人が人になるまでにたった一万三千年 / 5 考えて、 考えて、 考えた。 ……だから、 * 突如真選組屯所に現れた銀時の姿を見て、土方がまず最初にしたのは、ここまで銀時を案内して来た山崎の事を、拳を固めながら睨み付ける事だった。青い隈に縁取られた黒瞳の奥で、激しい瞋恚の燠火が揺れている。 「山崎、何だこいつは。何でこの野郎がここに居やがんだ!」 握り固められた拳は、部屋の入り口近くに佇む山崎には距離が遠すぎたから、畳へと思い切り落とされた。だん、と鈍い音が床の上で鳴る。縁の下に鼠でも棲んでいたら、今の音で驚いて逃げ出している事だろう。 「旦那には壁と、襖の修理を依頼したんです。今期の予算会議で散々無駄な経費についてねちねち言われたし、切り詰める所は切り詰めろと号令を発したのは副長でしょう。大工や表具屋に任せるより安上がりで済みますんで、このぐらい我慢して下さい」 土方の苛々とした態度には既に慣れているのか、山崎も些少の棘を含ませながら、反論を許さぬ正論を振り翳してぴしゃりと言い切った。 反論が出ずとも不満は露骨に出る。土方は、ち、と舌を打ちながらまだ長い煙草を噛み締めて、そんな山崎の姿から盛大に顔を背けた。子供の様な態度だと思うが、それを指摘してまで嘲笑してやる気には流石になれない。 「(逆に良くねェんじゃね?そう言う嫌味な態度)」 「(ただはいはい頷いて殴られるだけなのも良くないでしょう。あれでも副長、怒鳴らずにいられない理不尽さを解ってるんで、自己嫌悪してるんですよ)」 これで下の者にまで萎縮する様になったら、確かにお仕舞いである。 銀時の小声に答える、山崎の左頬には大きなガーゼが当ててあった。口元も青くなっている。監察だのに目立つ傷なぞ負っているのが原因でひょっとしたら内勤に当たっているのだろうか。そんな事を考えながら、銀時は山崎を殴りつけたのだろう下手人の方を伺い見た。 一応、一般人と悶着した事で、副長職は軽い謹慎処分と言う事にされており、外回りの仕事は見廻りでさえ外されていると言う。ほぼ丸一日この副長室に詰めている形になっている様だが、本人に勤務中と言う意識があるからか隊服はちゃんと着ていた。上着とスカーフだけが取り除かれ、ハンガーに掛けられ鴨居に下がっている。 袖はカフスまでしっかりと閉じられ、布が白い色である事も手伝って剥き出しの手先は酷く不健康そうな色に見えた。数日程度陽に当たっていないからと言って、肌の色加減が変わって仕舞う訳でもあるまいに。 その指先が苛々とした仕草で新しい煙草を掴み取るのを、見るともなしに見ていれば、やがて不快そうに顰められた顔がこちらへと戻ってくる。 「修理なんざ、テメェに出来んのかよ」 言ってちらりと視線を向ける、奥の続き間との間を本来仕切っていたのだろう襖には大穴が開いていた。高さからして蹴り飛ばしたのだろう。今は胡座をかいて机に向かっているその脚で。 「表具屋でバイトした事もあるしィ?任された以上仕事はちゃんとこなすのがモットーなんでね」 銀時を睨め付けながら問う、土方の言い種は喧嘩腰な煽り調子であったが、銀時はなんとかそれを躱した。応じると口喧嘩以上の不毛な争いになりそうだし、取りなす山崎の、今度は右頬にまで湿布が貼られる事になりかねない。 (まあ襖は兎も角──、壁) 日頃は寝室として使っているのだろう、続き間の壁にも同じ様な穴が空いているのが見えて、銀時は溜息を噛み殺した。