、淫蕩な情欲の色が覗きはしないだろうかと思って。そんな想像が余りに自分の身勝手でしかなく、我侭以上の──言って仕舞えば、加虐に憶える充足と言う酷薄な情であったのだと気付いて。『それ』が本格的に怖くなった。 土方への『要求』はどんどんエスカレートして行くと言うのに、それを一切拒まれない事が怖かった。留まることのない欲求が理性も真っ当な意識も全て塗り潰して、ただただ独占欲と執着心と、自分だけに染めてやろうと言う征服欲が泥沼の様に広がる、引き返すも進むも出来なくなった所在ない足下。 それは紛れもなく、土方の在るべき『形』を歪めている証でもあった。壊して殺して仕舞う様な愚かは起こさなくても、いつかきっと傷つけて損なって有り様を変えて仕舞うのだろうと思った。 知って仕舞ったらもう堪えられそうもなくて、別れを切り出すしか無かった。 籠に捕らえた鳥を逃がしてやる様な気持ちで。銀時自身はまるで消える事のない土方への恋情を募らせた侭、そっと戸を開く事にした。ずきずきと痛む指先の傷の様に、薄いガーゼ一枚でカラの籠を覆い隠そうとした。 飽く迄これは銀時の見立てでしかないが、土方は生真面目なその性分もあってか、ひとつの事に盲目的に、妄信的になるきらいがある。今は未だ近藤と真選組とを己の最も大事な所に置いている様だったが、いつか銀時の存在が土方のそんな価値観をその侭に、在り方だけを残酷に壊して仕舞うと言う予感がした。恐らくは違えないだろう先の予感が。 仕事がある、と言っていたのに、目に隈まで作って夜に駆けつけて来た事もあった。斬り込みの中少々の無茶をしたらしい傷を看た事もあった。 坂田銀時への恋情。そんな、本来そこになかった筈の情動で、土方は紛れもなく、自分でも気付かぬ程度の僅かだけ、己を削っていた。銀時の入る隙間を空けただけ、真選組ではなく己を削った。自尊心も恥辱もかなぐり棄てて、理性で『要求』に応えてくれた。 それらの堆積が呼び水となって、いつか取り返しのつかない様な過失を犯した時、それを土方自身が己を只管責めて後悔する事になるのではないかと。そんな気がして仕舞ったのだ。 だから、逃がしてやるしかないと思った。籠の戸を開け放って、追い出す様に野へと放った、傷だらけの鳥。 鳥が籠の中で安息を得られるだけならば良かった。 だが、現実には鳥は、籠の中で摩耗していくだけだったのだ。 逃がしてやるしかないじゃないか。 銀時には、幾らそれが美しく鑑賞に値するものだとして、鳥の羽を切ってまで籠に留めておく様な趣味は無かった。風雨に晒されて汚れても傷ついても、それでもそれが鳥ならば広い空の下にあるべきだと思う。 自分は未だこうして未練たらしく土方を、フッたと言いながらも想い続けるのは、最早仕方がない事だ。伊達に生半可な惚れ方はしていないのだから。 割かれた傷口が痛むなら、ガーゼを当ててじっと堪える心算でいた。どんなに苦しくとも、間違えても、その未練の情や決して放散の出来ないどろどろとした想いを土方自身にぶつけたり、気取られたりする訳にはいかない。 自分のエゴや独占欲、執着心と言ったものが原因で土方が土方自身である事を損ねて仕舞うなら。手放すしかないと思ったのだ。だから、どれほど傷が痛かろうが膿もうが、それは貫く。そうでなければ意味がない。 この先俺に、あいつ以上に想う相手が出来るのかどうかは解らないけれど、この想いはずっとここに大事に仕舞っておこうと想う。 あいつが聞けば呆れるかも知れないが、お前を想っていた、お前に想われていた、その事実だけでも俺には僥倖だったのだから。 思い出と言うより、確かだったものとして、仕舞っておきたい。憶えていたい。忘れて仕舞いたくなどない。 いつか、土方がまた、街で顔を付き合わせた俺を無関心そうに睨む日が来るまで。 痛かろうが、辛かろうが、爛れて苦しかろうが。それがこの酷い瑕を刻んだ身勝手な男の、責任だ。 銀さんのターン後編と言うかまたぬるぇろのターンでしたとさ。 /5← : → /7 |