どれだけ土方の様子が荒れているのかを、哀れにも犠牲になった壁や襖、そして山崎の顔面が物語っている。 「出来そうですか、旦那」 「ああ、まあ何とかなりそうだな。お代分はキッチリ仕事さして貰わァ」 どちらの仕事も。と言外にはせずに答えれば、山崎はあからさまにほっとした表情を浮かべて、膝を浮かせた。 「じゃあ、俺は茶淹れてきますんで」 「おー、茶菓子も宜しくな」 部屋の主に応える様子が無かったので、代わりにそう声を上げて、銀時はひらりと山崎の背に向けて手を振っておく。 「さって。早速検分さして貰いますかね」 立ち上がった銀時が続き間を指さして言うのを、ほんの一瞬視界の隅にだけ捉え、土方は短く「…勝手にしろ」と言い捨てた。 今日の所は補修箇所の確認だけだと、建前としては言い置いてある。 (まあ壁は…、板入れて紙でも貼り直して誤魔化すか) 殆ど書類の載っていない机に再び向いて仕舞う土方の様子をちらと伺いながら、銀時は続き間の襖と、壁の大穴を見て胸中でだけ呆れを隠さず呻いた。 今時子供でもやらないだろう、頭一つぐらいは簡単に通りそうな大穴。大の大人が加減もなく蹴っていれば穴が空く以前に壊れて折れているだろうから、一応は力にセーブでも掛けていたのか。 (物に当たるなっての。まあ、想像以上に苛々してんなァ確かみてェだな) 苛立ち紛れに集中し、仕事なぞ次から次に片付けて仕舞うのだろう。今はやる事が取り敢えず無いのか、それとも銀時と言う『異物』を気にしているのか、土方は煙草を吸いかけては何度も灰皿を叩く無駄な動作を繰り返している。 そうしながら、露骨に銀時の方に視線は向けず、意識だけはじっと研ぎ澄ましてこちらを伺っている。振り向きもしない背中はぴりぴりと緊張感に震え、今にも裡から裂けそうだ。 そんな土方の様子から、後者が正解の様だと判断した銀時は、そっと目を眇めた。 ぎ、と畳を踏む音に、土方の背がぴくりと跳ねる。 「…………」 部屋に戻る風情で、一歩、二歩と、距離を詰めれば、土方は銀時の方を思わず振り返り、そしてまた顔ごと視線を逸らした。 先頃まで、山崎が居た時には見えていた苛立ちとは異なるその反応は、まるで怯えている動物の様だった。威嚇に毛を逆立たせながら、吠えながら、近付くな、と全身で叫んでいる。 不意に土方の指が摘んでいた煙草を消し損ね、灰皿に手がぶつかる。鳴ったのは、かたん、と言う小さな音だったが、弾かれた様に手を引っ込め瞳孔をどろりと開かせる土方の様子が、その音をまるで背後からの鞘走りの音の様に聞いたのだと、銀時に気付かせる。 崩れる灰の山が、机の上を斑に汚す。咄嗟に袖口で汚れを擦ろうとした土方は、然しそれが隊服である事を思い出して、ぎくりと動きを止めた。 「何やってんの」 屑籠とティッシュの箱を掴んで、銀時は土方の座す机の前に膝をついた。 「何でも、無ぇ」 土方はそう、歯切れ悪くも素直な答えを紡ぎはするものの、まるで何かに怯えた様に硬直していた。その腕を掴んでやんわりとした仕草で退けると、銀時は机に散らばった灰をティッシュで集めて、屑籠へと全部落としてやる。 間近で、こちらの姿から不自然な程に目を背けて舌打ちをする土方の様子を具に見つめて、銀時は、成程、と思い、次の手番へと進める事にした。 「つーか煙草吸い過ぎだろお前。ちっとは控えとけ」 同じ様に屑籠に中身を空けた灰皿を机の上へと戻しながら、ほんの僅か近付いた土方の耳殻に向けて、銀時は優しげな声音を作って言ってやる。 その声に触れられた瞬間、土方は火にでも触れた様に肩を揺らしたが、寸時の間眼球を落ち尽きなく左右に彷徨わせてから、頷いた。 「そう、だな」 指の探っていた煙草のソフトケースから、躊躇う様に手が離れていく。 ほんの僅か、動揺を顕わに目元が震えて、唇に力が込もる。だが、隙間の塞がった口唇から喧嘩腰の反論が出る事は無かった。 水を飲む様に煙草を呑む男が。犬猿の仲の男の囁いたたったの一言で、次の一本を手放した。 「………………」 思わず、理性とは何処か別の場所で喉が音を鳴らした。 銀時の向けている視線の先では、土方自身が己のその行動を信じ難いとでも言う様に、強張った拳の中に感情を込めて震わせていた。困惑とか怒りとか──疑問、とか。そこに何か整合性の取れた理由を探す様に、眼球が忙しなく揺れている。 どうやら沖田の見立ても強ち間違ってはいないと言う事か。 土方は今、間近に居る銀時に怯えているくせ、それを萎縮であると感じる事を怖れて、無意識の内に先回りした隷従を示して自己を保とうとしたのだ。 煙草を控えろ、と言われて。 なんでテメェにそんな事を言われなきゃならない、と返して。 控えろ。吸うな。言葉や身体への暴力で、そんな『命令』が、銀時から発せられたとしたら──? 屈服するほかない。己の意志を曲げる暴力に、力に、折られた事を思い知らされながら、負けを認めて屈服するほかなくなって仕舞う。 この男には勝てなかった。その事実が土方の裡に認識としてある以上は、それは負けた側からは絶対に覆す事の出来ない畏怖として残留しているのだから。 だから、銀時に煙草を止めろと本格的に『命令』されるより先に、自分から吸うのを止めたのだと煙草を置いた。 (……成程。確かにこれは、沖田くんにゃ苛々しそうだわ) 沖田と近藤にも今の土方は『こう』であるとは先日聞いてはいたが。 沖田はその性質については解り易いドSの性根の持ち主だから、最初から白旗を上げて逃げる土方のこの反応は彼にとってさぞ癪に障るものに違いない。 (でもこれじゃ、部外者だろうがなんだろうが、効果の程は期待出来なさそうだよなァ…) 銀時への依頼は飽く迄、土方の意志をそれとなく誘導し軌道修正する事だった。とは言っても、ここまで露骨に忌避感を憶えられていては軌道修正どころか頭ごなしに命令しているのと何ら変わりはない。それこそ先日銀時が思った様に、臭い物に蓋をしてそれでお仕舞い、である。 縋る藁の内容については特に言及されはしなかった。 だから銀時は、手段を少し変えてみようかと考えてみる事にした。何よりこの侭では、土方が無意識のストレスを貯めていって仕舞う事も勿論だが、張り合いがなくて面白くはない。 思いの外間近にある、困惑に俯いている土方の頬に手の甲を触れさせてみたら「──ッ!」、息を呑んだその手に凄い勢いでばしりと弾かれた。 「あ…、」 触ろうとした猫に引っ掻かれるのにも似た感覚。引っ掻いた猫の方が狼狽え、気まずそうに視線を逸らして、ずり、と僅かに身を引いた。 悪い。とか。すまない。とか。きっといつもの土方ならそう口にする事は易かった筈なのに、今はそれが出来ない。許さない、と言われて踏みにじられるのがこわいから。 「隈、凄ェ事になってんな。ンな忙しいの?」 だから銀時は、身の置き所を失っている猫にそう、何事も無かった様にそう切り出す事にした。はっきりとした目元を更に際立たせる様な薄化粧にも似た隈を、弾かれた指でそっと触れずに示す。 「あ…、仕事は、増えはするが減る様なもんじゃ、無ェし、書類の大概は俺を通す決まりだし、」 律儀な説明を寄越す土方に──これも普段では有り得ない──、「そか」と頷いた銀時は、労りの篭もった笑みを向けた。 「大変だな。ま、余り無理すんなよ」 「え、…あ、」 大凡仲の宜しいとは言えない人間からの、想像だにしない労りの言葉に土方が鼻白んだ隙に、銀時は先頃弾かれた手を伸ばすと、その頭をそっと一撫でした。 「、」 あからさまに引きつった表情を浮かべて、伺う様に銀時の事をじっと見つめる土方は、少しの間躊躇いながら視線を畳の目に向けて、そうしておずおずと顔を上げた。 疑問と、困惑と、不快感と、不可解感と──それら全てにまとわりつく、怖れ。そんなものに彩られた面を可哀想だと銀時は思う。 常日頃見慣れたこの男には何れも無縁の様に思えた、感情の数々の刻み作った表情は、然しある種美しい。 硝子のケースの中の人形や、籠の中の南国の鳥、狭い水槽に美しい尾鰭を舞わせる魚。そんなものたちの持ち合わせる、憂いと憐れみを帯びた美。果敢なさを知るからこそ見える、惜しむに値する様な美しさだ。 ほんの少しの加減だけで、それは容易く崩れ去る。絶望か或いは瞋恚か。だが、そのどちらにも傾く事が出来ない、危うい均衡。 「どうして、てめぇがそんな事抜かすんだ。らしくねェにも程があんだろ…」 反論にも近い誰何を銀時へと紡ぐ、たったそれだけの事にも、土方は時間を掛けて重くなる口を開いた。怖れを、自分でも正体の知れぬその感情を、負けず嫌いと言うだけの強がりで払拭しようとする、そんな土方の恐れ知らずの前向きさを銀時は元より嫌いではない。 その愚かしく正直な気性の侭に、怖れながらもそれを誤魔化し隠して紡ごうとするのだ。今にも死んで仕舞いそうに顔を蒼白にしていると言うのに。 「んだよ、俺がてめぇを心配しちゃ悪ィのかよ?」 「、そんなことは、無い、が」 僅かに銀時が引く態度を見せただけで、土方は慌てた様に追い縋った。その表情にも戦慄く唇にも、困惑と混乱とが揺れている。己が銀時に隷従しようとする、その心の働きが、自分でも全く解らないのだから無理もない。 (………) 憐れだ、と思える程に、己の意に沿わず萎縮しようとする土方の心は、剥き出しで無防備だった。脆く無い事が解っているからこそ、余計にその虚勢が酷く惨めに映る。 それだけ打ちのめされたと言う事だ。酷い力の蹂躙を、ただの暴行だと割り切れなくなる程に。 そんなかわいそうな土方の姿は美しくて、銀時の嗜虐心を擽るものであったのは間違い無い。土方の怖れを目の当たりにする度、愉悦が背筋を震わせるのも、同様に間違い無いだろう。 だが、銀時はその愉悦の侭に土方を傷つけてみたいと言う選択肢を振り捨てた。それは望みではない。それは意には沿わない。だから、しない。 「……最近さぁ。飲みに全然出て来てねーじゃん?水曜とか大概あの店に居るのに見かけねーし、ツケ賭けた飲み比べ勝負もまだ決着ついてねェし? お前と呑むのはまぁ楽しいし、気が楽だし、…楽しいし」 「……」 「そんな矢先にお宅らからの依頼だよ?本当は壁修理も表具屋の真似も受ける気なんざ無かったけど、お前がどうしてんのかとか、気になったし?」 「………」 「要するにまあそのアレだ。お前が心配で来たんだっつーの。言わせんな恥ずかしい」 照れ隠しに視線を彷徨わせながら、土方の感情が変な方角に揺れ出す前に、銀時は捲し立てる様に言った。強ち嘘ではない。嘘はついてはいない。だから罪悪感も特に無い。 困惑に動揺を混ぜて眼差しを揺らす土方は、まるで手の中で大人しくなる子猫の様だった。 その理由は容易く知れる。己の屈服を怖れる今の土方にとっては、好意や肯定に類する言葉が覿面に響いたのだ。 無意識に、他者への屈服を怖れ隷従しようとする己の心の働きを肯定されると言う事は、土方には一切疑う余地が無いと言う事でもある。 「ま、仕事したり、苛々壁蹴ったりしてるぐらいなら大丈夫なんだろ。物に当たるのだけは感心しねェけど」 飽く迄、事件の事も土方の負った瑕も知らぬ素振りで言う銀時の顔から、土方は無言で視線を背けた。日頃銀時の知る強気で尊大な男の形が、今は怯え縮こまったり、身の置き所を失い弱り果てている。 「……その。心配、掛けたみてェで…、すま、ねぇ」 「んーや?俺が好きで心配しに来ただけだし。てめーにとっちゃ、余計なお節介なんだろうけどな」 「そんな、事は」 俯いた伏し目がちの目蓋の下で、眼球が微細に震えている。指先が畳を引っ掻いて強張っている。刀を握る手が、人を容赦なく殴りつける手が、あらゆる抵抗を拒否して、力なく。 「………………」 背筋を震わす愉悦をそっと呑み込んで、銀時は畳の上で震えている土方の手に己の手を重ねた。途端にびくりと跳ねる背。瞠られる目。外にまで聞こえそうな心臓の鼓動。振り解きたくなる衝動を紙一重で堪えたのだろう、土方との距離は今までにない空隙にまで縮まっている。 「お節介。焼いてもいいんなら、焼いてやるけど」 耳元に寄せて落とされた吐息の様な囁きに、土方は困惑と嫌悪に表情を歪めて、「、」何かを言おうと唇を戦慄かせながらゆっくりと項垂れた。 陥落だ。 そう手応えを感じ取った銀時は、土方の手に押さえる様に乗せていた自らの掌をゆっくりと引いた。何事も無かった風情で身をも離して廊下の方を振り返れば、少し前からそこに佇んでいたのだろう、山崎と視線が合う。 銀時の小さな目配せに、山崎ははっと背筋を正してから、たった今やって来ました、と言う風情で足音を立てた。俯き、そして惑乱に満たされていた今の土方であれば、その程度の下手な誤魔化しでも欺せる。そんな確信はお互いにあったのだ。 「副長、万事屋の旦那、お茶入りましたよ」 「おー、さんきゅ。丁度仕事も一段落して茶ァ欲しかった所なんだよ。お茶請け何」 「一段落も何もまだ何もしてない様に見えるんですが。舟和の芋羊羹です」 ジト目を作りつつも律儀に答えながら盆を置く山崎に口笛をひとつ吹いて、銀時は土方から離れると立ち上がって勝手に引っ張り出した座布団に座る。 土方の視線がその動きをゆっくりと追うのを見てだろう、山崎はほんの少しだけ咎める様な目を銀時へと向けて寄越した。 山崎の気配が廊下に現れたのはそう長い時間前の事でもない。だが、銀時が土方の消沈しきった困惑を愉しむ様に見ていた事ぐらいは、雰囲気から察しただろう。地味な風貌のくせ(別段見てくれは鋭さには関係無いが)この男は存外に鋭い。 ドS仲間だと。同じくらいかそれ以上にドSの悪魔にも同族扱いされる男が、よもや妙な害悪を土方に与えはしまいかと、そう疑って仕舞うのも無理のない話か。 「で、旦那。直りそうですか、壁と襖。直そうとしてこれ以上壊されても困るんですけど…」 アンタ一体この人に何するつもりですか。 言葉には出されないそんな問いかけに、銀時は孔の空いた壁と襖とを指して、悠然と目を細めた。 「心配すんなって。依頼通りの事をするに決まってんだろ?」 それは、卑しさも矮小さも後ろめたさもない、勝利者の笑みだった。 。 ← : → |